157話 怪物の飼い主
辺境伯視点
今、私の眼下では娘の連れてきた者達によって魔物の軍団が駆逐されていっている。
「我が娘ながら恐ろしいね。」
「恐ろしい?頼もしいのでは?」
「そうだね。あの娘がいれば我々は安泰だからね。」
「どういうことですか?」
「あの娘のおかげで怪物共を味方に付けることができ、政敵を追い落とすことができたのさ。」
「怪物、ども?」
「ヤツらはカレンがいなければあそこまで協力的ではなかっただろう。」
「ヤツら?」
「君が知る必要は無いよ。死にたくなければ、ね。顔を青くする必要はないさ。普通に暮らしていれば知ることはない。」
「そう、ですか。」
「学園でも新しく飼い慣らしたみたいだ。人たらしというのかな。」
「怪物や飼い慣らすという表現はどうかと。」
「ヤツらは怪物だよ。我々では絶対に勝てない存在。たった一人で一軍を相手にできる者を人間とは言わないのさ。それを協力的にしているのがカレンだ。アイツらは金では動いてくれないからね。そこが安心材料でもあるんだけど。」
「カレン様はそんなことをしている様には見えませんが。」
「無意識の行動だからね。怪物の心は欠けている物がある。そういう欠けたものをカレンは持っているんだ。」
「欠けたものですか?」
「そう。カレンは人間として強い訳じゃない。でも、あの純粋な性格は人を惹きつけるものだ。特に心が歪んでいる怪物には効果てきめんさ。」
「な、なるほど。」
「あまり納得していないようだね。お、撃退したみたいだ。じゃあ、愛娘を迎えに行ってくるよ。」
「カレンちゃん!パパのピンチに駆けつけてくれるなんて、パパ感激だよ!」
「お父様、こんな所で抱きつかないでよ。皆見てるわ。」
「そんなこと言ったって、パパはカレンちゃんがいなくて寂しかったんだよ。」
「恥ずかしいからダメよ。それはともかく、間に合って良かったわ。怪我してない?」
「していないさ。パパにはカレンちゃんがついてるからね。」
「もう、お父様ったら。」
「そこのお嬢さんは学園でできたお友達かい?」
「そうなの、アリュールって言うのよ。」
「カレンちゃんにはお世話になっています!アリュールです!」
「緊張する必要は無いよ。カレンのお友達なら大歓迎さ。」
「でも、何でここに来たんだ。危ないことはしないで欲しいな。」
「メイを追いかけて来たの。もしかしたらいじめられたのかと思って。」
「メイくんがいじめられただけで逃げ帰るほど柔じゃないだろう?」
「そうなんだけど、メイって殿下のこと殴ってるからもしかしたらと思って。」
「何をやってるんだ、あの子は。」
「あ、帰ってきたみたいだぜ。」
メイ視点
道中で倒した敵兵達を引きずりながら帰ってきた私は、捕虜として預けた後、カイトを問い詰めていた。
「で、何でカレンがここにいるんですか。」
「雇われの弱いところが出たというか、何と言うか。話は数日前に遡るんだ。」
「簡潔に話して欲しいんですが。」
「とにかく聞いてくれ。俺達はな…」
意地でも回想話をするつもりだな。