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平行世界譚 ATONE VOICE  作者: 随想
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平行世界譚 ATONE VOICE 第三話「飽くなき戦いを誰が望むのか」

時間が経ってしまいましたが第三話を投稿します。


やはり難しいですね。努力あるのみです。

メガサムソックの中での作業が始まった。

外壁が大きく開かれてクロヤとヨリイの車がアームに捕まされて収容され、一時間もしないうちに不必要な部分が取り払われて新たなパーツの取り付け部への強化と適正化が進み、見る間に姿が変わっていく。

大きな違いはコントロールユニットが付けられるので邪魔になる助手席が取り外され、ロールケージが干渉する場所を処置し、エンジンとパワートレインがモーター駆動の新式に換装していく。


通常の運転には今までと同じに。外装装着後はロールケージに囲まれたシートに座って操縦する。

クロヤ、ヨリイには一つの懸念があった。

そう、座席を変えるロスが今後の影響にどれだけ干渉するかと思っていたが、実は新設座席だけですべて賄われて、今までの運転席は非常用の予備だと判った。後に、奇しくもその認識が逆転の一発を導く。


「なあ、ヨリイ。俺らに取っちゃあ・・・渡りに船、濡れ手に粟って感じだが」

「信じられるのか?信じていいのか?・・・検証できないのが痛いのは事実」

「けど進めるしかないよなぁ」

「・・・俺としてはな、こいつが悪魔の囁きでも乗ろうと考えている」

「意外でも無いけどなあ」

「そうか?ならいいな?」


暫しの間。無言で作業が進む。いや、時折に力を籠める息使いや短い溜息と工具の奏でる音や何かしくじったらしき舌打ちがする。


「クロヤ、懸念があるなら聞くよ。俺も口にしたい」

「ああ。うん・・・要するに何時までが猶予時間か。その後どうするか・・・だな」

「それに関しては向こうでやってくれているよ。それに今回の遭遇は狙っていたならこっちには対抗手段は無いさ。おまけに俺らにはメリットが出てくるが相手側の・・・有ったとしてもメリットがな・・・少ないんだよなぁ」

「そうだな。徳になるかどうかが判断材料ってのは正直笑えるが」

「そんなもんだろう、父たちの行動を見れば」

「違いない。人はどっちの世界の地球にも共通」


僅かの間。無音。少し作業の手が止まり互いに顔を見ずに苦笑する。


「先の疑問に戻る。ズィンム。時間はどの程度残っている」

『スケジュール的に試運転まではさせます。時間が無いのは変わりませんが、別行動が可能な状態にさせましょう』

「シートの撤去と取り付けの加工。二台とも終わって、取り付けとその調整。完了は一台、残すは調整だがそれで走行できるかどうかの段階だ。」

「変形と合体ってのはロマンだ。実際には予定外の車体で実行するんだ。簡単じゃあない」

『懸念は確かですが、これでもアダプトさせるかなりの情報量を持っています』

「このクルマも有るってか・・・」

「中身とガワを別に用意して現地調達かい。・・・ヨクワカラン・・・ってか知りたくないな」

『戦闘が市街の可能性が高い事。こちらで用意可能な中身が少なく、且つ運用上どうしても別行動の場合、現地調達が最適解と判断された為です。実戦に参加しない方達の考えですね』

「おぅ、辛辣」

「彼女の保身が最優先が本音かい」

『はい』

「・・・分かった。ホントにアンタ人工知能か?中の人が言ってるとかじゃないんだな」

『私の知的育成の担当者が変わり者の様ですので』

「あの人が信頼するんが判るかな・・・俺には・・・うん?」

視線を感じてクロヤはヨリイを見るとニヤついている。それを見てクロヤは首を傾げて眉を顰める。

それを見ながらヨリイは尋ねる。

「追跡してくる連中はこっちをどうやってトレースするのか可能なだけ教えてくれズィンム」

『こちらに実体化した時の時空間振動と重力振、強力な帯磁と複数回の進路変更。ついでにチャフのバラ撒きとデコイの設置と、目視での光学的観測で無いと確実に捕捉出来ません。人を使うにしても容易く出来ない事情が有りますし、他人を信用しない者達ですから測定器を最初に信頼します』

