133話 信頼の理由
「では、お願いします。」
私たちは、ギルドの中にある待ち合わせ用のスペースに移動した。
「さて、一応確認だが、精霊の泉にいきたいんだよな?」
「はい。」
「そのためにはゴブリン迷宮を通らないといけないって知ってるよな。」
「はい。」
「君たちのランクでは行けないと思うんだけど、どうするつもりだ?」
「一緒に行ってくれる冒険者に心当たりがあります。」
「なるほどな。じゃあ、教えても大丈夫だな。」
「教えても?」
「いるんだよ。冒険者になった途端、調子に乗るヤツらが、もし君たちが何の準備も無く、行こうとしているなら適当に脅かして終わらせるつもりだった。」
「そうなのね。じゃあ、お眼鏡に叶ったといったところかしら?」
「ああ、合格だ。長々と話してても意味が無いから話していこうか。精霊の泉はゴブリン迷宮の一層の奥にあるんだ。一層はゴブリンが一匹で歩いててな、初心者にちょうどいいんだ。付いてきてくれる人がいるなら事故が起こることもないだろう。罠とか飛び道具を使う魔物もいないから危険が少ないんだ。」
「下の方に行くと罠があるの?」
「ある。魔法罠じゃないから魔法使いがいても分からないんだ。下に行きたいなら、シーフがいないと話にならない。後、地図はゴブリン迷宮の前で売ってるからそれを買え。まあ、これくらいかな。気をつけろよ。」
「親切な人たちだったわね。」
「そうですね。明日、研究室に来ませんか?ニコラス先生に一緒にダンジョンに行けるように頼みましょう。」
「そうね。明日、お邪魔するわ。」
「カレンちゃんも一緒に行けるのか。カレンちゃんの魔法はすごかったから心強いよ。」
「メイがいれば私はいらないと思うけどね。」
「メイちゃんが戦ってるところ見たことないんだけど、そんなにつよいの?」
「素人じゃ目に見えないわよ。いつの間にか相手が倒れてるの。」
「なにそれ?相手は?」
「家の騎士たちよ。」
「家に騎士がいるんだ…。そういえば、カレンちゃんはダンジョンに行ってもいいの?怪我とかしたら大変なんじゃないの?」
「大丈夫よ。メイの防御魔法を突破することなんてできないわよ。」
「少なくとも一層の魔物に破られるような魔法ではありませんよ。」
「そうなんだ。どれくらいの魔法なの?」
「物理的な攻撃も魔法も毒もすべて防ぎますし、毒を盛られても、急速に無毒化します。」
「確か…«完全耐性»だっけ?」
「そうですよ。」
「なんかすごい名前だね。自分にも防御魔法かけてるの?」
「はい。私のは«自動防御»ですね。」
「違うんだ。」
「«自動防御»の方が魔力消費が少ないんですよ。」
「そうなの?大変なんだったら、私のもそれでいいわよ?」
「辺境伯様には手を抜くと言われているので、知られるとお小言が飛んでくるんですよ。」
「お父様に言っておく?」
「そこまで負担ではないので、別にいいですよ。ダンジョンに行くときはアリュールにも防御魔法かけますから安心してくださいね。」
「ありがとう。でも、なんか悪いな。」
「遠慮する必要はありませんよ。魔法の一つや二つ変わりませんから。」
「自動で動く魔法って魔力消費がハンパないって聞いた気が…なんでもないです。」
メイがジト目で見ていることに気づいたアリュールは言いかけた言葉を慌てて呑み込んだ。
「じ、じゃあ、また明日ね。」
«完全耐性»・・・あらゆる攻撃を防ぐことができる自動防御魔法。これを一日中発動させておくだけで平均的な魔法使い3人分の魔力が必要となるが、メイはカレンに心配させないように詳しく話していなかった。
«自動防御»・・・魔法や物理的な攻撃を防ぐことができる自動防御魔法。メイはこの魔法と気配察知などの探査魔法を組み合わせて使っている。もちろん魔力消費は平均的な魔法使いでは維持できない量。