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水瀬と新田②
「ど、どうですか?」
水瀬は自分の髪から手を放す。
後頭部から一束の髪が垂れる。
服装も学校の制服だ。
つまり今の水瀬は女の子だった。
「うん。可愛いよ。男の子には見えない」
「ありがとうございます」
柔らかく笑う良に水瀬も少し恥ずかしげに笑った。
二人は水瀬の部屋に居る。
良の希望で水瀬は着替えたのだ。
「じゃあ行こっか」
「……はい」
緊張した表情の水瀬。
良は強張ってしまった手を優しく取る。
一階に降りて、そしてリビングへ。
「親父、良いか?」
リビングで待っていたのは水瀬の母と良の父。
今日は良の父に伝えたいことがあったのだ。
それは水瀬の障害のこと。
そして自分は女の子として生きたいということを。
これが水瀬の勇気を出した第一歩だった。




