172話 鑑定結果
「師匠ー、いるのかー。あれ、いないのか?」
「門の外なんだから聞こえないだろ。」
「師匠なら聞こえるってあの地獄耳だぞ。」
「そう言われるとそんな気がしてきた。」
「さすがに聞こえませんよ。」
「うわ!って師匠。なんで後ろにいるんだ?」
「出かけてたからですが?」
「今帰ってきたんだ。」
「地獄耳ってなんですか?」
「え、いやそれは…」
「そんなことより師匠!手伝って欲しいんだ!」
「?」
「なるほど、私を鑑定士代わりにしようと言うのですね。いい度胸です。」
「俺たちじゃ信用できる鑑定士も知らないし、価値も分からねえからさ。欲しいのがあれば師匠にやるから、お願いします!」
「はぁ、とりあえず見せてください。」
「やった!ありがとう師匠!」
「これが見て欲しい物だよ。」
「これは…色々持ってきましたね。少し作業するので待っててください。」
「へーい。」
しばらくメイのことを待っていたが、何やらメモを取っていてすぐに終わりそうは無かった。
「師匠、兄貴に会ってきていいかな?」
「どうぞ、もうしばらくかかると思うので、他に用があるなら済ましてきてください。」
「了解だぜ。」
「兄貴ー」
「ん?なんだよお前ら、ダンジョンに行ってるって聞いてたんだけど。」
「一旦帰ってきたんだよ。」
「向こうは物価が高くて。」
「なるほどな。日持ちするようなものはこっちで買ってきた方がいいのか。」
「そうなんだよ。」
「嬢ちゃんにはあったのか?」
「さっき会ってきたぞ。それでダンジョンから持って帰ってきた物を見てもらってる。」
「お前、師匠を便利屋扱いしてるな。」
「してないよ。研究書みたいな物があったから見せれば喜ぶんじゃないかと思っただけだ。ついでに他のも見てもらおうと思って。」
「師匠思いなのか、それともこき使ってるだけなのか…嬢ちゃんが気にしてないならいいか。ちゃんと礼は言っておけよ。」
「それは当然だ!」
「俺は仕事の途中だし行くわ。くれぐれも嬢ちゃんを怒らせるなよ。俺に矛先が向くからな。」
「分かってるって、また後でな。」
「師匠、終わった?」
部屋に入ると持ち込んだ書物は3つの山に分けられていた。
「はい。用事は済んだんですか?」
「おう、全部終わったぜ。」
「そうですか。私はこれを3つの山に分けました。左から順に私が欲しいと思ったものと、オークションに出せばかなりの高額が期待される物、あまり価値がない物です。」
「価値がある物少ないないか?」
「これらは全て古代語で書かれています。古代語の専門書など読める人はほとんどいません。ですが、古代語の魔導書であれば研究機関が必ず欲しがります。これらはそういう書物になります。」
「じゃあ、価値が無いのは魔法とは関係の無い専門書ってことか?」
「はい。この中には日記などもあったので、もしかしたら日記は価値が高くなるかもしれませんが、それ以外はわざわざ読もうという人がいないので誰も買いません。」
「師匠が欲しいって言うのは?」
「今私が研究している分野や、中々面白そうなことが書いてあった物です。私、これ買いますよ。」
「いやいや、金とかいらないから、あげるよ。な、フラス。」
「うん、そうだね。タダで見てもらったんだ、それのお礼だよ。」
「一冊100万は出すんだけどな。」
「100…!どうしようフラス、俺、グラッと来ちまった。」
「バカ!男に二言は無いだろう!」
「そ、そうだな。そうだ、二言は無い、師匠にあげると言ったんだ、100万だろうが1000万だろうが絶対に受け取らない!」
「はあ、そうですか。それならいいんですけど、後はこの鉱石ですね。これは私に売るか、オークションに出品するか、決めた方がいいと思います。」
「それそんなにヤバいの?」
「はい、他の物が霞むくらいには。」
「oh......」
目の前がくらくらするクレソン達であった。