悪魔転生 ~悪魔と取引をして異世界に転生しました~
俺の名は山田武司どこにでもいる男子高校生だ。なぜ俺がこんな風に思っているかと言うと、それは、日々の日常に飽きているからだ。
誰もが思春期と呼ばれる時期に入ると必ず思うはずだ。
【つまらない】って。
そんな俺はいつも通り朝起きて朝食をとり、学校に行き昼食を食べ、部活をして、今日も家に帰り宿題をやってから晩飯を食べて風呂に入り寝る...そんな日々を送ると思っていた。
学校帰りに怪しげな出店を見つけなければ...
「やぁ兄さん何かにご用で?」
黒いフードをかぶって明らかに怪しい格好をした人物は、大通りからこちらを見ている少年に声をかけた。
「いや、見るからに怪しい店だったので少し気になってね...」
黒いフードをかぶった人物はニヤリと笑い手招きをする。
「こうして声をかけたのも何かの縁、ここは一つ店を見ていかないか?」
普通の人ならこんな怪しい出店に見向きも、むしろ立ち寄ろうとも思わないだろうが、なんせ山田武司は日々の変わらない日常に飽きていた。だから普通の人が立ち寄らない怪しい店に立ち寄った。
「いらっしゃい兄さん、日々の変わらない日常に飽きているんじゃないかい?」
「なぜ、そう思う?」
武司はフードをかぶった人物を力強く睨むとフードをかぶった人物は怪しく笑う。
「ヒッヒッヒッ、まぁそう警戒しなさんな兄さん、ここは一つ取引と行こうじゃないか?、兄さんの魂を掛けて...」
「断る!!、少しでも退屈しのぎになると思った俺がバカだったよ」
武司は踵を返して店から立ち去ろうとするが、振り返るそこはいつもの大通りではなく不気味な空間が広がる亜空間となってい
た。
「嘘だろ?!」
「いや、現実だよヒッヒッヒ...」
驚いた顔で振り返る武司にフードをかぶった人物は笑うとかぶっていたフードを取り正体を露にした。
「私は悪魔、兄さんとぜひ取引がしたい」
黒髪で赤眼の悪魔は獲物を見るような目で武司に言う。
「ほう...じゃ、俺の魂が欲しいって事か?」
つまらない日常に飽きていた武司はむしろ悪魔を挑発するように言い返して不適な笑みを浮かべる。
「ヒッヒッヒッ、面白い、実に面白いぞ兄さん。今までこの私にここまで挑発してきた人間は兄さんが始めてだよ」
悪魔は今まで取引をしてきたどの人間にも当てはまらない武司の態度に好感を覚えて笑った。
「ヒッヒッヒ...じゃ、取引を始めようか...なぁ~にそんなに難しい事じゃない、これから兄さんの願いを三つだけ叶えてやる変わりに三つ目の願いが叶った瞬間に兄さんの魂を貰う。たったそれだけの事だよ、ただし!!、以下の条件がある」
一つ、今から二十四時間以内に三つの願いを言わなければ取引は終了したとし兄さんの魂を貰う。
二つ、永遠や無限などの制限の無い願いは出来ない。※一日以内なら可能
三つ、取引の根本に関わる、願いを増やせ、取引を無かった事にしろ、自分を助けろ、見逃せ、入れ替われ、魂を取られない方法を教えろ、ルールを変えろ、っと言うような願いは出来ない。
四つ、私自身を殺す願いは出来ない。
五つ、以上の願い以外なら全てを必ず悪魔は叶えなければならない。
「以上がルールだ」
悪魔は武司に不適な笑みを浮かべて見据える。
「そうか、なら俺の勝ちだな」
武司は勝利を確信して笑みがこぼれる。
「ほう、やっぱり私が見込んだ通り面白い人間だな兄さん、さあ願いを言うがいい」
「じゃあ、一つ目の願いは俺に時空間を、操作する力をくれ」
「ヒッヒッヒ、例え時間を止めても、異空間に逃げても取引からは逃げられんぞ」
悪魔は笑いなが右手をかざして、武司に力を与える。
「二つ目の願いは取引後、俺に直接的にも間接的にも一切関わらない事」
「約束しよう」
悪魔は二つ目の願いを聞いて悪寒をおぼえた。
「(こいつ、始めから自分の魂を諦めているのか?!)」
「三つ目の願いは取引後の俺魂を異世界に転生させる事だ!!」
三つ目の願いを言い終わったとたんに、武司は死んだ。そして武司の魂は悪魔の手に渡ったが三つ目の願いにより悪魔は武司の魂を異世界に転生させなければならず、悪魔は適当な空間を開けて武司の魂を投げ込んだ。
「チクショオオオオ!!」
悪魔は怒りのあまり自分の出店を粉砕する。
「まんまとやられたな、普通の人間じゃ無いとは思っていたが。まさか、始めから自分の魂が救えない事を見越して、私の手に魂が渡った後に逃れるような願いをするとは...ヒッヒッヒッ私の負けだなこの取引は...」
悪魔は何百年ぶりの敗北に思わず口元が緩む。
「こんな気持ちは久しぶりだな、まだ一つ目の条件が無かったときに、三つ目の願いを言わない事で私の手から逃れた人間以来の敗北だな」
悪魔は拳を力強く握ると自身の住む魔界へ繋ぐ空間を開く。
「私もまだまだ未熟と言うことか、ヒッヒッヒ...またいつか会えるといいな人間、次は私が勝つ」
悪魔の入った空間は徐々に閉じていき、悪魔のいなくなった空間は崩壊して元の大通りが姿を表し、そこにはいつも通りの日常の風景が流れていた、一人の高校生がいない事を除いて...
