【10】
振り回される毎日。
このままだと、本当に遼太郎と彼氏彼女という目で見られてしまう。
と言うか、すでにそういう目で見てる人がほとんど…。
何とか、この状況をいち早く打破しなくては!!
今日こそは!と、気合を入れて学校へ行く!
「おはよう!芹菜!」
「…げ……」
――って、何て朝から遼太郎が家の前に居るのよ〜〜っ!!
「朝も会いたいなっと思って…」
「は?」
朝もって、学校に行けば四六時中ベッタリしてくるくせに〜〜っ!!
無視して早足で学校に向かうけど、悔しいっ!
足の長さが違いすぎる!!余裕で追い付いて来るのがむかつく!
ピタっとマンツーマンでマークされている気分だ!!
「ところでさぁ、今度の土曜日、どっか行かない?」
「…い、行かないっ!」
「どうして?遊園地とか?」
「…行かないっ!」
「実は、無料入場券があってさ」
「…行かないって!」
「親が芹菜と行って来いって」
「…だから〜」
「何か、都合でも悪い?」
「…そういう事じゃなくて」
「じゃあ、10時に駅前、って事で!」
「……ちょっと!」
と言い掛けて、私は言葉に詰まってしまう。
朝から、嬉しそうな笑顔で私を見ないでよ!!
――って言うか、人の!話を!聞かんかーいっ!
何度も行かないって言ってるのに、一度、耳鼻科に行く事をお勧めするよ!
「聞いたよ〜!芹菜!遼太郎と遊園地デートだって〜」
「?!…祥子ちゃん?」
ど、どうして、祥子ちゃんが知ってるの?
私まだ誰にも話なんてしてない…、第一誰にも話すつもりなんて無いのに!
「だって、ほら…」
と、祥子ちゃんがすっと指差す。
!!!
あのバカ!何ベラベラ喋ってんのよ!!
遼太郎が「遊園地に行くんだ」と大勢の前で話している。
「あの、アトラクションは面白いから乗りなよ」
「お昼はここがお勧め」
「やっぱり、観覧車は夕焼けの中が最高」
その場に居るクラスメートがアドバイスをくれている。
ふ〜ん、やっぱり、観覧車は夕方か…、――って、そうじゃなくて!!
あいつら!余計な事を遼太郎に吹き込むんじゃない!!
「私も、一緒について行ってあげようか?」
「い、今、なんと?祥子ちゃん?」
「ま、今回の告白大失敗には、私も一枚噛んでる訳だしさ」
「…祥子ちゃ〜ん!」
「そういう事で、ダブルデートにしよう!」
「え?ダブルデート?」
イシシシっと祥子ちゃんは笑う。
4人目のターゲットはアレよ!と――。
よ、4人目…?
祥子ちゃんの目は獲物を狙う肉食動物と同じ野生的な目になっている。
ロックオンされた人物は――眼鏡を掛けた、さらっとした黒髪の男の子。
え?えーーっ?!あ、あれは、伊東慧くん!!
「さ、祥子ちゃん?!本気?」
「勿論!デート中は、私が遼太郎を引き受けるから、あんたは伊東慧を――ね?」
ね?って、本気なの?祥子ちゃん…。
「祥子ちゃ〜ん!!大好き〜〜!!」
「これが、最後のチャンスよ!芹菜!!」
最後のチャンス…。
弱気になっちゃダメだ!
ちゃんと自分の気持ちを伝えよう。