「手の込んだ隠蔽か・・・って事はカタツムリの集団を相手にするのか」

「ヨリイ、高高度・・・衛星軌道上や航空機はどうなんだ?」

「もっともな事だが、衛星軌道上からの監視はユリシーズ・システムの関係で無理だ。故障や誤作動が多発で役に立たない。同様に空からは入れない」

「より高い位置からなら可能だろ」

「確かに。けどそのあたりはこっち側の領域だ」

ニヤっというよりドヤっって感じの表情になるヨリイ。

「聞いてないぞ」

「切り札だからな。お前の方にもあるだろう」

「まあな」

誰にも聞き取れない様に舌打ちをしてみる。

「地上側では三つ首の干渉は少ない。いろんな勢力が思い思いの場所を縄張りにして小競り合いをしている。知ってるだろ」

「そこで行ったり来たりしているのが俺達だからな。しかしこれで直接干渉をするのか」

「そうなるな」


また、静寂が訪れる。

と、唐突にズィンムが問う

『話が変わるので申し訳ありませんが、パラレルワールドとしての平行世界の考察とは別に興味深い説を御存知でしょうか?』

「説?まあ、色々あるだろうけど・・・」

「クロヤ、俺が言ってた話を思い出してくれないか。もしかしたらだけど同じかも知れない」

ヨリイは顎に右手の親指を軽く当てて行ってくる、これは彼のクセで内心で期待を持った話題で有る場合にのみ出る。

「あぁ、空間は記憶媒体でその証明は時間が流れているって事とヒトやすべての万物は情報端末で双方向にアップロードとダウンロードを行っているってやつだろ?」

「よく憶えているね」

「まあ、しつこく語られていたんでね」

少し不機嫌に言う。

「迷惑だったかい?それはすまなかった」

まるで悪びれた感じでは無い様な言い方で返してくる。

「まあ、主にスピリチアルな面とか霊的な方向で盛り上がったからな。それなら、タイムスリップやパラドックスにも対応出来得るとは思ったよ」

「ああ、霊的な視覚や聴覚の現象は無意識領域の記憶からの連鎖反応で、感じている個人の受動的なイメージって事になる、そうなら事前やその場での情報操作の可能性が有りうる。