「ここは?」
武司が目覚めると自身は白く柔らかい布に包まれて、隣には大きくて金色の髪が美しい女性が寝ている。
武司は布か自身の手を頑張って出して見ると薄紅色の可愛い赤ちゃんの手が現れ、上手く指を動かせない手をしばらく見つめた後、耐え難い眠気に襲われて眠りについた。
しばらくたち、再び目を覚ました武司は自分の母親と見られる青い瞳の金髪美女に抱かれていた。
「あら、カール起こしちゃた?」
金髪美女は豪華な玄関にたどり着くと近くのソファーに腰を下ろして武司いや、カールの頭を優しくなでながら子守り歌を歌った。金髪美女の美しい声はカール「※今後武司はカールとなります」が今まで聞いたどの歌手よりも美しく、カールは再び眠りについた瞬間、玄関が開き青い瞳の金髪イケメンが現れた。
「ただいまテレシア!!、ごめね大変なとき私は出張で側に要られなくて!!」
金髪イケメンはテレシアの抱く赤ちゃんに触れようと手を伸ばすがテレシアに手を叩かれ引っ込める。
「ケイン!!、そんな汚い手でカールに触れないでください!!」
ケインは自身の泥泥な姿に苦笑すると、外にある風呂場に行って汚れを落としてから再びテレシアの元に向かいカールを抱っこする。
「うぎゃぁぁぁぁぁああああ!!(痛ってえなぁ、俺は赤ちゃんだぞもっと優しくさわれやボケェ!!)」
突然泣き出したカールに慌てるケインからテレシアはカールを奪い取り優しい手つきであやす。
「ほら、いい子だから泣かないでカール」
「うぎゃぁぁぁ...(そうだ、これだよこれ!!、テメェ俺の父親だろうが初めての抱っこで息子を殺す気かドアホ!!)」
泣き収まったカールに一安心したテレシアはケインをキリッと睨むと有無を言わせない声で説教した。
「この子は、まだ生まれて間もない赤ちゃんなんですよ!!、もっと優しく抱っこしてくださいじゃないと将来「パパイヤ!!」ってカールに言われますよ!!」
ケインは力なく項垂れるとまるで叱られた子犬のようにトボトボ歩いては、振り返りまたトボトボ歩いては振り返りを繰り返して自室へ向かった。
「ごめんねカール、痛かったでしょ、でもパパはとぉ~ってもすごい人で、優しいんだから、嫌いにならないであげてね」
テレシアがそうカールに話すがカールはすでに夢の中、眠りについたカールをテレシアはベッドに運ぶとおでこに優しくキスをして「お休みカール...」と呟いた。
山田武司がカールとなってから五年がたちカールは自宅の広い庭で父親、ケインに木刀でボコボコにされていた。
「ほら、立ち上がるんだカール!!、いつまで地面に寝ているんだ!!、そんなんじゃ立派な男になれんぞ!!」
「うるっせえクソ親父!!、五才の子供を大人げなくボコボコにしといてなにが立派な男だ、絶対親父に勝って十才も満たない子供に負けたダメ親父と周囲の人に呼ばせてやる!!」
カールは傷だらけの体を起こして、カールの身丈に合わせて作られた木刀をケインにむける。
「そうだ!!それでこそ我が息子だ!!、では行くぞぉおおお」
「うぉりゃぁあああ!!」
お互いに向かって走るバカ親子?、を突然現れた満面の笑みのテレシアが二人頭に拳骨を入れた所で本日の自称父親とのコミュニケーションは終わった。
「二人とも何か私に言うことはありませんか?」
「「シュミマセン」」
カール以上にテレシアの手でボコボコにされたケインと正座をしながらカールは最強で最恐の母親に謝った。
「ふぅ、まったくあなたたちは一体何を考えているのかしら、まだ五才のカールに木刀を握らせてボコボコにする父親と、そんな父親にどこから覚えて来たのか汚い言葉で罵る五才、あなたたちはもっと普通な親子の関係になれないのですか?」
機嫌を損ねてそっぽを向くテレシアにカールとケインは何とか機嫌を
治してもらおうと奮闘し、十分ごようやく機嫌を治してもらっていつも通り治癒魔法で二人の怪我を治してもらうのであった。
「ふぅ、今日もやっぱり勝てなかったか...」
カールは自室へもどり鏡の前に立つ、するとすっかり見慣れた親譲りの金髪に青い左の瞳、そして何故か転生前の山田武司と同じ黒い右の瞳が写った。
「でも仕方ないよな、だって俺の父親はこのギルオン帝国の大将らしいからな」
こちらの世界で分かったことは、なぜか生まれた時から両親の言葉が分かるってこと。そして自分はケイン・フォン・シールドとテレシア・ディア・ギルオンの長男として生まれたらしい。
父親のケインはギルオン帝国の中でも数人しかいない大将で滅茶苦茶強い魔法剣士、母親のテレシアはこのギルオン帝国の三女で元皇女しかも希代の治癒魔法の使い手だとか。
二人はもともと学生時代の同級生で父親のケインが母親のテレシアに一目ぼれして、皇帝に自分が帝国の大将になったらテレシアを嫁に下さいと言った馴れ初め話は国中の美談だとか。
まあ、両親のことはここまでにしといて、どうやらこの世界には魔法があるらしい、さっき母親のテレシアに傷を治してもったと思うが、今俺は念願の魔法が使える世界に転生できた事を心からあの悪魔に感謝している。
ってな訳で俺はお約束どおり、こんなに小さい頃から剣に魔法に手を出して頑張っている訳だが、なんせ父親がバカだ、五才の実の息子だろうが帝国の大将たるもの手を抜くような恥せんとか何とかで結構毎日死にかけてます。まぁそのお陰か俺自身五才で一般の大人なら倒せるレベルまで剣術はあるけどね、そのせいか、流石あのケイン大将の息子とか言われて、父親がそうだろう?とドヤ顔しているのは物凄く気に入らないけどね。
魔法の方は自分が驚くほど順調だった、希代の治癒の使い手と言われた母親のお陰で魔力は滅茶苦茶あるみたいだし、両親には内緒だが俺の体は多少の傷ならすぐに治るほど再生力の高い体だった。
そして、悪魔と取引をして手に入れた力も当然あった。
カールは自室の窓辺に飾ってある青い綺麗な花に手をかざした。
【時よ加速しろ】
青い綺麗な花はたちまち枯れて花びらは散った。
【時よ遡れ】
枯れた花はたちまち生き返り元の青い綺麗な花を咲かせる。続いてカールは目の前の空間をこじ開けて亜空間を少し覗き閉じる。
「やっぱチートスキルだなこの時空間操作の能力は、はは」
自分の力に若干引くとドアがノックされテレシアの「ご飯出来たわよ~」っと声が聞こえてカールは昼食を食べにダイニングへむかった。
ちなみにこの家はかなりの豪邸だが使用人はいない、以前両親に聞いてみた所「使用人っているのか?」「使用人が欲しいのですか?」と逆に聞かれ困ったものだ。どうやら両親は自分達で出来る事は自分達でやる主義の人みたいらしいってな訳でこの家には豪邸なのにメイドや執事がいなく少し寂しい豪邸となっている。でもこの豪邸には多重の結界や防犯用のゴーレムなどがあり警備は完璧なんだけどね。
そして更に五年が達カールは両親の母校でもあるギルオン帝国魔法第三学校に入学することとなった。
「カール、先生の言うことはちゃんと聞くこと、夜更かしはしないこと、悪い生徒とは付き合わないこと.....」
十分後...
