167話 ご褒美
「師匠ー!」
ズザザザザーと廊下で急ブレーキをかけながらクレソンが教室に入ってきた。
「師匠!師匠のおかげで赤点を免れたよ!本当にありがとう!」
「いえ、努力の結果ですよ。」
「まあ、結構ギリギリだったけどな。」
「あなたの要領の悪さには驚きを隠せませんでしたが、目標を達成できたならよかったんじゃないんですか?」
「あれから二週間か、なんと言うか印象が強かったね。」
「そうだなぁ。俺が助けを求めたのがテストの一週間前で、テストが終わってから一週間たってようやく結果が帰ってきたからな。」
「それはそうと、なぜそんなにズタボロ何ですか?」
「実はさ、仲間内で俺以外全員赤点だったんだよ。それで、裏切り者!って言われてさ。」
「教えあったりしなかったの?」
「アイツら俺の言うことを聞きやしねえ。お前なんかに教わることは無いって言って一夜漬けしたんだと。そのせいで赤点になってたら世話ねえよな。」
「自業自得すぎる。」
「そう言えば師匠たちはどうだったんだ?」
「赤点は余裕でしたよ。」
「そうじゃねえよ。最初から赤点の心配なんてしてねえよ。」
「まあ、そこまで難しい範囲でもないので満点いけますよ。」
「私は満点は無理だったけど、良い点とれたよ。」
「うーん、考え方の基準が違いすぎるな。とりあえず、本当に感謝してる。」
「ギルドの昇級試験頑張ってね。」
「ギルドの試験は何をするんですか?」
「俺は今Eランクなんだけど、Dランクに上がるための試験はサバイバル知識を問う問題らしい。」
「それ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だって、俺は昔から森で走り回ってたから、そういう知識はあるんだぜ。それに、俺よりも学が無いヤツらも受けるらしいから、大丈夫だ。」
「不安ですね。」
「何でだよ!弟子を信じろ!」
「まあ、そこまで言うなら。」
「じゃあな師匠。」
「あ、ちょっと待ってください。」
「ん?」
「今回のご褒美です。はいコレ。」
「何だこれ?小さい球?」
「肌身離さず持っていてください。お守りです。」
「ふーん。師匠がそう言うってことはご利益ありそうだな。分かった。ずっと持ってるよ。」
「頑張ってくださいね。」
「おう、ありがとうな。」
その後、クレソンはギルドの昇級試験に合格し、Dランクになったのだが、あと1点でも落としていれば不合格だったらしい。
だから、不安なんだよ。
いつもギリギリなのはクレソンらしいとも言えるが…
フラスは学年トップになったらしいのだが、100点ではなかったと悔し涙を流していたらしい。
どんだけだよ。
フラス曰く、「これは俺と先生の勝負なんだよ!100点じゃなかったってことは負けたことと同義なんだよ!」
らしい。なるほど、よく分からない。
とりあえず、これで今学期もあと数日だ。
何か問題が起こることはないだろう。
メイが渡した球とは何だったのか、作者は何にしようか迷ってたりする。