164話 次のステップ
「きゃー!?」
放課後の演習場で悲鳴が響き渡る。
「VI回り込みなさい。」
「無理!二体同時とか無理だから!」
「アリュール、頑張ってね。」
「何で私だけなの!?」
『体力が無いからだが?』
「私死にかけてるの!?分かる!?」
『分からん。』
「バカー!」
「これを見てると魔物狩りについて行って良かったと心底思うわ。」
「まあ、カレンくらいの体力が最低ラインですから。それで十分だと思っているならあの中に入ることになりますよ。」
「は、はーい…」
ガックリと肩を落としているカレンは放っておいて、アリュールに注視する。
今はMarkV、VIとアリュールが鬼ごっこをしている最中だ。
捕まれば以前よりも厳しくすると言ってあるので、アリュールは必死だ。
「そろそろ、休憩をとらせましょうか。」
『まだ行けそうな気がするが、ここらが限界か。』
「アリュール、休憩です。V、VI機能停止。」
二体のゴーレムはその場でうつむき、動きを止めた。
アリュールもその場で倒れこみ、息も絶え絶えになっている。
そこへすかさずカレンが水筒を持っていき、飲ませていた。
カレンって世話好きだよね。
「死ぬかと思ったよ。」
「人間はあれくらいでは死にませんよ。手足ももげていませんし、問題ありません。」
「もげたら一大事だよね!?」
「私、もげた手足を治せるので問題ありません。」
「治せたとしても問題大アリだよ!?」
「一度、もげるまでやってみますか?」
「やらないよ!!…もしかしてもげたことあるの?」
「私の場合は指でしたね。それにあのまま続けていればホントに腕がもげてたかも…」
「指がもげるって何してたの…」
「……」
「何でニヤリと笑ったの!?」
「…」
「何か言って!?」
「まあ、それはともかく。もうそろそろ次に入ってもよさそうですね。」
「本当に!!あの地獄がようやく終わるんだ…!」
「喜びを噛み締めてるところ悪いけど、魔法の訓練はこれ以上にキツイわよ。」
「………え?う、嘘だよね。流石にあれ以上は無いよね?」
「体験すれば分かるわ。」
「無理、無理だよ。これ以上は死んじゃう!!」
「大丈夫、肉体的にはそこまでキツくないの、精神的にキツイだけよ。」
「それもイヤだよ!」
「ワガママ言ってるとさらにキツくなるから、黙ってた方が賢いわよ。」
「えぇ…」
「まあ、そういうことなので、地獄が終わってよかったですね。」
「全然良く聞こえないよ!」
「強くなりたいなら訓練しないと。」
「それでも死にかけるとは思わないよね!?」
「訓練するなら当然ですよね。」
「死なないための訓練で死んでたら元も子もないよね!?」
「死なない程度にするので安心してやられてください。」
「やられるんだ。」
「諦めなさい。メイがこう言うならホントにするから。」
「諦めたくない。私、生きることを諦めたくないよ!」
『グッドラック』
「いい笑顔でサムズアップするのやめてくれるかな!?」