「好き嫌いせずちゃんと野菜を食べること、風呂は毎日入ること、歯磨きも忘れずにやること、女の子には優しくすること、あとは、え~と、あ、たまにでいいから手紙を出すことかな」
滅茶苦茶ながいテレシアの別れの言葉が終わり無の心でケインを見ると同情するような眼差しで一言「男なら自身の選択に後悔するな」なんか訳の分からないことを言われて終わった。
「では、父さん、母さん、行ってきます」
カールは大きなバックを背負って入学するギルオン帝国魔法第三学校
へ向かった。
数日後カールはまだ学校にたどり着かず森の中にいた。
「はぁ、はぁ、はぁ、しんど、まじでしんどい...絶対あの両親鬼だろ!!、十才の子供に魔物住む山をサバイバルで越えさせ、濁流の流れる大河を渡らせ、更にはこうして百を越える盗賊団と戦うとか絶対頭おかしいだろ!!」
カールは周りに倒れている盗賊を見て吠える。
「で、学校はどっちだ?」
カールは荷物から地図を取り出して学校の位置を確認すると目の前にある推定数十キロはある湖の反対側にあると書いてありカールは深いため息をついて湖のほとりを歩いた。
一方、ギルオン帝国魔法第三学校、通称三魔学校では、大騒ぎとなっていた。
「どうでしたか、カール・フォン・シールド君を発見出来ましたか?」
白髪で顎髭を蓄えた老人、ギルオン帝国魔法第三学校、第五十二代校長ゼノス・リア・フォースは校長室で頭を抱えていた。
「もう仕分けありません、鉄道、船、馬車、空船、全て捜索いたしましたが、カール・フォン・シールドらしき人物の目撃情報一つありませんでした」
帝国軍の兵士がそう言うと、ゼノス校長は椅子からバランスを崩して床に倒れた。
「ゼノス校長!!」
兵士は慌ててゼノス校長に駆け寄る。
「なあ、ワシはどうすればいいのじゃ、もしこのままカール君が見つからなければ、この学校最大の汚名をワシわ残す事になろう、もし見つかったとしても、こうなった責任はワシがとらなければならないワシは...ワシは...」
「いいえゼノス校長、あなたは何一つ責任を感じる必要はありませんわ」
校長室の扉が開き、今回行方不明となっているカールの母親、テレシアが入って来た。
「お久しぶりでゼノス校長」
テレシアは優雅に挨拶をして本題に入った。
「今回の件につきましては私達の教育不足が起こした事、ですのでゼノス校長が責任を取る必要は何一つありません」
「教育不足とは、なんの事ですか?」
ゼノス校長は兵士に体を支えられながら立ち上がり椅子に座るとテレシアは話を続ける。
「恥ずかしながら、実はカールに鉄道や馬車、船と言った交通機関の使い方を教えるのを忘れていたのです」
「「え」」
「「えぇぇええええ!!!」」
兵士とゼノス校長は驚いて叫ぶ。
「はい、それはカールが家を出てから気づいた事なのですが、最初はすぐに戻って来ると思い、待っていても変えって来ず先日こちらに連絡した際にはまだ到着していないと聞き慌てて全ての交通機関を探しましたが、カールは見つかりませんでした...なのでこの事から考えられる事は一つ、カールは徒歩でこの学校に向かっていると言うことです」
「しかしテレシア皇女」
「ゼノス校長、今は嫁いだ身ですので皇女は要りません」
「ではテレシア様カール君は今現在もこの学校に向かって徒歩で来ていると言うのですか?」
「その通りです」
「しかし、徒歩となると目撃者が一人もいないのはおかしくありませんか?大きなバックを背負った子供が通りを歩けば巡回兵士や商人達が必ず目撃するはずです」
「ええ、普通なら」
「っと言うことはカール君は普通ではない道で向かっていると言うことですか?」
「はい、そうです、入学式は今日ですので流石のカールも普通の道を通ってこれば間に合わないと考えるでしょう、まぁ、普通の子供でしたらその時点で親に相談するものですが不幸な事にもカールは普通の子供ではありません、私の夫であるケインが剣術を教えて強さは一般兵士より強いです。なので地図上の直線ルートでこの学校に向かって来るでしょう」
「魔物の住む山や大河を越えてですか?」
「はい、その通りです」
自身満々のテレシアの笑みにゼノス校長は恐怖を覚えた。
「(カール君、無事たどり着いてもここには最大の母親と言う難所がある、頑張ってくれ)」
ゼノス校長はゴールがまさかの地獄だったときのカールの心境を察して心から応援をした。
「はぁ、はぁ、はぁ、間に合った~~」
カールはボロボロになりながらも目的地、ギルオン帝国魔法第三学校に到着した。
「おい!!、そこの君動くな!!」
「え?」
到着したと思ったら何故か兵士に囲まれたカールは周囲の兵士を見渡して頭をかしげた。
「ここは由緒正しきギルオン帝国魔法第三学校、貴様のようなスラムの人間がきていい所ではない!!帰れ!!」
隊長らしき兵士が言うと周りの兵士もそうだ、そうだ、と相槌を打った。
「あの~僕は今日この学校に入学するために来たのですが...」
カールは、恐る恐る隊長らしき兵士に言うと隊長はそんな馬鹿なと取り合わずカールの首元を摘まんで近くの川に突き落とした。
「貴様のようなスラムの人間はさっさと流されて消えな気色悪い」
隊長らしき兵士はそう言うと踵を返してその場去ろうとする。
「ほう、それがテメェ達の答えか」
カールはあまりにもひどい兵士の扱いに怒りを覚え川を凍らせて足場を作り通りに戻る。
「なんか言ったか下民」
隊長らしき兵士は川を凍らせるカールに驚きながらもカールをスラムの下民と思って要るため見下す。
「俺はな帝国の兵士は誇り高き戦士だと父親から教わった、今のテメェらのように弱者をいたぶるような事は決してしないと今までそう思ってきた」
川から上がったカールは、足取りをそままに兵士へ向かって歩く。
「今のテメェらは帝国の兵士の風上にも置けないクズだ!!」
「言わせて置けば好き勝手言いやがって!!」
