【9】
…取り合えず、30分ここに居れば済む。
する事も無いので、使ったティーカップを洗う。
「――母さん、何か、飲むも…の――おわぁ!!」
と、2階から降りてきた遼太郎と鉢合わせ。
失礼ね!台所に居る私を見て「おわぁ!!」は無いでしょう!!
まぁ、確かに自分の家に他人が居たりなんかしたら、驚くのは分かるけど…。
「――これ、プリント。それから、傘は玄関に」
「あ、ああ…。でも、何してるの?…」
「足留め喰らってるの!」
「え?」
「あと10分もすれば、おばさん帰ってくると思うから」
「?!――芹菜?」
おばさんに留守番を頼まれてたけど、遼太郎が起きてきたんなら、もう必要ない。
鞄を片手に玄関に向かう。
「ああ、それから、おばさんが少し食べて薬飲みなさい!って。あと、ご馳走さまって伝えて……」
「………」
――!
腕を捕まれた。
目が合う。捕まれた腕が痛い。そんなに力込めて捕まれたら痛いって!!
「イ、痛いっ!」
「え?わ、悪い!!――って、怪我まだ治ってないんじゃ…!」
はぁ?怪我?とっくに抜糸も済んで治ってるわー!!
「ち、違う!!力入れすぎ!!手を放して!!」
「ご、ごめん…あ、あの……お、おれ……――」
え?何で、崩れていくの?遼太郎の身体が熱い。
――す、すっごい熱!
「こ、こんな所で倒れられても…。りょ、遼太郎!!しっかりしてよっ!!」
「………」
ど、どうすれば、良いの?
いくら遼太郎でも病人を置きざりなんて出来ない!
担ぐ?私が?2階の部屋まで?
「遼太郎、つ、掴まって、わ、わ、私に!」
「……」
全く、世話なんて掛けさせないでよ!!
階段さえ上りきれれば、なんとか…。私は遼太郎を肩に担ぎ、遼太郎自身も手摺を持ってゆっくりと上っていく。
「ご、ごめん、芹菜…」
遼太郎は謝ってくる。
「謝らないで」
「ご、めん…」
ま、また…。何度も謝らないでよ!
「……ご、め…。俺が…好きに、…なったばっかり、に…――」
――?
意識が朦朧としてるのかな?
小さな声でボソボソと言われても聞こえない。
第一、熱でウンウン言ってる人の話なんてまともに聞く気なんて無い。
全く、遼太郎のせいで、こんな重労働するとは思わなかったわよ!!