表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/502

153話 父娘の会話

「ここは、酷いわね。」

そこは重傷者用のテントだったが、薬を使い包帯を巻いただけの処置しかしていないため、止血ができず、血の匂いが充満していた。

「我々ではこれ以上の処置が出来ないんだ。どうか、痛みをとるだけでもやって欲しいんだ。」

「分かりました。」

ここは慎重にいくために全員まとめてやるのではなく、一人ずつ治していくとしよう。


怪我人のほとんどは骨折や、剣による切傷なのでパパっと治していく。

問題は最後の三人だ。

目を潰されていたり、腕の欠損だったり、感染症を引き起こしていたりと、とにかく酷い状況だ。


まずは目を失った人からだ。

一言言って目を開く、眼球は潰れているが、まだ中にあるようだ。

これなら治すことができる。

回復術«再生(リグロース)»

「目が、目が見えるぞ!ありがとう、ありがとう!」

「はい。お大事にしてください。」


さて、次なんだが。

私にはどうすることもできないな。

「ごめんなさい。失った部位があればくっつけることはできますが、一から作り直すことはできないんです。」

「ということは完全に失った俺はもう治らないのか。」

「誰かがあなたの腕を拾っていれば治せたのですが。」

「そうか…いや、君が気に病むことではない。運が悪かったと思うよ。」

「ごめんなさい。」


感染症もできることは少ないんだよな。

傷口が膿んでいるから消毒して、体力を回復するくらいしかやりようがない。

「この方も私にはどうすることもできません。聖術ではケガは治せても病は治せないんです。」

「じゃあ俺はこのまま死ぬのか。」

「いえ、栄養のある物をたくさん食べて、体力を付ければ、死ぬことはありません。」

「分かった。ありがとう。」



「本当にありがとう!あの三人は死ぬ運命なんだと思っていたが、君のおかげで皆生きている。命の恩人だ!」

「そんなことはありません。私はできることをしたまでです。ただ、あの人の病気は他人に伝染る可能性があるため、あまり人を近づけないでください。」

「伝染病だって言ってたな。分かった。俺たちも気をつける。」

「それでは私はこれで。」

「本当にありがとう!」



「メイはすごいな。俺には絶対に出来なかったことだよ。」

「お父さんは懸命にあの人たちの看病をしてたんでしょ?それは優劣をつけることじゃないよ。」

「俺は本当にメイが12歳なのか疑問に思うときがあるんだ。」

「茶化さないでよ。」

「父さんはもう行かないといけない。何でこんな所にいるのかは知らないが、怪我をしないように気をつけるんだぞ。と言ってもメイなら簡単に治せるか。」

「うん。多分、すぐに終わると思うから。帰ったらお母さんによろしくね。」

「ちゃんと帰ってこいよ。お母さんも俺も寂しいんだからな。」

「うん。次の休みには帰るよ。」

「じゃあな。」

こうしてお父さんとは別れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