161話 もっと強く
カレン視点
魔法陣をいかに速く展開できるかを練習する。
メイは範囲殲滅魔法でも瞬きをしている間に構築してしまう。
「もっと速く、もっと精確に。」
メイには立場を考えろって言われたけど、要は私が捕まらないくらい強くなればいいのよ。
ふぅー、魔力使いすぎてちょっとしんどいわね。
ちょっと休憩ー。
アッチは…まだ休憩できなさそうね。
『コラ!休むんじゃないわよ!』
「ひぇぇ!」
『精霊の力を十全に使いたいなら体力を付けなければいかん。それに戦闘職に就きたいなら体力が無いと大変だからな。』
「私は!文官希望だよ!?」
『そんなに叫ぶ余裕があるならまだまだいけるわね。』
「ふえぇん!」
『我らのマスターがそんなことでどうする。』
「厳しすぎるんだよ!?」
『マスターの体力が無さすぎるんだ。』
『あの娘の方は体力があったのに、マスターはまったくと言っていいほど無かったわね。』
『体力作りなど初歩だぞ。そんなんだから自惚れていると言われるんだ。』
『そうよ。見返してやるんでしょ。なら、弱音なんて吐かないの。』
「だからってこれはちょっと。」
『黙らんか!下手に出ていれば調子に乗りおって、さらにビシバシいかれたいようだな!』
「これ以上はホントに無理!?」
『無理だと言えるうちはまだ行ける。』
「いーや〜!!」
メイ並に厳しいわね。
頑張ってね。
南無南無…
さて、魔力が回復するまでは魔力を体内循環させましょうか。
これで魔力回路が強化できるって教えてもらったし。
『休むでない!誰が倒れていいと言った!』
「だって、一時間以上走りっぱなしだよ!?」
『まだ30分も経っとらんわ!』
「嘘でしょ!?こんなにやってるのに!?」
む〜ん、むむむ。
うるさいわねぇ。
そうだ、
無属性魔法«魔法弾»
「ヒェ!な、何するの!カレンちゃん!?」
「ちょっと練習台になってもらうと思って。逃げないと痛いわよ。」
『ちょうどいい。緊張感が足りておらんと思っていたのだ。』
「待って!?マスターを危険に合わせるなんてどういう了見してるの!?」
「えーい。」
「可愛らしい掛け声で誤魔化されると思ったら大間違いだよ!?ヒョ!」
「ほらほらー、どんどんいくわよ!」
「来ないで!?少しは休ませて!?」
「大丈夫よ。アリュールはまだまだいけるわ。」
「どこを見てそう思ったの!?」
日が暮れた後、二人の人影が演習場に横になっていた。
『うむ、これからもビシバシいくからついてくるように。』
「いや、ホントにキツい。」
「魔力を使いすぎたわ。目が回る〜。」
『明日からもよろしくね。カレン。』
「身体が持たないよ!?」
「何だかんだ、続いてるじゃないですか。」
「メイちゃんも何とか言ってよ、やりすぎだって!」
「私の場合は目が死ぬ寸前まで追い込むので、まだ優しい方ですよ。」
「さらにヤバいのがいたなんて…」
「もう帰りましょうか。」
「時間が経つのは早いわね。」
「私はメイちゃんが早く来ないか待ってたよ。」
「また、明日ね。」
「ああ、明日が来なければいいのに…」