兵士達はカールの挑発にのり剣を抜いて切りかかった。
【時間停止】
カールの呟きにより世界が止まる。
カールはゆっくり兵士の元まで行くと鎧のない兵士の顔を集中的に殴り時を動かした。
【時間再生】
顔を殴られたダメージが一気に襲いかかり兵士はなすすべもなく倒れた。
「つい、カッとなってやってしまったが大丈夫かな?」
カールが倒した兵士を見下ろしていると、騒ぎを嗅ぎ付けた他の兵士が来てカールが仲間の兵士を殺したと勘違いし応援要請をしてカールを取り囲む。
「貴様が隊長達をやったのか!!」
「僕は川に突き落とされたので仕返しをしただけですよ」
「川に落とされたくらいでここまでやる必要は無かっただろ!!、貴様を公務執行妨害、並び障害で拘束する!!」
「やれやれ、この地域の兵士は人の話を聞かないのか。上等やってやるぜ!!」
カールはバックを道路脇に投げて氷の棒を作る。
「真剣だと間違って殺しそうだからこれで相手をしてやる」
「我々兵士を舐めやがって!!、このクソガキを殺っちまえ!!」
「「「「おおおおおお!!!」」」
カールは向かって来る兵士達をことごとく裁き倒していく。
「この程度兵士なら、何人いようが変わらないよ」
カールは切りかかってきた兵士の腹に氷の棒を突っ込みぶっ飛ばす。
「ただのガキだと思うな、中級レベルの魔法の使用を許可する、殺す気でかかれ!!」
「「「「ハイ!!」」」」
「おいおい、十才の子供に中級魔法を使うのかよ?!」
兵士達は前衛と後衛に別れてカールを後衛に近づかせないとヒットアンドアウェイ戦法で抵抗する。
「(不味いな、一人一人が弱くても追撃する前に他の兵士が来て邪魔するせいで全然倒せない。しかも後衛はなんか洒落にならない魔法を使う気でいるみたいだし、あんまり使いたくないけど時を止めるか?)」
後衛の魔法が完成して前衛が一斉に引き、カールに向かって魔法が放たれ覚悟を決めたとき、なにもしていないのに魔法が消えた。
「双方武器を納めなさい」
白髪に顎髭を蓄えた老人が有無を言わさない殺気で言った。
「やなこった、先にコイツら兵士が僕にケンカを吹っ掛けて来たんだ、おまけに洒落にならない魔法も事実使ってきた。
このままおとがめなしで済まそうって思っているなら僕は抵抗する」
兵士達が老人の殺気で全く身動き出来ない中、カールは老人に歯向かった。
「ほう、ずいぶんと生きのいい子供じゃないか、だが君は一つ大きな勘違いをしている」
「それはなんだ?」
「君のお母さんが一緒にいることじゃ!!」
「え?」
「か~~る~~ぅくん」
後ろを振り替えるとそこには黒い笑顔のテレシアが恐怖しか伝わらない優しい声で自分の名前を呼んでいた。
「な、なんでしょうか、お、お母様...」
カールは今まで戦ってきた魔物達よりも、兵士達よりも、はたまたそこの老人よりも明らかに強いオーラを漂わせる母親に尋常じゃない冷や汗をかいた。
「カール君、何かお母さんに言うことあるんじゃない?」
「え、え~と」
カールは母親のオーラに自然と道で正座をする。
「お久しぶりですお母様!!」
「うん、ほかには?」
テレシアは両手を腰にあて前のめりなり続きを促す。
「ご心配をおかけしてすみませんでした」
カールはテレシアに頭を下げて土下座する。
「どんな心配をかけたのかなぁ~?」
「え~っと、連絡取らずに学校へ向かった事ですか?」
「ブッブー、違います。そもそもカールはどうして交通機関を使おうとって思わなかったの?せめて、人のある通りを通っていれば家からこの学校まで歩いてくるって言う馬鹿な事は起こらなかったのになんで歩いて来たのですか?」
「えぇぇええええ!!!、交通機関あったのォオオオオオ」
カールは頭を上げてテレシアを見る。
「ええ、ありましたわ、私達はてっきり交通機関を使って学校に向かうと思って今したのに、カールが出てって行ってから交通機関のことそう言えば教えて無かったと気づき、家に戻ってくるかと思いきや、カールは入学式に間に合うように魔物の住む山や大河を突っ切ってくるなんて、お母さん驚きましたわ」
「なら、交通機関あること教えなかった人のせいじゃ...」
「何か言いましたか、お母さん聞こえなかったので」
「いえ、何も言ってません」
カールは再び土下座する。
「でも、カールが無事で良かったですわ」
テレシアは白いハンカチを取り出して涙を拭う。
「でも、学校の前で兵士さんと問題を起こしたのは許しません」
テレシアの瞳に力がこもるとカールは冷や汗をだらだら流しながら小さくなる。
「テレシア様、そろそろカール君を解放してあげてませんか、もう入学式は始まっています、今時間では式には間に合いませんがクラスでの学校説明には間に合います。ですので新しい制服にカール君を着替えてもらって少しシャワーを浴びてもらいましょう」
ゼノス校長はさっきまでの強気は何処へやら、オドオドしながら母さんに話しかけている。
「そうですね、では私はカールを連れて準備してきます、ゼノス校長は今回の事の原因を調査してください、場合によっては私の父に報告しなければなりませんので」
テレシアはそう言うとカールを引き連れて校内へはいった。
「承知いたしました」
ゼノス校長はテレシアに頭を下げると振り返り兵士達に冷たい眼差しを送った。
「お主達とんでもないことをしでかしてくれたなぁ、あのカール君は現在の皇帝のお孫さんにあたる、しかも母親は希代の治癒魔法の使い手、テレシア・ディア・ギルオン、父親はこの帝国で僅か数人しかいない帝国軍の大将、ケイン・フォン・シールド、下手をすれば不敬罪で死刑物の大事件じゃぞ!!嘘なく真実のみを話すがよい、さすれば少しは罪が軽くなるかも知れん」
ゼノス校長はそう言うと後から来た兵士に問題を起こした兵士を捕らえさせ兵士の詰所に連行させた。
「平和が続くとこうも人は腐る物なのかね」
