一人の水瀬
制服を脱いでハンガーに掛け、部屋着にフード付きのパーカーとスウェットを選ぶ。
着替え終わると脱いだブラウスと靴下を持って一階の洗濯機に入れて溜まっている洗濯物と一緒に洗濯を開始する。
母が仕事で居ない水瀬には身体に染み付いた一連の作業。
昼食を摂ろうとして弁当を二階の自室の鞄の中に置き忘れたことに気づき再び二階へ。
降りて来たらそのまま台所の電子レンジに入れて時間まで待つ。
温まった弁当と冷蔵庫で冷えていたパックのお茶をコップに注いで水瀬の昼食は完成した。
「いただきます」
昼のバラエティー番組を流しながら水瀬は食事を始める。
昼なので少し大きめにテレビの音量を設定しているが、水瀬にはとても寂しく感じた。
一人で昼食を摂るのは久し振りかもしれない。
平日は学校の皆が居たし、休日は母が休みで昼食を一緒に摂っていた。
テレビがいくら面白くても話す相手が居ないのは孤独だった。
昼食はすぐに食べ終わり、水瀬はソファーに横になった。
手を伸ばすと棚に手が届き、読んでいない漫画を一冊取り出す。
テレビと違って漫画はその世界に没頭できる。
音などないはずなのにキャラクターの台詞や効果音が頭の中で再生され始める。
漫画は生きている。
「ただいま~」
その声に水瀬は現実に引き戻された。
「あれ? 今何時?」
気付けば時計は六時過ぎを示していてソファーには十冊以上の漫画が積み重なっていた。
どうやらそうとう集中して読んでいたらしい。
「おかえりなさーい!」
水瀬は漫画を棚に戻し、母を迎える。
「優、そのまま出掛けるから着替えてきて」
そういえばそうだったと水瀬は自室に行って下だけジーンズに着替えた。
ファミレスだから上はパーカーのままでも良いだろうという考えだった。
「お待たせ」
水瀬はパーカーのポッケにスマホと財布だけを入れると先に外に出ていた母に合流する。
「近くのファミレスだよね。外食なんて一年ぶりぐらい?」
「そうね。優の入学祝で行ったきりだったかしら」
ファミレスまでの道を母と他愛もない会話で潰す。
するとあっという間に着いてしまった。
「いらっしゃいませ~。何名様ですか?」
中に入るとファミレスの店員が常套句を言う。
「二めーー」
「先に待ち合わせている人が居るんですが」
水瀬の言葉を母が遮った。
水瀬は困惑する。
誰かと待ち合わせなど聞いていなかった。
「お連れ様ですね。こちらへどうぞ」
だが店員は分かったようで席に案内される。
「ごゆっくりどうぞ」
案内されたテーブル席に座っていたのはーー
「初めまして。君が水瀬 優さんだね?」
見知らぬ男性だった。




