144話 残念イケメン
ダンジョンからの帰りの馬車で、
「私もついに精霊術士になったんだね。」
「今までも使えないことはなかったが、危なかったからね。」
「それに迷惑な呪縛も無くなったので、魔法も使えますね。」
「あれ?精霊たちは?」
『ここだ。』
アリュールの両肩に赤いトカゲと青い鳥が乗っていた。
「動物にも変身できるのか。これは興味深い。」
「そういえば、名前聞いてなかった。二人の名前は?」
『ふむ、主が付けてくれんか。』
『私もお願いしたいです。』
「え?私が付けるの?」
「いよいよ、ペットみたいになってきましたね。」
『ペットって言うな!』
「ペットだからポチとか?」
「メイちゃん、ペットじゃないって。それにしても、私センスないから全然思いつかないよ。」
「好きな食べ物の名前でも付ければいいんじゃないですか。」
「すっごい適当だね。精霊と何かあった?」
「私、精霊と相性が良くないんですよね。考え方が合わないというか。」
「そうなんだ。」
その時、馬車が急に停止した。
「お客さんすまない、魔物が出た。でも、護衛がすぐに対処するから安心してくれ。」
窓から外を見ると、20匹ほどの狼型の魔物が周りを取り囲んでいた。
「あれ、大丈夫なの?護衛は5人くらいしかいないけど。」
「もしかしたら、すごい強い人たちなのかも。」
「おそらく、あの人たちは負けます。加勢に入る準備をしなければ、アリュール、初陣になりますが、いけますか?」
「だ、大丈夫!精霊さんやメイちゃんだっているんだもん。安心して戦えるよ。」
襲われかけていた御者を馬車の中に引き込む。
次に、護衛を見てみると以外にも善戦しているようだ。
「助けに行かないの?」
「彼らの仕事を奪うわけにはいきません。なので、彼らが危険に陥れば、すぐに助けに入れるように準備しているんです。」
「なるほど。」
「魔物は先にあの護衛を倒すことを優先したようだね。」
何とか均衡を保っていた護衛たちだったが、疲労により一人がミスをするとそこからの崩壊は早かった。
「そろそろ限界ですね。行きましょう。」
攻撃しようとしている狼を突き刺し、放り投げる。
これで狼は私を警戒して迂闊に近寄れないはずだ。
カレンとアリュールは二人で背後からの攻撃を警戒している。
精霊が前に出て、後ろでカレンが魔法を放っているようだ。
狼は炎を恐れて近づくことができず、上手くやれているようだ。
ニコラスは一人離れて群れに向かっていった。
大丈夫だよな?
4人?で狼を殲滅していき、5分経ったころには狼の死体が転がっていた。
中には全身を火傷に覆われている物や、元が分からないレベルまで損傷している物もあった。
「助けてくれてありがとう。パーティのリーダーとして礼を言う。」
「いえ、早く帰りたいだけなので、礼はいりません。」
「あれ、ニコラス先生は?」
「ホントだ。食べられちゃった?」
「食べられてはないよ。」
「ボロボロじゃないですか。一人で突っ込んでいくからですよ。」
「ちょっと危なかったけど、色々と検証したいことがあってね。実に有意義な時間だった。」
「ああ、この人はこんな感じだったわね。」
ジト目になっているカレンであった。




