160話 世話好き
放課後に研究室でレポートを書いていると、
「最近放課後に来ないけど、何やってるんだい?」
「この前、帰って来てから何かやってるみたいですけど。」
「見に行かないのか?」
「見に来なくていいと言われましたし、そこまで危険なことをしている訳ではないので。」
「またケンカしたのかい?」
「ケンカではないですよ。色々と思うところがあったようです。」
「ふーん。で、何でまたこんなに散らかってるんだい?」
「ゴーレムを完成させようと思って。」
「何か分からない部品で机が埋め尽くされているのだが。」
「失敗作なんですよ。欲しいならあげますよ。」
「いらんわ!片付けろと言ってるんだよ。」
ザ、ザーと砂嵐のような雑音が聞こえた後、
『何かご用命ですカ、マスター。』
「うわ、喋った!」
「ドールMarkVII、この部屋の掃除をしてください。」
『ハイ、お任せくだサイ』
「あれ、戦闘用じゃないのか?」
「戦闘用より、家事用の方が難しいので、色々データをとろうと思って。」
「なるほど。他に理由はあるのかい?」
「後は骨格が華奢でも問題ないので。」
「君が認めるレベルまで強くしようと思うと普通の金属じゃ無理そうだもんね。」
「そうなんですよ。最初は大丈夫でも、金属疲労ですぐに壊れちゃって。」
「金属疲労って5分でなるものじゃないよね。」
「それが、断面を見るとねじ切れてるんですよ。不思議ですね。」
「どんな動きをしてるんだ…。しかし、これは便利だね。勝手に掃除してくれるなんて。」
「ゴミかそうでないかを判別する能力が一番苦労したんですよ。」
「それはすごい。」
『出来ましタ。』
「ああ、それは捨てちゃダメだ!」
「こんなにクシャクシャなのにいるんですか?」
「当然だ!論文だぞ!」
『書き直しを推奨しマス。』
「黙ってろ!」
「捨てといてください。」
「ヤメテ!?」
研究室の窓からはちょうど屋外演習場が見えるのだが、そこではカレンとアリュールが魔法の訓練をしている。
精霊が見張っているため、暴発しても安全だ。
強くなりたいなら簡単な魔法を完璧にしろと言っておいた。
それもあって目を離していても安心できる。
「ちょっと、捨てないで!お願い!?」
『代筆をしておきましタ。お納めくだサイ。』
「いつの間に!?確かに誤字脱字は無いようだ。それに見やすい。僕の助手にならないか?」
うるさいなぁ。
「何勝手に勧誘してるんですか。」
『ダメダメなご主人様、いいカモ。』
「なんか感情があるような気がするんだけど。」
「世話好きになるようにプログラムしたので、ダメ人間から勧誘されて、世話したい欲が出てきたのでしょう。」
「それなら僕にくれないか。お金なら払うよ!何ならゴーレム作りのパトロンになろうじゃないか。」
「考えておきます。」
「そんなあ〜。」
『…』
ゴーレムが残念そうな顔をするなよ。