ゼノス校長はため息をついて校長室に戻った。
カールはテレシアにつれられて学校の敷地内にある大衆浴場にきていた。
「カール、言わなくてもわかっていると思うけど青いのれんが男湯で赤いのれんが女湯よ、くれぐれもどこかの誰かみたいに覗きなんかしちゃダメよ~」
テレシアはカールにに微笑みを見せているが、カールの背中は冷や汗でびっしょりだ。
「(絶対父さんだよね、間違いなく父さんが覗いたんだよね)」
カールは苦笑しながら、「そんなことしない」とテレシアに言ったがテレシアはカールの目から視線をそらさず冷たい瞳で「ホントに?」
とさらに疑いを込めた視線で言ってきたためカールは棒読みで「ホントダヨ」っと言って逃げるように男湯へ逃げた。
「ふぅ~、しかし母さん恐ろしいなぁ~、恐らく俺は一生母さんに勝てないだろうなぁ~」
カールはボロボロの学生服を脱ぎ、洗面台を通り過ぎてシャワーを浴びようと扉に手を掛けて止まった。
「ん?」
カールは後ろ向きに歩いて止まり、洗面台の鏡を見るとそこには明らかに浮浪児と見られる自分姿があった。
「なるぼど、道理で入学しに来たと言っても取り合ってもらえなかった訳だ。だってどっからどうみてもこんなボサボサの紙で泥がついた顔じゃあスラムの浮浪児と思われても仕方ない」
カールは一人で納得すると浴場に入りシャワーを浴びて体を洗った、そして一人でかなり広い浴槽を満喫し風呂場から出ると新しい制服が畳まれて棚においてあり。カールは新しい制服に袖を通して男湯から出ると、テレシアが男湯の前でカールが出るのを待っていた。
「カール、あなたの荷物はすでに寮に運んでもらったわ、それと今からカールが入るクラスに向かうわよ」
カールは初日から悪目立ちした自分はずっとクラスでボッチだろうなぁ~と思いながら、テレシアに手を引かれクラスに向かった。
カールはクラスの前まで来るとすでに授業は始まっており、黒い、ザ、魔法使い、の格好をした男性の先生が自分と同じ制服を来た生徒に授業をしていた。
「先生、先生...」
テレシアが廊下から先生を手招きし、カールを紹介する。
「授業中すみません、諸事情により遅れてきた息子を連れて来ました」
テレシアはカールの両肩に手を添えてそっと先生に近づける。
「ええ、話はゼノス校長からお伺いしています、君がカール君だね。私はクラスの担任になるジーク・リバースだ」
ジーク先生は腰を落としてカールの視線に顔を合わせると手を差し出した。
「カール・フォン・シールドです、よろしくお願いします」
ジーク先生とカールは握手するとジーク先生は体を起こして今日に入るよう手で促した。
「すでにみんなの自己紹介は終わっているから教卓の前で自己紹介してもらうけどいいかな?」
「は、はい、構いません」
二人は教卓の前に立つとジーク先生がカールを紹介した。
「みんな注目!!、諸事情により遅れてしまいましたが今日から皆さんと同じクラスで学ぶ、カール・フォン・シールド君です、仲良くしてあげてください!!」
ジーク先生がみんなに聞こえるように大きな声で言うと、続いてカールも紹介した。
「カール・フォン・シールドです!!、よろしくお願いいたします!!」
カールは頭が下げると、生徒のあちこちから、「あれが例の...」「初日から遅刻とはいいご身分だな」「あの子左右で瞳が違わない?」「あいつを利用すれば出世間違い無しだ!!」賛美両論の反応が返りカールは学校生活に不安を覚える。
「じゃあ、カール君の席は一番奥の廊下側に一つ空いている席があるでしょ、そこに座ってください」
「はい、わかりました」
カールは机の間を通って自分の席に付くとジーク先生は授業を再開した。
「えーと、確か、魔法の種類についての所だったかな?」
ジーク先生は黒板に魔法の種類について書き出す。
「えーと、まず一言魔法と言ってもたくさんの種類があります、まず!我々人間が基本的に使う魔法は人法といい、他の種族が使う魔法に比べて魔力を使う量は少ないですが多くの種類があります。次にエルフや精霊などが使う魔法を、精霊魔法といい、人間が使う魔法に比べて魔力の消費が大きい変わりに強い魔法を使う事が出来ます。次に龍やドラゴンが使う龍法は精霊魔法よりも更に強い魔法を使う事が出来ます。そして神様の眷属、主に天使や、特別な加護を受けた人が使える魔法を天法と言います、天法は龍法と同等、もしくはそれ以上とも言われております。
そして、現在もっとも力のある魔法を神法と言います。
神法は存在するとは言われておりますが、その力を見たものは誰も確認されておらず、伝説上のみ確認されています。
大まかな魔法の分類はこんな所ですが、獣人族やアンデットが使う魔法は基本的に人法の一種と位置ずけられております」
ジーク先生が黒板から振り帰ると「ここまでで何か質問はある人?」と手を上げました。
カールは自分の悪魔からもらった時空操作の力はどこに入るのか気になり手を上げて質問する。
「先生、悪魔などが使う魔法はどうなるのでしょうか?」
「いい質問ですね、カール君」
ジーク先生は、再び黒板に向かい、「悪魔」と書く。
「さっき私は大まかに魔法の種類は、人法、精霊魔法、龍法、天法、神法があると言いましたが、これらに含まれない種族、魔族や悪魔の魔法はどうなるのか?、それは使う魔法によって人法、精霊魔法、はたまた天法に分類されます。
どうして魔族や悪魔の魔法がないのかとと言いますと、それはそれぞれの個体さによって魔法の力が違いすぎるからです。
上記に書いた魔法はそれぞれがだいたいこれぐらいの力ですよ、という基準にもなっており、あまりににも差が激しい魔族達の魔法は判断しずらいと考えたため、魔族や悪魔の魔法を個別による呼び名はないのです。
しかし、皆さん諦めては行けません、これらの魔法はあくまでも基本の力の事です、鍛練次第では一番弱いとされている人法でも彼の英雄のように龍を討ち滅ぼすことも出来ます。なので人法は弱いとか、人間ではなく龍に生まれたかったとか悔しがる必要はありません」
