表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/8

なんでドラゴンと出会っちゃう訳?!

「どうして、こうなった・・・・・」


深い深い森の奥、今、アリサの目の前には、瀕死のドラゴンがいる。アリサが知らぬ何かの理由により、深く怪我を負っているか、または、具合が悪いのか、そのどちらもなのかもしれない。とにかく、今、目の前には、ドラゴンが目をつぶったまま、虫の息で冷たい地面の上に横たわっている。


国の聖獣ともいわれる神聖なドラゴンだ。


そもそも、この国にはドラゴンなど、その辺にいる訳ではない。むしろ、希少な精霊のような扱いで、百年、いや、数千年に一匹、人の前に現れるかどうか、くらいの生き物である。


「なんでこんな所にドラゴンが……」


やるせなさげに、アリサは一人呟く。


ぐっと涙をこらえ、泣きそうになりながらも、アリサは己の不幸体質をつくづく嘆きたい思いで一心だった。


どういう訳か、アリサは今までの人生において、立ち寄る先々、行く場所で、なにかしらの不幸な事件に巻き込まれる。上級侍女から言いつけられて、厨房に食器を取りに行けば、たまたま、その日は床掃除の日だった。


両手いっぱいに抱えた食器を、つるりと滑った瞬間、派手に割ってしまったり、本を取りに行かされれば、図書室の本棚が何故か倒れてきて、本棚の下敷きになる始末。子供の頃から、そういう体質なのだ。


アリサは王宮で働く侍女である。マルグレータ子爵家の三番目の娘であるアリサは、貴族カースト最底辺を行く。その下級貴族の三女であるアリサは、王宮の中でもやはり下級侍女なのである。


しかし、そこは腐っても貴族子女であるから、最低限のレベルは確保しているのだが。


その日、アリサは女官長様の言いつけにより、森のキノコを採取にいかされていたのである。


王宮に上がって、まだ三ヶ月しか経っていないと言うのに、すでにみんなからはドジっ子認定されてしまった。他の人に比べれば、自分はただ運が少し悪いだけなのに。


結局、あまりにも粗相が多すぎるため、「アリサを外勤にだそう」という話の流れになった。


そういう訳で、今日のアリサは女官長様から言いつけられ、秋の木の実を採取しにきたのだ。


下級貴族の子女であるアリサは山奥の田舎育ちだ。森の中なら、なんでもこいのはずで、女官長様にも普段のドジを挽回しようと、森なら任せくださいと、必死にアピールした結果、やっと手にいれた森の中でのお仕事なのだ。


幾らなんでも森の中でドジっ子全開にはならないだろうと、名誉挽回を兼ねて、勇み足で森の中に入ってきたはずなのに、巡り巡った結果がこれだ。


しかし、アリサの不幸体質は、あっさりと彼女たちの思惑の上を行った。


アリサは普通の、正直な所、どちらかというと鈍くさい部類にはいる女の子だが、目の前の弱った動物(?)に対して、いささかの同情心を持たないほど、冷酷な娘ではない。


目の前でぐったりとしている動物(?)を見て見ぬふりをして、通り過ぎる訳にはいかないのだ。大きな森の中で、独りぼっちでドラゴンと遭遇。泣きたくなる気持ちを抑えながら、アリサはおそるおそるドラゴンに近寄った。


「あの……ドラゴンさん? お具合がよろしくなくて?」


体長15メートルはあろうかという巨大なドラゴンだったが、つんつんと、ドラゴンを指でつついてみるも、ドラゴンはほんの少しだけ身を捩じった。


「わたくし、どうして差し上げたらよろしいのかしら?」


どうしたらいいのか、全くわからない。できれば、このまま、目を開けて、元気よく空に飛び立ってくれないだろうか。


そうすれば、このまま木の実を沢山拾って、何事もなかったことにして、意気揚々と城に帰れるのだ。

もちろん、女官長様の前に籠一杯の木の実を差し出して、今までのドジをちゃらにしてもらうのだ。


だから、どうしても、このドラゴンには復活して、どこか知らないけど、おうちに帰ってもらいたいのだ。


「ねえ、ドラゴンさん、大丈夫?」


アリサが声をかけながらドラゴンをゆすると(ドラゴンは大きすぎて、全く動かなかったが)、その願いが通じたのか、ドラゴンが薄目を開いて、アリサを見た。


「ああ、よかった。ドラゴンさん、気が付かれたのね?」


ドラゴンの目は真っ赤なルビーのような色をしていた。そういえば、鱗が赤紫色をしていたので、これはどういう種類のドラゴンなのだろうと、アリサは思った。


そんなアリサに向かって、ドラゴンは弱弱しく口を開ける。実は、ドラゴンは最後の力を振り絞って、アリサを威嚇していたのだが、気が動転していたアリサはそんなことには全く気付いていない。


大きく開いた口からは鋭い牙が見えていたが、アリサは別の方向に解釈したのである。


「ああ、そっか。喉が渇いているのね? ちょっと待って」


水を飲ませれば、少し元気になるかもしれない。アリサは、持っていた水筒の蓋をあけて、勢いよくドラゴンの口に水を注いだ。


きっと、お水を飲んで、気持ちを落ち着かせたら、空へと飛んで行くだろう。


アリサが、水を飲ませた瞬間、竜ははっきりと、いやあな顔をした。例えるなら、風邪を引いた子供にシロップの薬を飲ませた瞬間のようだ。甘いイチゴのシロップだと思ったら、なんとも言えず苦い味が口の中に残る。


そんな顔に似てるな、とアリサがぼんやり思い出していると、竜が赤い顔をさらに真っ赤にさせて苦しみだしたのだ。


「え、ええっ?どうして? ドラゴンさん、どうしたの?」


身をじたばたを捩じりながら、ドラゴンは苦しんでいたが、すぐにぱったりと動きが止まった。


アリサが慌てて竜に駆け寄ると、竜はすでに虫の息となっていた。


「やだ、ドラゴンさん、だ、大丈夫?」


ぐったりする竜は最後の力を振り絞って薄く目を開けて、アリサを見た。自分を倒した者として、ドラゴンははっきりと、目の前の人物を見つめた。


綺麗なルビーのような真っ赤な目に、心配そうに覗き込むアリサの顔が映る。


そして、その後、ドラゴンはすぐに息を引き取った。


そして、その次の瞬間、アリサに異変が訪れたのである。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