ならば、同一のイメージを感じる事も有れば個人個人で別個のイメージを受けるのも間違ってはいない」

「だから、人によって異なる天使や守護霊や精霊のイメージや立ち位置と解釈が説明可能な土俵に下りてくる。これはクロヤの意見だったね」

「そう。俺もそこらへんは好きな題材だしな。それなら神の起こしたもう奇跡ってのもバグか修正か・・・または必然かってところだ」

「ズィンム。個人的な趣味が丸出しで悪いけどこの事かい」

『はい、それです。恐らく平行世界は・・・、いえ、貴方達と私達の関係は位相が少し違っただけの同時出力なのではないでしょうか』

「だとすると。修正を行っていると言う話になるな」

「ヨリイ、それだとむしろ今がバグの状態で、正規ではないって事になる」

「その通り。非常に危ういが、問題はその情報の入出力に我々そのものが関与しているって事だ」

「マジか。まあ、その方が良いのかもな?」

『電脳世界ではないこの空間は、だからこそ可能性の塊なのでしょう。

別個の世界が寄り集まって世界が作られていて、今の世界はそれが解れたか緩くなったと私は想像しています』

「ああそうか。懸念しているのは消滅か大幅な改変での全てが否定される事かな」

『それも有りますが、問題は分断の発生が高い可能性です。我々はその時に受ける異変が何であるのか分からない事です』

「いつも思うが中の人の考えで無ければ、人工知能が計算して出したって事だよな。いや疑似人格思考に近いのか」

「大丈夫さ、その時はクロヤが責任を取るよ」

『それは良い事です』

「何の事だよ?」

さすがに長い付き合い。僅かな想いもヨリイには感じられ、ズィンムも主人から何かを予想しているのだろう。・・・元は同じ世界の人なのだ、手を取り合う事も出来るだろう。

「ズィンム、君は元の世界に帰還するのが今後の為になると考えるかい?」

『私の任務に帰還か情報の伝達が有ります。が、容易では無いでしょう』

「そうだな」「ああ」


その頃、ステアは個室と化したデータルームで一人B・O・S対策に追われていた。

何しろ作戦行動の全てが狂ってしまったのだから。

「勝ち目は奇襲のみ。三本首が何故か位置を変えない事が突破口・・・まあ理由はマテリアルなんだろうけど。現地の協力者が得られたのは行幸かな」


独り言に気が付かず漏れ出ていた。


「シュミレーションだと直上から二人がテーブルに。足止めに皆が。私の方はどれだけ温存できるか・・・

三本首の戦力はアサルト・ウォーカー。情報通りなら稼動が二機で部品状態一機分。

そのうち内燃機関の機体は使い潰していてスクラップに近い。

三つ首から有線で電力供給するのが出てくる、問題は供給が経たれにくい事と火力が強力な事、それもショートレンジからロングレンジまで数基のエネルギー放射型の火器を持つ。

恐らく地上まで出てこれない・・・ステージの上での砲台役。限られた範囲だけど此方も同じ土俵に立たないとダメ」

モニターにはB・O・Sとアサルト・ウォーカーのスペックが表示されている。

「連絡を取り合っての連携が決め手。奇襲と更に奇襲するのが勝ち筋で、・・・内部突入は危険極まりないから作戦としては組み込み難いし、どうしても初手が成功しないと・・・次が無い」


視線を移す。

ディスプレイに映るハーケン・1。

やがてベーターセクトに入り、色がアラートイエローに変わる。

索敵を兼ねる計測プローブが射出されればアラートレッドに変化する。

「ガンマーからベーターまで近づき切ったら、位置を割り出すのにプローブが使われている筈。

・・・ジャミング対策が以前のままのバージョンなら・・・残存のパワーパックを多く消費せずに行けるかな」


目をつむり手を組み指を絡ませて額に当てる。

まるで祈る様に。



そのハーケン・1では機長のドラーフゥに操縦士のスピリッフィと通信士のファーストボールが相変わらず険悪だった。

「ちゃんと見ていたのか?太陽が沈むぞ」

「こっちのデータは伝えた。コース変更はそっちの判断だろ。俺は知らん」

「無駄口はいい、プローブを広範囲設定で発射!急げ!」

「ちっ」

「分かった。リーダーはあんただ。発見次第地上班に引き継ぐんだろ」

「ふん!現地調達したストライク(素個人用装備の装甲ホバークラフト)の部隊をけしかける作戦なんぞあてにできるか」

「この機体自体には火器を搭載されてはいない」

「替わりに障害物排除用の炸薬が込められた小型の飛翔体を二体持っている!充分だ」

ドラーフゥとファーストボールの言い合いにスピリッフィが呟く。

「見付けることが目的なのだが、なまじ使える物が有ると気が経った人間は使おうとする、これで発見できればだがな」

短期過ぎるうえ、功を焦っている機長に聞かれると余分な労力が使われるのを避けたのだ。


モニターにプローブの設定が表示され、続いて分離シークエンスが表示される。

伸長した主翼の上部にある支持部に有る流線形をしたフェンダーバッファが開き、角ばったプローブが現れる。

片側に各二機、左右で四機が広範囲設定により全て起動した。

アームによって後方に延ばされ、切り離されて機体の両サイドに有る主翼を広げる。

丁度、鉛筆の様な断面をしたプローブの外側壁面が翼で、空気抵抗を考慮した展開で二段階に軸回転していく。

その形はトンボの姿が近い。

機体下部が探査端末の収容ユニットで、飛行しながら斜め後方に延ばす。

ユニットは球状な為、飛びながら産卵するかのようだ、球体には三か所にプロペラを持ち、上下はテールローターと同機能(本体が回らない様にする為の物)、中央水平にメインローターがツインで装備されるがブレードはかなり特殊な素材と構造によって複雑な変形が可能で飛翔する。