ジーク先生が言い終わった所で授業終了のチャイムがなり休憩に入った。
「次の授業では魔法訓練場にて君達の魔力測定があります、運動着に着替えて遅れないように集合してください」
ジーク先生はそう言うと教室から出ていった。ジーク先生が教室から出ていくと、入学式に仲良くなったのかそれぞれのグループに別れてしゃべりながら更衣室へ向かい、入学式に遅刻したカールはお約束通りボッチで更衣に向かい誰とも会話する事なく魔法訓練場についた。
「では、授業を始めます。それぞれ番号順に二列にならんで目の前にあるゴーレムに初級の魔法「火球」を使って下さい」
ジーク先生が一番目の生徒の名前を読んだとき、見るからに裕福そうな男子生徒が手を上げてジーク先生に質問した。
「先生、どうしてファイヤーボールの事をあえて火球と呼ぶんですか?」
「えーと、君は...ジルクリス・フィード・ロック君だね」
ジーク先生が名前を言うと周りの生徒がざわめいた。
「ロックってあの魔法石王のロック?」「え~マジで?!」
「嫁に行ったら玉の輿確実じゃん」
特に女子達がやたらジルクリスに反応しているがカールは異世界定番の魔法、ファイヤーボールをあえて火球と呼ぶジーク先生が気になった。
「ジルクリス君、それはね文字数の問題だよ、火球とファイヤーボールはそれぞれ同じ魔法だけど。実際に戦闘中でファイヤーボールと言うのと火球と言うのとではコンマ数秒差が出来る。そのコンマ数秒の差で命を落とす実戦において私は出来る限り詠唱は短い方がいいと思っているので私の授業ではあえて火球と読んでいるのだよ」
「分かりました、ありがとうございます」
ジルクリスはジーク先生に頭を下げるとジーク先生は人差し指を上げて言葉を付け足した。
「でも実戦では、基本、無詠唱で魔法を使うから本当に大事なのは魔力の制御とイメージだ。そこは確り覚えおくと後で役に立つよ」
「はい!!」
ジルクリスはキラキラした目でジークを見て自分の場所に並んだ。
「次、カール・フォン・シールド君」
とうとう、カールの出番が来てカールはゴーレムに向かって立った。
「(何か俺だけ場違いな気がするなぁ...)」
カールは自分の前に魔法を撃った生徒を思い返した。
「ファイヤーボール!!」「威力百五十!!」「ファイヤーボール!!」「威力百三十!!」「火球!!」「威力二百!!」
生徒が魔法をゴーレムみ撃つとゴーレムの頭上に威力の数値が浮かび
その数値をジーク先生がノートに記入して測定していく。
別にこれだけならカールは場違いだとは思わなかっただろう。だが、カールは飛んでもない問題に気ずいてしまった。それは...
「ファイヤーボール!!」
隣の列の女子がリンゴサイズの火球を撃ちゴーレムに百四十と表示された。
「(威力がショボ過ぎるんだよなぁ...俺の魔法は最低でも大人が座れるバランスボールほどはある。大きさで考えると軽く三十倍はあるだろうし、下手に目だって国に管理されるのは嫌だしなぁ~)」
「カール君、速く火球を撃ちなさい」
もたもたしているカールにジーク先生は速く打つように言った。
「はい!!」
カールはネット小説などで自身が強すぎるために国に裏切られて死んだ転生者が頭に浮かび、魔法を無意識に弱めた。
「火球!!」
ピンポン玉ほどの火球はゴーレムに当たり四十と表示され後ろの生徒達が鼻で笑った。
「おい、あいつ四十だってよ」「あのケイン大将の息子なのに」「相当甘やかされて育ったのに違いない」「いくら魔法苦手でも四十はないわ~」
「君たち静かに!!」
悪口を言う生徒にジーク先生は叱責し、カールに優しく声をかける。
「大丈夫、今は弱くても君達は成長期、まだまだ伸び代はたくさんあるから」
カールはジーク先生の言葉にただただうなずき測定が終わった生徒中に戻った。そして、魔力測定はどんどん進み、最後の生徒の測定が終わった所で授業終了のチャイムが鳴った。
「えー、次は体力測定を行います。運動場の方へ移動してください」
ジーク先生の指示に従い運動場に向かう中、元気のいい男子生徒がカールに向かって「よう、落ちこぼれ!!すごい両親を持つと子は甘やかされるんだな」「そんな魔力でよくこの三魔学校に入れたなぁ」「精々俺達の足を引っぱらないように努力するんだな」っとやじを飛ばして去って行った。
「(まっ、予想とは違ったけどこれで国から目をつけられる事は無いかな...)」
カールは男子生徒のやじをむしろ前向きに受け取り運動へ向かっていると一人の少女が声をかけてきた。
「カール君大丈夫?」
ライトブルーの髪にエメラルドグリーンの瞳を持つ少女は優しくカールに聞く。
「あ、全然大丈夫、気にしなくていいから!!」
まさか、自分に声をかけてくる女子がいるとは思わずカールは動揺した。その動揺したカールを女の子は気にしていると思い込みカールの両手を握る。
「大丈夫、カール君なら絶対すごい魔法使いに成れます」
女の子は力ずよくそう言うと、照れ隠しか運動場に向けて走った。
「まっ、まって下さい」
カールは思わず声をかけて女の子を止める。
「(バカ、なに止めてんだ...)」
カールは思わず止めてしまった女の子に何て言おうか少し考え、名前を聞く事にした。
「僕はカール、君の名前を教えてくれませんか?」
女の子はゆっくりと振り返り爽やかな笑顔を向ける。
「私はミラ、ミラ・アル・フォード」
こうしてカールは、美少女の友達?っぽい人ができた。
「えー、今から運動場のトラック、約千メートルを十周してもらいます、タイムと順位は、そのまま成績にも影響するので手を抜かないように」
ジーク先生はそう言うと火球を作り出し空に打ち上げた。
「それでは位置について、ヨーイ...」
ドドドドーーーーーーンンンン!!!
