146話 プロローグ
今回はいきなり新章に行きます。
夏休みが明け、ひと月が経ったころ、
「久しぶりじゃの。」
「二ヶ月ぶりですか?」
「そんなに経っておったのか?時間の流れとは早いものじゃ。」
「典型的な年寄りの感覚ですね。」
「歳上は敬わんかい。」
「それで何の用ですか。」
「魔族が動いた。」
「場所は?」
「ヘイミュート辺境伯領と帝国領との国境線じゃ。」
「それは動かない訳にはいきませんね。」
「まだ知らせは届いておらんと思うが、帝国が兵を挙げた。いつもの小競り合いとは明らかに違う数じゃ。その兵士のほとんどに悪魔が憑いておる。悪魔憑きというやつじゃ。」
「その悪魔憑きはどの程度の強さですか?」
「とんでもない強さという訳ではない。じゃがそれが徒党を組み攻めてくるというのなら話は別じゃ。普通の軍隊では足止め程度しか出来んじゃろう。」
「なるほど。」
「生命力や身体能力は一般的な人間よりも高いが、判断能力が低い。ソナタであれば苦労せず倒せるじゃろう。後は聖術を使えば悪魔と人間を分離することもできる。」
「それは、私に悪魔憑きになった人間を救えと言うことですか。」
「いや、殺して構わん。じゃが、いざとなった時対処法を知らねば困ると思うてな。」
「帝国軍に悪魔憑きがいるということは帝国は魔族や天理教団と繋がっているということでしょうか。」
「それは分からん。帝都には教会が無く、情報の収集が難しいのじゃ。」
「前に全てを知っているって言ってたのに。」
「ワシが見たものや教会がある場所のことは全て分かるんじゃが、見てないものは分からん。見ただけで分かるのは普通にすごいことじゃろ!」
「まあ、認めたくはありませんが。」
「ワシに対して当たり強くない?」
「エロジジイに言うことは無いです。」
「エロくないし!?分別を持って接しておるわ!」
「そこまで言うなら、まあ…」
「まったく信じてない顔じゃな。神に対して思うことはあると思うが、ワシはソナタが昔あった神とは考え方も何もかも違うぞ?」
「それは分かってます。あなたが同じなら、あなたの頼みなんて聞いていません。」
「そうか。ワシのこと、おじいちゃんだと思って甘えてもいいのじゃぞ。」
「自惚れるなエロジジイ。」
「ホントに当たり強いな。」
「それにしても、学園を休まなければいけませんね。」
「すまんのぅ。本当は教会に行かせるつもりだったんじゃが、ただでさえ、デリケートな国境線で、しかも戦闘地帯じゃ、教会の影響力が邪魔をすることになる。」
「別にそこは気にしてません。言い訳をどうするかです。」
「大変じゃのう。」
「まったくです。」
「今日はこれくらいで帰るとするわい。頼んだぞ。」