18話 邪悪な気配
私たち家族とカレンの四人で昼食を食べていた時だった。
なに?この邪悪な気配は。この村に向かって来ている。
「皆家の外に出ないで下さい。」
「何かあったの?」
「後で説明します。」
そう言って外に出た私は、村の家全てに防御結界をかけた。
その後、獣のような姿をした魔族が現れた。
この魔族は前回戦った魔族よりも強い。
「この村に何をしに来たのでしょうか?」
「クク、観光さ色々な所を見て回りたくてね。ここが記念すべき最初の観光先ということさ。」
「この村には何もありませんよ。物好きですね。」
「何も無いが、人間はいるし、ジュイターを殺した強者がいるだろう?」
「…ああ、あなたが黒幕だったんですか。それとも他にいるんですか?」
ジュイターっていたな完全に忘れてた。
「俺は上位魔族グレイヒルだ、ジュイターには俺が復活するための魔力を集めさせていてね、やつが死んだから復活の予定が大幅に遅れてしまったのだ。その礼を今してやろう。」
「誰がそのジュイターを倒したのかも分からないのにですか。」
「ジュイターを殺したのはお前だろう?お前はジュイターの名前に反応したからな。」
「なかなか頭が切れるようですね。」
軽口を叩いた私たちは次の瞬間互いを殺すために動いた。
ガギン!!
剣と剣がぶつかる、体格で劣る私は押し負けるが、魔法を使い相手を吹き飛ばした。
ジリジリと近づき、また剣で戦う。
私たちは分かっているのだ、魔法を撃っても何の足止めにもならないと。
距離を置いた私たちは睨み合った、
「フハハハハ、これほどまで強いとは!俺の本気を出すに値する。喜んでむせび泣くがいい。」
「本気ですか。なら私も本気を出すとしましょう。」
「本能出現!」
「魔技«超越強化»」
魔族は倍以上の大きさになった。
「ほほう、貴様の体内に流れる魔力の質が上がっているようだな。」
「あなたは魔力そのものが変質していますね。」
「グアアア、ダークブレス」
「雷足、我流抜刀術『刹那』」
パンと両足を打ちつけた私は構えた。
相手の攻撃が出た瞬間、私は本気で踏み込み、目にも止まらないスピードで魔法も魔族も切り裂いたのだった。
「グハァ、ここまでとは。覚えているがいい!」
血を流しながらそう言うが、私は逃がす気はない。
無属性魔法«魔力弾»連射だ。
「グアアア!」
落ちていった場所に行ったが、魔族の姿は無かった。
どうやって逃げたのだろうか?
その後、家に戻った私は、村の皆に事の顛末を話した。
「魔族が来ていたなんて。」
「どんなやつだった?」
「角があって獣みたいに全身に毛が生えていました。かなり強い魔族でしたね。」
「逃げた方がいいんじゃないか?」
「メイよ、次も魔族はこの村に来ると思うかね?」
「来る可能性は低いと思いますが、絶対とは言いきれません。」
「なんだって!」
「じゃあ、ここも危ないってことか?」
「静まれ!魔族と出会う確率など、どこにいてもある。それよりも我らを救ったメイに感謝すべきではないか?」
あの後も会議は続いたが、どうすべきかは決まらなかった。
とりあえず私達が帰って辺境伯に報告するということになった。
「メイ、気をつけてね。いつでも帰ってらっしゃい。カレンちゃんもね。」
「うん、分かってる。」
「どうしてもって言うなら来てあげてもいいわ!」
「フフ」「クスクス」
「なんで笑うのよ!」
「それじゃあ行きましょうか。」
「じゃあね、メイ。なるべくはやく帰って来てね。」
母は私たちが見えなくなるまで手を振り続けていた。
少しの間しか入れなかったが、楽しかった。
また、ゆっくり話したいな。
魔族・・・人類に敵対する種族のこと、グレイヒルは獣人だった。
メタモルフォーゼ・・・獣人が使う強化形態。生存本能や闘争本能が強くなる。
ダークブレス・・・グレイヒルの必殺技。龍のものよりは弱いため、メイはなんの脅威も感じていなかった。
雷足・・・体に電気を流し、高速で移動で移動できるようになる魔法。足を打ちつけたのはメイのルーティンによるもの。
抜刀術『刹那』・・・高速で近づいて切る。というだけのシンプルな技だが、シンプル故に対策を立てにくい。
無属性魔法・・・属性を付けていなから無属性という名前の通りの魔法。この魔法には威力が低いという欠点もあるが、魔力の消費を抑えられるという利点もある。
無属性魔法«マジックボール»・・・魔力を球状にして打ち出す魔法。メイは魔力を多く使うことで威力を上げ、連射する事で広範囲を一気に制圧する事ができるようにしていた。