140話 小さな願い
カレン視点
「アリュール、ちょっといいかしら。」
「カレンちゃん何?」
「メイとケンカしたって聞いたわ。」
「あれは…ケンカなんかじゃないよ。ただの私の嫉妬だよ。」
「嫉妬か。私もね。メイのことが分からなくなったときがあるわ。」
「どういうこと?」
「メイは小さなときからなんでもできたわ。賢いし、強いし、気配りもできる。メイドたちからは怖がられてたけどね。ハッキリ言って私はあの時、メイに嫉妬していたわ。それと同時に不安になった。もし私が貴族じゃなくなったら、メイは離れていくんじゃないかって、でも違ったの。メイはやりたくない仕事はやらないって言ったわ。メイは私のところに居たいんだってその時は思った。私はメイに何もしてあげられないけど、メイが帰ってくる居場所になろうって思ったわ。」
「居場所…」
「そう。メイは私たちなんていなくても何でもできる。でも、私たちがいないとメイは安心出来ないの。それに、メイに嫉妬しても意味が無いって分かっちゃったしね。」
「どういうこと?」
「メイのいる領域は簡単な努力や、才能だけではたどり着けない場所なの。メイは普通に訓練してるなんて言うけどそんなの嘘。ホントは血のにじむような努力をしているわ。メイよりも才能も、努力も足りない私が嫉妬なんて何様だって思ったの。根本的な解決にはなってないわ。でも、心の持ちようだと思うわ。」
「私は…」
「メイは謝ったんでしょう?ならそれは、メイがまた仲良くしたいって望んでるってこと。さて、後はあなたがどうしたいかよ。私たちがメイに何かしてあげたいと思うなら、メイの小さな願いを叶えてあげることしかないの。」
「小さな願いか。」
「そう、仲良くしたいっていう小さな願いよ。」
「そんなこと言われたら謝るしかないじゃん。」
「あら、ごめんなさい。」
後日
「メイちゃん、その、今まで避けててごめんなさい。今まで通り友達でいてくれる?」
「ええ、アリュールが望むなら友達でいましょう。」
「ウエーン!ごめんね〜。」
「泣く必要も謝る必要もありませんよ。」
「私、決めたよ。私は必ずメイちゃんに何かお返しをする!いつになるかは分からないけどね。」
「そうですか。期待せずに待っていますよ。」