季節の小詩
春 (第一作目をもとに)
うららかな
陽光そそぐ並木道
緑に包まれ寝入る蕾を
春風、ためらいもなく揺り起こす
戯れ混じりのさえずりに
木漏れ日、思わず波打つ
魅惑がいちめんに漂い
微笑みが宙を舞う
芝生で憩うひとときにも
遠国に旅立つ友にも
親愛の音が降りかかる
冬 (1970年頃 ”ダダ”だ ”デカダンス”だと)
やむおえない世界の
やむおえない日々に
到底やむおえない獣たちが
あたりいちめん這いつくばり
まだ不十分だとばかり
這いつくばり
押し寄せる騒ぎの煩いに
胡散臭いと鼻を擦りつけ
別にあてなく擦りつけ
荒びゆく世界のなんともなさに
荒びゆく日々のなんともなさに
ただ獣たちがなんともなく
秋 (齢重ねて)
トンネルを抜けると秋晴れの京都市内
いつもの見慣れた景色が視界に入る
右前方の丘に多くの人々が集っていた
立っていたり腰掛けていたり
腕を組んだ者手をつないだ男女
距離があり定かでないが年配者が多い
若者や子供たち大人に抱かれた赤ちゃんもいるようだが
皆着ている服はバラバラで車道側を眺めている
私にはその方向に何があるのかわかっているので
彼らから目を離さずまっすぐ近づいた
空気の澄んだ日差しのせいもあって
その表情はいずれも喜びが垣間見られる
心なしか気持ちが和んだ
リーダーはいるのかお互い助け合っているのか
弱い者も仲間入りしているのだろうか
私の顔見知りもいるに違いない
おっと両親もここだったな
もう随分ご無沙汰で水臭いと思われているだろう
もしかしたら催促なのかもしれない
さっそく次ぎの休日に来よう
そのまま通り過ぎると
いつもの見慣れた景色が視界をさえぎる
秋晴れの緑映える山々
夏 (そして今)
無性に登りたくなった
心にアルバム携えて
未知の勾配に挑む
待ち受けるものは何?
無性に聴きたくなった
コンサートホールを後にする
熱気、感動引き連れて
音符が頭を駆け巡る
無性にくぐりたくなった
扉の前に二人の自分がいる
ささやきには動じないぞ
主よ、お許しを
無性に触れたくなった
分身が走り跳び反転する
力のこもった真剣勝負
「もう寝る時間ですよ!」
無性に話したくなった
喜び悲しみ、そして後悔
とてもありふれた
かけがえのない人生を