136話 見覚えはあるけど分からない時ってあるよね?
ある日、私たちが研究棟から出ると、見覚えのある顔が立ち塞がった。
「何か用ですか。」
やばい、名前を思い出せない。
「気に入らないわね、その態度。平民は逆らわずにペコペコしていればいいのよ。」
敵意剥き出しだ。こういうのは逆らわせる気力を失わせておいた方がいいな。
「アンタ調子に乗ってるでしょ。みんな言ってるわ、ウザいって。」
「はぁ、そうですか。」
もしかして、物が捨てられてたりするのはコイツの仕業か?
幼稚すぎて気にもとめてなかったんだけど。
「何その生返事。」
「用はそれだけですか?」
「私は出る杭は打たないといけないと思うの。」
はいかいいえで答えろよ。
「はあ」
「簡単に決着をつけたいなら方法は一つしかないわ。」
来たな。こういう輩は上下関係をハッキリさせようとする。
「決闘よ。」
「決闘?」
「そう、魔法で決闘。断るなんて言わないわよね。」
「いいですよ。ルールはそちらで決めていもらっても構いません。ただ、立会人はこちらで用意します。」
「自信があるようね。」
「どうでしょうか。」
「メイちゃん!大丈夫なの!?」
「大丈夫とは?」
「さっき物陰から見てたけど、ルールを決めていいなんて!負けたらどうなるか分からないよ!?」
「だからいいんですよ。普通に過ごしたいなら、変なことを考える輩を徹底的に潰さないと。…フフフ」
「いや、物騒すぎるよ!?」
「大丈夫ですよ。私がたかが学生が群れただけで負けるはずありませんよ。」
「でも、すっごくズルいルールを出してくるかも!」
「立会人にはダニエル先生を連れていくつもりなので、変なルールを入れることはできませんよ。」
「それなら安心なの?」
「誰を敵に回したのか、存分に味あわせてあげましょう。」
何なのよアイツは。
あの得体の知れない自信ありげな態度、何かあるの?
落ち着くのよ私。どうせ虚勢よ。
ルールすらこちらで決めていいんだから負けるはずがないわ。
所詮は平民、貴族には勝てないわ。
とは言え、何かあると思って行動しないとマズイかもしれないし、ここはやっぱり多対一で余裕の勝利が一番ね。
フフフ、どんな顔をするかしら。
せいぜい、首を洗って待っているがいいわ。