ホバリングを行えるハチドリの様に羽の形を柔軟に変化でき、通常は球体の表面を覆う形で収納される。

元来、気体惑星の調査観測用に開発されたドローンがベースなので展開すると観測装置が顕わになる。

これらには特別な機能が搭載されており動態軌跡を追える。一種の時間遡行による追尾が可能なのだ。

プローブと共に大凡の仮想位置へとプログラムに従って離れていき扇型にグリッド式の探査を行い範囲を狭めて侵入者を探す。


探索が開始したのはステラ達から見てベーターセクトの始まりだった。

最短コースならば猶予は少ないが、それでも夜明けには確実に見つかるであろう距離間だった。

その事が奇襲作戦の開始となる。


ステラは夜間での撹乱の為の陽動と試運転を強行する事を決意する。

そこに連絡が入る。

『マスター、換装が終了。調整は実際に使ってみて細部を決める必要が有ります』

「判ったわ、御苦労様。でもごめんなさい。相手がかなり近づいてきているので試運転に出られますか?」

『少しお待ちください』

「少しなら余裕が有るけど・・・」

『一時間後に出られるようです』

「任せました。ありがとう」

ステラは目を閉じて声に出す、わずかな不安を。

「どの程度、ハーケンの機能をこちらで乗っ取れるか。その前にやり過ごせるのか・・・」

そこで呟く。

「ああそうだ。トランスヴィークルの愛称を決めて貰わないと」

妙なステラの拘りだった。

『マスター、その名称ですがスクナ(SUQNA)とヨリイ殿が名付けました、異形の鬼神である両面宿儺から着想を得たそうです。とてもふさわしく思います』

「そう、名に負けないようにしないとね」

『Selective・Utility・Quietus・Nimble・Attackmachineの略だそうです』

「・・・、選択式強撃機って所かしら。プッ・・・趣味が出てるわね。いいコンビね」

『すぐに理解なさるお嬢様にも脱帽です』

「はいはい、判ってます。皮肉もいいけどハーケンにもスクナにも供給不足で不発にしないでね」

『かなりギリギリですが、3回が確実で4回が辛うじてと見積もっています。スクナも試行分はセーブされていますので』

「その分をハーケンに回して、確実にやりましょう」

『はい、お嬢様』

「お嬢様は今はやめて」

『失礼しましたマスター』

「あとは。試作の切り札が使えるかどうかかな。なんかそんなのばっかりね。でもケリが着いてくれればいいんだけど」

実際に出陣したのは一時間半後であったが発見されずに格納庫から出て、陽動として距離を空けるべく街道に戻りわざと最寄りの街へと疾走していく。

街といっても廃墟に近く、人口が減ってしまった影響を被ったこの世界ならではのありふれた場所である。


「ヨリイ、感度は?」

「名前を出すなと言っただろう。感度良好だ、SGステーションからSG1」

「すまん。忘れていたSG1からステーション」

「忘れて次いでだろうから伝えて置く。作戦は、ストライクスをトランスビークルでおびき寄せ撃破する。

この時、転移装置を稼働しSUQNAの兵装を用いる」

「了解。初陣だなぁ、感慨深い・・・」

「下手な事をしないか心配で胃が痛いよ」

「安心しろ。撃破だ撃破」

「・・・もういい・・・ったく」

しかし言葉とは逆に力が抜ける実感。

「実戦だとやはり強いな。クロヤ。悪いが頼らせてもらう」

「聞こえていたぞ。名前を出すなよっ」

「すまん!」

通信を終了し、我知らず力んでいた緊張を抜く。


ハーケンとの初戦はステラとズィンムによれば反旗を翻す格好の狼煙となるが。


一方、ストライクスの一団はハーケンからの要請を受け、警官上がりから自警団・一般、果てはチンピラまがいの者までの混成部隊は意気揚々としていた。

しかし、その光景は不可思議と言わざるを得ない。何故なら、彼らはスーツや学生服、警備員と言った制服を着こんでいた。キッチリと。

理由はその服に有る。

「それでは準備を整えろ!全員!弌式に!!外に出たら弐式へ!後は移動だ!遅れんなぁ!」

おおっと一斉に声を上げる。そして、服は変形を開始する。

MMM(Micro・Machine・Material)技術による艤装戦闘服だ、二つの地球での共同開発と言っても良いが実際には侵略用制圧兵器である。

モニターに表示される指示に従うか半自動で行動できる優れモノだが・・・。

実質、搭乗者は必要だが意思は不要になり、更に人質になるエグイ代物だ。

知らされない者は提示された大きい収入も魅力的だが、それよりストライクスを実践で使える良い機会なので意気揚々としていた。

この時点での金銭は別世界から齎した技術や物資による恩恵でもある。

一同は広場に出てくる、その場に響くのは金属音だ。そして。

「弐式!展開!」

背中から追加装備の腕が対で生えて両腕と接合。下半身が肥大化し車椅子に装甲が付いた様な状態になる。これはホバークラフトに近い。地上走行と空中機動を行えるが時間制限が有るのと割と遅いのだが、対人用としては脅威である。