凄まじい爆発が上空で起こり全て生徒があまりの衝撃に倒れるなかカールだけは平然としていた。
「やっべ!!」
カールは自分以外全員倒れていることに気ずいて慌てて倒れたふりをする。
「うっ...」「んあ...」「うぇん...」
それぞれの生徒が様々なうめき声を上げて立ち上がり体力測定が始まった。カールはわざと一番最後まで倒れたふりをし、今回も魔力測定同様落ちこぼれのタイムを出した。
そして、さっきの元気のいい男子生徒にからかわれながら、更衣室で着替えて教室に戻った。
「えー、本日の授業はここまで、今日から皆さんは男女別々ですが寮生活に入ります、くれぐれも男子生徒は覗きとかせず、女子生徒は恋ばなで夜更かしせず、きちんと過ごしましょう。ちなみに学校の図書館は午後八時まであいているので予習したい人は自由に使って下さい、同様に運動場、魔法訓練場も午後八時まで使えますのでご自由に使って下さい。以上で終わります」
ジーク先生が言い終わると、クラスのリーダーらしき生徒が始めに挨拶をしてから、他の生徒が声を揃えて挨拶し今日の授業は全て終わった。
「(さぁ~て、俺は図書館で魔法を漁るかな...)」
カールは今日もらった教科書をロッカーに揃えて入れるとノートとペンを持って図書館に向かった。
「わ~お、スゲーェ!!」
図書館に入ったカールの一言はこれだった。目の前に見えるのは全て本、本、本、本しかない、運動場にも遅れを取らないほどの広さで軽くビル五階程高さはある空間にそびえ立つように並べられた本棚はまさにファンタジーと言える物だった。
「さぁ~て、まずは俺の時空間操作の力についてだな...」
カールはとてつもなく広い図書館を歩きながら自分の求める時空間操作の魔法を捜した。
一時間後...
「ねぇーー、なんでねぇんだ?!」
「図書館は静かにお願いします」
叫ぶカールに近くの女子生徒が注意した。
「あ、すみません、きおつけますぅ~」
カールは頭をペコペコ下げながら図書館に置いてある大きな机に向かい、椅子を引いて座った。
「(あぁ~どっすっかなぁ~)」
カールは背もたれに全体重を乗せて後ろに傾くと急に目の前にミラが現れ床に後頭部をぶつけた。
「痛っテェ~エ」
カールは頭を抑えながら立つとミラはおどおどしながらカールの頭を撫でる。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい...」
「いや、大丈夫だから...」
慌ててミラをカールは落ち着かせようなだめるがミラはただごめんなさいとか言わず謝っていると近くの男子生徒から「静かにお願いします」と注意を受けてやっとミラは落ち着きを取り戻した。
「えっ、と本当にごめんなさい...」
「いえ、本当に大丈夫ですから...」
お互い最後に小さな声で話すと不思議と二人から笑みがこぼれた。
「青春しとるのお~」
いつの間にか隣に座っていた白髪で顎を蓄えた爺さんは二人に向かって行った。
「お前は校門に居た爺さん?!、何でここに?」
「ちょ、ちょとカール君?!、この人はこの学校の校長先生、ゼノス校長先生だよ!!」
ミラらカールの耳に手を当てて小声で教える。
「えっ?!マジ?!」
カールが驚きのあまり机を蹴って物音を出すと周囲の目が一斉にカールを睨み付け、カールは居心地悪そうに椅子に座った。
「ほれ、お嬢さんも立ってないで座りなさい」
ゼノス校長がミラも椅子に座らせるとゼノス校長は指をパチッっと鳴らし音の無い世界を作った。
「もう話して大丈夫じゃ、ここでしゃべった言葉は外の生徒には聞こえん」
ゼノス校長はそう言って笑い、会話を続けるように言うが、当然、こんなお膳立てされて話すような事もなく、二人は口を閉じたまま数秒の時が流れた。
「うむ、二人共話す事がないならワシがはなそう、ミラ君、なぜ君は落ちこぼれと言われたカール君に近づいた?」
思わぬ質問の内容にカールはミラを見る、するとミラは「校長先生は何でもお見通しなのね」と静かに口を開いた。
「まず始めに...私の目には特別な力があります...」
カールとゼノス校長は黙ったまま話を続けるように促す。
「それは、その人持つ魔力がわかるというものです、私の家系にたまに表れるこの力は隠し通すのが通例となっています」
「どうして?、そんなすごい力なら戦闘に...あっ...そう言うと事か...」
カールはどうして隠し通すのか察した。
「はい、その通りです...この力があれば戦闘において相手がどの程度の実力か分かるため時の権力者たちは私の先祖を狙らって争い事を起こしました。そして一族のほとんどが殺されるか奴隷となり、私の一族は山あいの集落で細々く暮らしていましたが、私は一族の中でも隠し切れない程強い力を持って生まれたため両親はこの学校に通わせる事にしました。
この学校で私を守ってくれる強い人がいることを願って...
ごめんなさい、何故か涙が手できちゃって」
涙をハンカチで脱ぐうミラをよそにゼノス校長はカールに訪ねる。
「そう言えばカール君は今日の魔力測定、体力測定でビリだったそうじゃな...ワシの殺気をもろに受けて平然としていた君が落ちこぼれとは納得いかんがのう...」
「やっぱりバレてたか...」
カールは場が悪そうに後頭部で手を組はなす。
「だってこの学校レベル低すぎるんだから」
カールの発言にミラは驚く、ミラは始めからカールが実力を隠し強いとは思っていたが精々優等生と堂々レベルかと思っていた。しかし本人はこの学校、つまり全生徒の誰よりも自分は強いといったのだ。
「ごめんなさいカール君、私の目はあなたの力がどれ程かわかるけどみた限りジーク先生のクラスの中では上位に入る位だよ」
「まっそれはしょうがない、だって今の俺、魔力をかなり抑えているから」
「え?」
「まっそうじゃろうな」
ミラだけおいてけぼりにカールとゼノス校長は納得している。
「ミラ君、その目はまだ未完成なのじゃよ、本来その目はどれだけ魔力を隠そうとも見抜いてしまう恐ろしい力なんじゃがどうやらミラ君はまだその領域に達していないと見える。
かつてワシの妻はその目を使って魔力だけではなく人の嘘や魔力の流れを見抜き何度もワシを助けてくれたわい...おっと口が滑ってしもうた?!。今のは内緒にしてちょ」
ゼノス校長の飛んでも発言を聞きカールとミラは人形のように頭だけでうなずいた。
「まぁ、長い人生の中で二人が出会ったのも何かの縁、仲ようしなさいや」
ゼノス校長はそう言って席をたちもう一度指をパチッっと鳴らして防音の魔法をといて図書館から立ち去った。
