110話 ブチ切れ
「バカ!後ろ!」
「え?」
サキからの警告でカイトが後ろを向くと数人の騎士が筒状の道具を構えていた。
「ヤバ。」
騎士はカイトが後ろを向いた瞬間筒からネットを発射した。
ネットは広範囲をカバーしており、カイトであっても避けることは不可能だった。
カイトはこれで捕まるか、正体がバレることを覚悟したが、その時は来なかった。
「だから言ったじゃない。油断するなって。」
「お前、なんでここに。」
カイトを助けたのはサキだった。
「アンタが通信を聞かないからでしょうが!」
「ス、スマン。」
「アイツ、男か?」
「男だよな?」
「多分男だろ。」
騎士は突然の闖入者に戸惑いを隠せないようだった。
「男?」
「あ、ヤバ。」
サキから血管が切れた音がしたような気がした。
「誰が男だ!テメェらの目は節穴か!あ?ぶち〇すぞこら!」
「ドウドウ。抑えろ!な?ワザとじゃないみたいだし許してやれよ。」
「当然だろ!ワザとだったらぶっ〇す。ワザとじゃなくてもぶっ〇す。テメェらは死刑だ!」
「あー、そう言うことなので、またお会いしましょう。」
「ちょっと!離しなさいよ!せめて一発殴らせなさいよ!」
カイトはサキを担いで足早に去っていた。
「なんだったんだ?」
「さあ?」
「クッソー。次会ったら絶対殴ってやるんだから。」
「機嫌治せって。お前の今の格好じゃ間違われても文句言えないぞ。」
「それでもムカつくのよ!」
サキの着ている衣装は分厚い生地でダボッとした感じで作られており、スタイルがでにくいデザインだった。
「サキ!」
突然、カイトがサキを抱きかかえて跳躍する。
「え?!」
サキは何がなんだか分かっていない様子だった。
カイトが飛び退いた瞬間、何かがカイトたちの居た場所に落ちてきた。
「何が!」
「敵だ。」
カイトはサキを自分の背後へと隠し、向き直る。
「何者だ?」
土煙の中からゆっくりと出てきた人物は
「俺はアークゼクト。貴様らを殺す者の名だ。」
「魔族か。何の用だ。」
「何の用か。シラを切る気か?貴様らが我が同胞を殺したのだろう!!」
「なるほど。仇討ちって訳か。」
『相手は下級魔族程度の魔力しかないわ。』
「なんで通信なんだ?」
『作戦を聞かれないために決まってるでしょ!このバカ!』
「うわ!耳元で叫ぶなよ。サキ、お前は手を出すなよ。」
『なんでよ。そんな奴さっさと倒しちゃいましょう。』
「だからお前は未熟だって言われるんだよ。少なくとも俺が合図を出すまで絶対に手を出すな。」
『わ、分かった。』
「作戦会議は終わったか?」
「待っててくれてありがとうよ。お前を倒す算段がついたぜ。」
「地獄を見せてやろう。」