元は同一であった世界が二分された事で判明された【僅かな違い】による相互干渉。

後日、語られるのは。 これこそが目的では無かったのか。 ・・・と。果たして真実は不明のまま。


ストライクスの準備が整い、ハーケンの捜索網が架装対象を検知するのはほぼ同時。


そのハーケンでは。

「大まかな位置を特定、絞り込みを実行開始」

「絞り込みを終えたら一発発射する。正確にな」

「使える回数を有効にするべきかと思います」

「なら、無駄にさせたらお前のせいか」

「・・・」

相変わらず険悪である。


ハーケンの戦闘準備を察知し、ステアとズィンムはユリシーズ起動と並行し、MTMの再稼働準備、ハーケンの強制転移に必要な工程を整えていた。

『やはり、MTMの両手足は予備の地上用装備と交換するしか有りませんね、現状一度くらいは動作できますが』

「予定のままね。大気圏内用のフライトモジュールは無事だったのは良かったわ」

『ですが、クロヤ殿との別行動は避けたい処でしたね』

「?。トランスビークルは仕方ないでしょう・・・って、え?・・・もう・・・とにかく今は作戦よ」

『はい。お嬢様』

少し火照った頬を手でピタピタと冷ますステラ。

ステラが生れる以前から様々な存在状態で接して来た上に人の機敏に長けたズィンムには叶わないなぁと思いながら。


ハーケンは遂に有効射程内に入り攻撃を行う。

「高位エネルギー存在反応を確認」

「範囲が大きく特定に至っていません、ジャミングが高いです」

「座標を確認し、こちらに位置情報を送れ。俺が判断し、発射する」

「!!、向こうにこちらの位置を教えるつもりですか!?」

「指揮は自分である!」

苦々しく思いながら了承し、座標を送る。間髪入れずニヤケ顔で高々に宣言する。

「発射!」


ステラの周囲から駆動音とアラートが大きく轟く。

『MTM、再起動。起立します。メガ・サムソック同率再起動。補助スラスター作動。・・・高熱原体確認、接近中。推定ハーケンの排除用飛翔体』

「少し待って。初転送はスクナを優先したい」

『了解しました。防壁は効果が薄いですよ』

「構わない。それに無駄玉を打ってくる」

『お父上に似てきましたね』

「うん、私の自慢」

『接近中の飛翔体、誘導が行われていますが甘いですね・・・外れます』

「注意して。多分それが狙いだから」

『有視界確認ですか』

「そう!来たわ!」


ステラ達の上を通過してから急に左に旋回し失速したらしく落下して爆発する。


「ち!外れたが画像検索は有効だろっ・・・何か見えないか・・・」

「光学迷彩もパッシブ・アクティブ共に掛かっています。サイト範囲を逸脱していると想定」

「プローブも弾に使う近い奴をサイト内にぶち込め!」

「・・・座標の指示かコントロールを渡します」

「自分で考えろや!できんだろ!」

「了解。ランダムで選出地。地表を飛行。索敵モードで実行」

「出来るじゃあねえか。さっさとやって置けよな」

「目標を叩き潰せ!」

「おわ!でかい声を急に出すな」

「すみません。つい、気合を入れました」

「ああ・・・そ、そうか」


『お嬢様、プローブが複数接近してきます。恐らく・・・』

「ええ、当てても構わないんでしょうね。何を考えているんだか、タダじゃないのに」

『最初の一機目は掠めます。恐らく位置が割れます』

「ズィンム。ハーケンの転移は可能かしら?」

『システムの乗っ取りと強制起動を同時に行う距離にはまだ遠いです』

「ふ~~ん。じゃあ、来てもらうかしらね」

『・・・スクナの方も会敵した様です』

「あら、タイミングが合うわね」

『いえ、良くない方だと思いますが』


クロヤ達もストライクスと遭遇、まだ残っていた高架の高速道路でカーチェイスとなっていた。

「しつこい!」

「あちらさんもお仕事だろ。それより。クロヤ、初装備だ!」

「おお!やったるぜ!」

「向こうでも開戦している様子ですが、OKサインが消えないので行きましょう」

「え?なんだって」

「合図を出してクロヤ!」

「よし!・・・スクナ・フォームアップ!」

「これで気が済んだでしょう・・・ふぅ」ため息も仕方あるまい、苦労人のヨリイであった。


ステラ達が機を窺っている直前をプローブが掠めていく。

『トランスビークルを優先しますか』

「ええ、そうして!」

『了解。ハンガー開放、トランスビークル転送開始』

メガ・サムソックの上部と機体左右のマルチバレルから長いファランクスが突出。唸りを上げて輝く!

