145話 哀れ
剣術の実技授業があるように、もちろん魔法にも実技がある。
アリュールは実技の授業が苦手だったが、魔法が使えるようになり、やる気に満ちあふれているようだ。
「私、魔法が使えるようになったんだね。もう、先生に可哀想な目で見られなくてすむんだね!」
哀れすぎる。
「今度、使えると便利な魔法を教えてあげますからね。」
「え、うん。なんでそんな優しい微笑みをしてるの?」
「やっぱり、あの精霊たちを処さなければいけないのでは?」
「処すって、レイとルゥが可哀想だよ。」
「名前を付けたんですか?」
「そうなの。炎がレイで水がルゥ、いい名前でしょ?」
「そんな名前は贅沢です。生ゴミと粗大ゴミで十分です。」
「ホントに精霊嫌いなんだね…」
「何が自然を司るですか、契約者がいなければ何もできない癖に。」
「ヘイトがすごい。何があったというのか。」
「色々です。ええ、色々ありました。本当に…」
万感の思いをのせそう呟いた。
授業が始まり、先生が入ってきた。
「ハイ、皆さんおしゃべりやめなさい。前回に引き続き、中級魔法を練習していきます。それでは各自始めてください。」
私は学園で教えるような魔法は全て使えるので、基本的に隅っこで瞑想をしている。
やはり、瞑想が魔力回路の強化に一番効率的なのだ。
授業の課題はさっさと終わらせてしまうので、先生からは何も言われない。
というか、こちらに近づこうともしない。
生徒を放置するのはどうかと思うが、別に問題は無いのでこちらも何か言う必要はない。
今日も瞑想をしようとしていると、爆発音が聞こえた。
何事かと思い見てみると、アリュールが魔法を暴発させたようだ。
「あ、あれ?魔法が使えるようになったはずなのに。えい!」
「アリュールさん!魔力を込めすぎです!」
その言葉は間に合わず、ドカンとまた暴発が起きた。
とりあえず、アリュールを回収し、説教から入る。
「いいですかアリュール。使えるようになった今と使えなかった以前とは魔法の放ち方はまったく違います。今までは魔力を込めれば打てたのかもしれませんが、今そのやり方をすると行き場の無くなった魔力が暴走し、魔法が暴発するのです。魔法の暴発は危険なんですよ、ケガをしなかったのは幸運としか言いようがありません。」
「う、ごめんなさい。」
「魔法が使えるようになったからと少し気が大きくなっていますよね。まずは落ち着いきなさい。」
「はーい。」
「反省してます?」
「してるよ。落ち着いてのんびり行こうと思ったら、はーいになっただけだもん。」
「後で特訓ですね。厳しくいきますから。」
「そんなぁ!?」
結局アリュールはクラスの全員から同情の視線を向けられていた。
とりあえず、5章はこれで終わりです。
敵が出てこない平和な章でしたね。
次は敵がたくさん出てくるかも?