152話 グハ!
「これからどうするの?」
「父に会いに行こうかと。」
「あ、ここにいるんだったね。気になるからついて行こっと。」
「普通の人ですよ。」
「またまたー、メイさんのお父さんが普通なワケないじゃん。」
「まあ、見れば分かると思いますよ。」
「え、ホントに普通の人なの?」
聞いていた場所はここら辺のはず。
キョロキョロと辺りを見回していると、
「メイ!?」
「あ、お父さん。」
「何でこんな所にいるんだ!学校はどうした?」
「学校は休んできた。」
「何をやっているんだ。」
「この人がメイさんのお父さんなんだ。」
「こちらのお嬢さんは?」
「こちらはサキさん。辺境伯様のところでメイドとして働いているわ。今回は私に着いてきてくれたの。」
サキはギョッとしているが、大方敬語を使っていないことに驚いているのだろう。
「あ、どうも。メイがお世話になっております。メイの父です。」
「こちらこそ、メイさんにはお世話になっていまして。」
「とりあえず、ここは子どものいる所じゃない。こっちに来なさい。」
父がいた所は応急処置を施すためのテントらしく、中には軽傷の兵士が数人いた。
「あれよりも酷いケガを見たことあるから何とも思わないよ。」
「それはそれでどうかと思うな、父さん。」
「聖術を使える人はいないの?」
「聖術を使える人なんて教会の司祭様くらいなもんだ。でも、そんな人はこんな所には来ない。だから、薬を使って応急処置をするくらいしか出来ないんだ。」
「あ、そうか。メイさんがポンポン使ってるから皆使えるんだと思ってた。」
「メイは聖術が使えるのか?なら、ここにいる人たちを治してあげてくれないか?」
「いいけど、他の人に何か言われないかな。」
「大丈夫だ。何か言うやつには言わせておけばいい。」
「分かった。皆治してあげる。」
「で、この子が聖術を使えるのか?」
「本当なんだよ。騙されたと思ってさ。」
「まあ、嘘だったとしてもこっちに損は無いからいいけどさ。俺にはそんな小さな子ができるとは思えないよ。」
「メイ、やってみてくれ。」
「うん。」
回復術«治癒»
「おお、本当に治ったぞ。」
「マジだったのか。疑って悪かったな。」
「いえ。」
「それで何人治せるんだ!軽傷者がいなくなれば、重症者をつきっきりで看病できるんだ。」
「軽傷者をできるだけ密集させてください。」
「わ、分かった。」
回復術«範囲治療»
「全員治ってるぞ!」
「これはすごい。」
「こんなことまでできるのか。父の威厳が。」
「威厳は元々無いから気にする必要はないよ。」
「グハ!」
「これよりも重傷な患者を治せるか?」
「はい。」
「バッサリ斬られていてもメイさんなら治せるわ。」
「それは頼もしい。こっちだ、着いてきてくれ。」
娘から心無い言葉を浴びせられ崩れ落ちている父を完全にスルーして話は進んでいくのであった。