『ふむ。良い機会かも知れません、ハーケンの撹乱に乗じて乗っ取りましょう』

「できる事はお願いね」

『ええ、お嬢様も』


地上での時空震発生はB・O・Sでも観測された。が、距離が有るのとハーケンが出向いた位置が重なっていた為に分析が遅れた。そしてそれは致命的だった。


転送による空間の歪みはハーケンの機能喪失に直結。プローブは制禦を失い、ステラ達の位置の把握を乱された。


高速道路を走行しながらの転送と装着。実はリスクが大きいのだが。

対策としては自動追尾と継続型実体化技術により辛うじて可能としていた。


並走する二台。少しづつ近づくストライクス、30秒もあれば追いつくだろう距離。

発光現象と時空震。

直後、半実体化したスクナの上半身と下半身が車体の上に出現し、位置を変えずに追従してくる。

やがて接近し重なると車体が見えなくなり、スクナが色濃くなりつつ宙に浮かんで実体化が完了する。

同時にバーニアが展開、スラスターも稼働してタイヤによる移動から低空飛行へと移行した。

脚部のスラスター展開に伴い路面を先端部が削り、ストライクスに転がっていくがホバー移動の為高度を上げて回避する。

高架はやがて大きくカーブするが、スクナはそのまま直進する。

高さの低い壁面を一部破壊して、空中へと飛び出す!


「スクナ・コンプリートを開始!ヨリイ、ナビゲーション頼むぜ!」

「了解。向きはこっちに任せてくれ!」

「おお!!」


上半身の胸部の上下に可変スラスター。下半身の腰の上下に可変スラスターと脚部後端部にもスラスターを持ち、腹部で接続を果たす構造のスクナ。

高架道路から飛び出し、上昇しつつドッキングを果たす。

その後ろには慌てて推力を昇らせるストライクス群。

接続を果たし、インカーネートモードに変移を始める。縮めている脚部が伸びて膝関節部が機能可能になり、折りたためられている腕部が二段で展開する。

先ず、下に向けて・・・いやこの場合は進行方向に向けて機体左右の腕が回転する。次に肘の二重関節が広がり、手首が少し伸びる。何より特徴的な形状の手だが小指側がスライドして見慣れた手になる。

顔面のカバーが左右に広がり、人型らしさを得る。


追尾中のストライクスからは驚愕と適用できる火器が無い事を悔しがる声が上がる。

対人様に特化している為、爆発を伴う規模の兵装が設定されていないのだ。

交戦を回避する事もできたが、彼らに選択肢は既になかった。


一方スクナではナビゲーションを一手に引き受けるヨリイと、思考波感応型フィードバックコントロールが起動させたクロヤが最終チェックを行っていた。

「おお!VRと同じ風景だな」

「クロヤ。ちゃんと確認をしてくれ、火器管制が出来ないと死ぬぞ」

「分かっているって。しかしこんな空中じゃあ無駄弾を撃っちまう」

「前に有るビルを利用しよう」

「なるほど。切り替えのタイミングは任せた」

「仕方ないな。ちゃんと当ててくれよ」

「任せろ。少し時間が有るな・・・調整しとくか」

「間に合わせろよ」


クロヤは全天モニターに浮いているかの様な状態でいるが、スクナのコクピット内でVRダイブと同様の環境にあった。

現時点でのスクナの火器は両腕の放出系と脚部の物理系のみ。

補給も変更も無いのでかなり厳しいのだが。

更に時間制限がある。無限に飛び続ける事はできないのだから。

またも長くなりました、読了感謝です。

無双する予定でしたが・・・、申し訳ございません。


次回完結「現状からの脱出」

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