150話 悪魔憑き
「私たちも行きましょう。」
「どこに?」
「偵察ですよ。」
「威力偵察でもするつもり?面白そうじゃない。」
「気をつけるんだよ。…ああ、そうだ。カイール村の男手も徴兵してるから暇があれば見に行くといい。」
「カイール村って?」
「私の実家がある村です。お父さんも参加してるんですか。」
「うん、そうだよ。ただ、今回徴兵したのは後方支援をさせるためだから危険は少ないよ。」
「そうですか。時間があれば様子を見に行ってきます。」
「そうしなさい。最近会ってないだろ?こんな所ではあるが、顔を見せれば喜ぶだろう。」
「それはどうですかね。それでは行ってきますよ。」
「いってらしゃい。」
辺境伯は手を振り私たちを見送った。
「とりあえず、敵の本陣にでも行きましょうか。」
「え、メイさんはともかく私死ぬけど。」
「大丈夫ですよ。遠くから狙撃して敵を釣るだけですから。」
「大丈夫だと思えないんだけど。」
「そこまで言うならしょうがないですね。本隊から離れた部隊で様子を見ましょう。」
「普通そうよね。びっくりしたわ。」
「本隊に突撃した方が手っ取り早いんですけどね。指揮系統も破壊できますし。」
「それで生き残れるのはメイさんだけよ。」
「頑張ればいけますって。」
「血涙流すレベルで頑張ればいけるかもしれないけど、普通の人は血涙流せないのよ。」
「それは努力が足りないのでは?」
「死ねと言うのかしらこの悪魔は。」
「私は流したことありますよ。」
「そんな自慢いらない…」
「どう?見つけた?」
私たちはマジメに偵察をし始めた。
「ここから数百メートル行った場所に10人いますね。私一人で行ってきますけど、一応フォローの準備しておいてください。」
「了解。任せておいて、サポートは得意なの。」
数百メートルを数秒で駆け抜け、突っ込んでいく。
敵の中心に降り立ち、回転斬りで全員を斬り飛ばす。
とりあえずの様子見だが、コイツらが悪魔憑きならこの程度で終わることはないだろう。
案の定、すぐに立ち上がり向かってくる。
立ち上がり方が〇イオハザードのゾンビなんだよな。
傷はすでに再生しているようで、動きに精彩をかいている様子はない。
検証といこうか。
一匹目は首を切断する。
二匹目と三匹目は縦と横に両断する。
四匹目は手足を斬り、五匹目はサイコロ状にバラす。
六匹目は心臓を穿ち、七匹目は魔法で塵にする。
八匹目は魔法で潰し、九匹目は感電させる。
十匹目は思いつかなかったので、適当に切り刻む。
「メイさん。これは、派手にやったわね。」
「これはめんどくさいですね。普通やっても殺せないとは。」
「どういうこと?」
「首を斬っても、心臓を潰しても死なない。もちろん手足を斬り落としたくらいで死ぬわけもない。」
「死体が無いんだけど、逃がした?」
「全員バラバラにしました。」
「この血溜まりと肉の欠片がアイツらの成れの果てなのね。コイツらが悪魔憑きなの?」
「はい。気配は覚えたので次からは戦う前から分かると思います。」
「殺せたのはバラしたのと、塵にしたのと、潰したのだけ?」
「はい。それ以外は再生しました。」
「まさしく化け物ね。これじゃあ、精鋭部隊でも倒せないじゃない。」
「なので、悪魔を分離します。手伝ってください。」