112話 魔法の真髄
王都の一角で異様な雰囲気が広がっていた。
月明かりに照らされた影が交差する度に金属と金属のぶつかり合う音が響いている。
「しぶといな。いい加減観念したらどうだ?」
「それはこっちのセリフだ。」
何度も切り結んでいる彼らには疲れが見えていた。
「これならどうだ。嬢ちゃん直伝、一刀流剣術«斬鉄»」
「あれは、受けたらマズイ!『影よ!』」
言霊に反応し、カイトに影が殺到する。
しかし、すべての影を切り払ってもカイトの勢いは止まらなかった。
「これで、どうだ!」
「チィィ!」
手応えがあり、鮮血が飛ぶ。
しかし、致命傷ではなかった。
「マジか!リーチが足りねえ!」
「調子に乗るな!暗黒術«黒雷»」
黒い雷が殺到し、カイトを感電させる。
「あばばば。ケホッ。イッツー、狭いところだと不利だな。鬼さんこちら!」
「逃げただけか、罠か、どちらにしろ逃がすわけないがな。」
カイトの挑発にあえて乗り、場所を移す。
カイトは迷うことなく移動していく。
その間も攻撃の応酬は続く。
カイトは何かを見つけたらしく、袋小路へと降りていく。
袋小路に降り立ったカイトはアークゼクトを奥に追いやるかのように攻撃する。
「ほらよ!短剣術«昇り龍»」
「今さらそんな小細工が効くと思っているのか!」
アークゼクトは攻撃を弾き、袋小路の行き止まりを背に降り立った。
「追いかけて来てくれると思ってたぜ。サキ!」
「了解。雷魔法«雷鎖»」
「その魔法は速いが、来ると分かっているなら避けるのは容易いぞ。」
アークゼクトが魔法を避け、その魔法が地面に当たる直前に直角に曲がり、アークゼクトを追尾してきた。
「それはほぼ直線でしか動かないはず!なぜ!?」
「それを教えてやる義理は無いな。」
「別にアンタ何もしてないじゃない。」
「まさか!力場を作っていたのか!」
「ご名答ね。何の準備も無しにこんなことは出来ないけど、準備さえ出来れば簡単にできるのよ。」
「それ、俺が言いたかった。作戦立てたの俺だったのに。」
「力場がどれほど広がっているかは知らんが、術者を殺せばいいだけだ!」
「そんなことさせると思うのか?」
「邪魔をするな!」
魔法を避け、カイトと戦いながらサキを狙うことは難しい。
しかし逃げようとすればサキが自分の守りに使っていた魔法も攻撃に使用するため逃げることもできなかった。
(このままではジリ貧だ。どうする?)
「観念しろ!こっちだっていい加減疲れてるんだよ!」
「知ったことではない!」
アークゼクトは魔法による包囲網を強引に突破し、サキに一撃喰らわせようとしたが、
「させるかよ!」
カイトに阻まれ一歩届かなかった。
しかし、包囲網を突破し、力量の外に出るという目的を達成していた。
「悔しいが、ここは引かせてもらおう。」
「おい!待て!って逃げ足速!サキ大丈夫か?」
サキはその場に座り込んでいて、疲労困憊といった様子だった。
「大丈夫だけど、しんど過ぎ。なんなのよう、もう。」
「とりあえずだけど、ようやく終わったな。なんかすごい長いこと王都にいた気がするよ。」
「そうね。」
いつの間にか空は月が沈み、太陽が出てこようとしていた。
暗黒術«黒雷»・・・黒い雷が広範囲に広がりその中の物体が感電する術
短剣術«昇り龍»・・・短剣を上に振り上げるというシンプルな技
雷魔法«雷鎖»・・・雷と同等のスピードがある魔法。速すぎるため術者が操作することができない
力場・・・ある空間の法則を書き換えることで自分の思い通りに事象を操作することができる技術
すごい簡単に言うと魔法を使いやすくなら空間のこと