17話 里帰り
今私はダンスを踊っている。いや、踊らされている?
何をしているかと言うと、もちろんダンスのレッスンだ。私はダンスが嫌いだ。どうしてかというと、ドレスを踏んでしまうのだ。
「あなたがこんなにダンスができないなんて、あなたにも苦手なものがあったのですね。」
「それは、まぁ人間なので。」
「あなた、戦っている時は凛々しさと美しさがあるのに、ダンスになった瞬間酔っ払いが騒いでいるかのような無様さになっていますよ。」
「うぅぅ〜、普通に悪口じゃないですか〜。」
「フフ、いつかの意趣返しというやつですわ。」
「ぐぬぬ〜。」
なんとかダンスのレッスンを乗り切った後、辺境伯がやってきた。
「メイくんが来てから一年が経った、一度実家に顔を出してきても良いよ。帰ってきたら王都に行くからね。」
「え?どういうことですか?」
「いや、一度里帰りをと…」
「そちらではなく、王都に行くと。」
「炎龍を倒した力を披露してもらうと前に言っただろう?その日取りがようやく決まったんだ。」
「あれから一年も経ってようやくですか。」
「ああ、そう思うよね。」
「いつ出発ですか。」
「一週間後だ。」
「それまでに戻ってこられればいいと。」
「そういうことだよ。」
「分かりました。」
「私も行ってみたいわ!」
「何も無い村ですよ?」
「私、村に行ったことが無いの。だから、何も問題無いわ!」
「いや、でも。」
「私からもお願いするよ。君が一緒だと安心だし。なにせ龍を倒した少女だからね。」
「そこまで言うなら。がっかりしても知りませんよ。」
「分かっているわ!」
こうして二人で村に帰る事になった。
「あっ」
「どうしたのかな?」
「私、村の名前知らない。」
「…君の村の名前はカイール村だよ。」
「ありがとうございます。興味がなかったので覚えていませんでした。」
「はぁ、やっぱり心配だ。」
平民がどのような暮らしをしているかを見るために、専用の馬車ではなく、辻馬車を使って行くことになった。
「お尻が痛いですわね、もう。」
「まぁ、平民の乗る馬車はこれより酷いので。」
「そ、そうなんですの?」
「はい。」
「イエーグに来る時もこうだったの?」
「いえ、私は走って行ったので。」
「あなた、ちょっとおかしいんじゃありませんの?」
「失礼ですね、私はちょっと鍛えてる8歳児ですよ。」
「ちょっと鍛えただけで龍を倒せるわけないですの。」
「そんなこと言われても。私はただ、工夫して戦っているだけですよ。」
「工夫?」
「はい。近接戦闘の時は相手の力を利用して、魔法戦の時は相手の魔法陣を見て、無効化する魔法を使ってるだけですよ。」
「それがおかしいと言っているのですわ!どこにあなたのように瞬時に魔法を無効化する8歳児がいるんですか!」
「ここにいるじゃないですか。」
「黙らっしゃい!」
そうやって話していると、あっという間に村に着いた。
「まm…お母さんただいま。」
「メイ、帰ってきたのね!」
「辺境伯様が一度帰ってもいいって言っくれたの。」
「そうなの。大きくなったわね。そちらの子は?」
「この子は辺境伯様の娘のカレン、カレン。」
「ええ、私、ヘイミュート辺境伯の一人娘、カレン・フォン・ヘイミュートですわ。よろしくお願いいたしますわ。」
「あらあら、どうしましょう、お客様をおもてなしする準備をしていないわ。」
「突然押しかけたのは私の方ですから、お気遣いだけうけとらせていたたきます。」
すごいちゃんとしている!いつもこれくらいすればいいのに。
お母さんとカレンはすぐに打ち解けた。
今は三人で話している。
あぁ、帰って来たんだな。