143話 犬猿の仲
「ここが精霊の泉?ここ地下のはずなのになんで太陽があるの?」
「ここはゴブリン迷宮からしか来ることができない異空間なんだ。」
「へぇー、スゴーイ。」
「あそこにある石の階段の上には祭壇がある。そこで祈れば、君と相性の良い精霊が姿を現すだろう。どんな精霊が現れるのか楽しみだ。フヒヒ」
「笑い声気持ち悪いです。」
「フヒ…」
「なんで落ち込むんですか。普通に笑ってくださいよ。」
なんてめんどくさいんだ。
「じ、じゃあ行ってきます。」
「気をつけてね。何かあったら助けるわ、メイが。」
いや、私かよ。
前にもあったな、このくだり。
「うん、頼りにしてる。」
祭壇に向かったアリュールは、跪き祈る。
「何も起きないわね。」
「そんなはずはないのだが。やはり、彼女と相性の良い精霊は少ないのだろうか。」
「前に言ってた、親和性の話?」
「そうだ。彼女の親和性の高さでは弱い精霊は役不足なんだ。」
「それに、アリュールに目を付けていた精霊たちがアリュールを手放すはずがありません。ヤツらは執念深いんです。」
その時、赤、青の二つの光が現れた。
「二つだと?普通現れる精霊は一つのはずだ。」
「おお、すごいわ!」
光がおさまると、そこには真っ赤に燃えた、イケメンと全身が水の美女が立っていた。
「せ、精霊さん?」
『ようやく来たのだな。』
『待ちくたびれました。』
『ワシと契約するがいい。主の敵を尽く燃やしつくしてやる。』
『私は君を守るわ。癒しと防御に特化した水の力、必ず役に立つわ。だから、私と契約しなさい。』
『何だと、ババア。この御仁と契約するのはワシだ!』
『ジジイが戯言を、この方に一番役に立つのは私よ!』
「え、えーと、ケンカしないでぇ。」
アリュールの言葉は聞こえていないようで言い争いはさらにヒートアップしていった。
『なんだババア!やるのか!?』
『望むところよ。このクソジジイ!』
このままじゃホントに戦い始めそうだから、黙らせるか。
私は魔力を放出し、二体の精霊を威圧した。
『な、なんだ!』
『この魔力は!』
「黙りなさい。お前たちが戦ったところでアリュールが選ばなければ意味が無いだろう。」
『少し熱くなりすぎていた。』
『確かにそうです。』
「アリュール、あなたはどうしたいですか?この精霊たちと契約しますか?魔法が使えない元凶はコイツらなので消してしまえば、魔法も使えるようになりますよ。」
「ええ!?そうなの!?」
『け、消さなくともワシらと契約すれば、その呪縛もとけるはずだ。』
『そ、そうよ。コイツと一緒なのは嫌だけど、我慢するわ。』
『何だと!?ワシだってお前なんかとはゴメンだ!?』
『なんですって!』
「二人とも!な、仲良くしないと契約してあげないよ。」
『それは困る。』
『あなたがそう言うなら仲良くすることにするわ。』
「そう?嘘ついたらダメだよ。じゃあこれからよろしく。」