「ミラさん...」
「はい?!」
「困った事があったら相談してね、僕も出来る限り協力するから」
「はい!!、お願いします!!」
二人は見つめ合い甘い雰囲気が漂うと近くの文系女子が咳払いし、カールとミラは気まずそうに図書館を後にした。
「盗みぎぎとは感心せんのう...」
図書館から出たゼノス校長は誰もいない廊下に話した。
「あらやだ、聞いてていらして?」
廊下の影からカールの母親、テレシアが出てきた。
「今日一日は校内居ると思っておったから言ってみただけじゃ」
「じゃあ、私はまんまと引っ掛かった訳ですね、ゼノス校長のいじわるぅ~」
「まあ、そんなことはおいといてどおするのじゃテレシア様は?」
「いや、別に何もしませんわ、いくら私でも息子の成績に口出すことはしません。それに夫が言っていました「男なら自身の選択に後悔するな」と、それでカールが選んだ答えなら私はカールを止める気はありません」
「ずいぶん息子さんを信じておいでなのですね」
「はい、だって私とケインの息子ですから」
「(揉め事にすかれそうな組み合わせじゃな)」
「ゼノス校長、何か失礼な事を思いませんでしたか?」
「いや...なんの事でしょうか...」
「ゼノス校長の奥さんに言いつけますよ」
「すみませんでした」
ゼノス校長はテレシアに土下座する。
「(妻のお気に入りの生徒じゃったせいかワシの考えを良く知っておる...トホホ...)」
テレシアは目の前で土下座する校長に何時かの夫の姿が重なり静かに笑う。
「こらゼノス!!、またこんなガラクタお金かけてバカじゃないの?!」
「すみませんでした!!」
「こら、ケイン!!、私にプロポーズしといて他の女の子にデレデレしてどういうつもり?!」
「すみませんでした!!」
まだ学生だった頃ゼノス校長の奥さんで教師のシルフィアと一緒にゼノス校長と夫のケインを土下座させて叱ったあの時の風景。
テレシアはゼノス校長に頭を上げるように言い自分は家に帰ると伝えてから校門に向かって歩いた。
「カール、お母さんはまだまだ子供だと思って居たけどあんないい子を捕まえちゃって...ふふ、早く紹介してくれないかしらね。今から楽しみだわ」
テレシアは笑みを浮かべながら学校を後にした。
あれから月日は流れ、僕とミラは特に大きなケンカもすることなく、友達以上、恋人未満の関係になり日々を過ごしていた。
「おい、カールまたビリらしいなぁ」「本当にお前があの両親の子か怪しいもんだぜ!!」「ミラもこんなやつほっておいて俺たちのグループに来たら」
入学初日にカールをからかったやつらは最近では人目も日からずに俺を侮辱するようになっていた。
「ごめんなさい、私はカール君と一緒に居たいから」
そして、ミラはミラで男子三人組を煽る言い方をし、いつも俺は胃がいたい。
「何で、そんな落ちこぼれに付き合うんだよ、ミラちゃんは可愛いし勉強もできるからもっといい友達がいるはずだよ!!」
男子生徒はミラに詰めより説得しようとする。
「(最近の俺の悩みはこれだ、俺と一緒にいるせいでミラは女子生徒のグループから孤立した事)」
「でも私はカール君と一緒がいいからごめんね」
ミラの揺るがない意志に男子生徒達は諦め、カールを強く睨み付けながらその場を去った。
「本当によかったのか?、僕の側に無理している必要は無いんだぞ?」
カールの言葉にミラは首をふりカールの耳に手を当た。
「だってあの人達、今のカールより百倍は弱いもん、それに私がお嫁に行けなかったらカール君が責任とってくれるんだよね❤️」
「あ、ああうん、」
そしてミラが、猛烈にアタックしてくるのも嬉しい悩みである。
「ミラ・アル・フォード君はいるか?!」
突然教室に兵士が訪ねてきて、ミラに手紙を渡した。そして手紙をもらったミラは顔を青くして教室を飛び出していき、カールは慌てて後を追った。
「ミラ!!、まってくれ、ミラ!!」
カールはミラの肩をつかみ止めるとミラカールに抱きついて泣いた。
「カール...カールく~ぅん...わたし、わたし...」
カールはミラの手から手紙を取ると目を通す。
招待状
新婦 アル・フォード家長女、ミラ・アル・フォード
新郎 キエラ・ザード家長男、キース・キエラ・ザード
日時、この手紙が届いてから三日後の夜九時
場所、リーフ村の教会
追伸、両親や村のみんながミラさんの事を心配しています。
「ふざけやがって...」
カールが手紙を、読み終わり手をおろすと突然後ろから誰かに殴られ意識が朦朧とする。
「(しまった、手紙に気をとられすぎた)」
カールは床倒れ目の前が真っ暗になる。
「カール!!」
ミラは慌ててかけよろうとするが、兵士に止められる。
「お迎えに上がりましたミラ様、さあ皆さんがお待ちですこちらにどうぞ」
「話して下さい!!」
ミラが兵士の腕を振りほどくとあろうことか兵士はカールの首に剣を突きつけた。
「ああ、なんと言うことだミラ様はどうやら悪い男の子に騙されているご様子、今この男の子を始末して解放してあげますからね」
兵士がカールの首に剣を突き立てようと振りかぶったとき、ミラは叫んだ。
「やめて~~~~!!、何でも言うこときくから、どんな事でも我慢するから彼に、カールには手を出さないで...」
兵士はその言葉を待っていたと剣を鞘に納めるとミラを連れて学校から立ち去った。
「痛っテェ...痛っテェなぁああああ!!はぁ、はぁ、はぁ」
カールが目を覚ますとそこは保険室ではなく校長室のソファーの上だった。
「ミラ...そうだミラは!!」
カールはソファーから飛び起きのんきに側の椅子でうたた寝しているゼノス校長の胸ぐらをつかみ揺さぶり起こした。
「オラ爺起きろ!!ミラは!!ミラはどこだ!!」
「ええい!!少しは落ち着けぇええい!!」
ゼノス校長はカールの頭をつかみ近くにあった机を真っ二つにして床に叩きつけた。
「グオッッ!!」
「少しは頭が冷えたか?」
ゼノス校長は冷たい眼差しでカールを見下ろす。
「そんなことよりミラはどこに...」
カールは立ち上がって口についた血を脱ぐう。
「ミラ君は家庭の事情により今日ずけで退学した、どんな事情があろうとも学校からミラ君をどうにかすることは出来ん!!」
「そう言うと言い方をしたって事は何があったか知っているんだな」
「知っていたとしても話す事はできん!!」
「キース・キエラ・ザードって言うやつの差し金か?」
「何故それを知っている?!」
「手紙を読んだのさ、ミラに送られて来た手紙を」
「ならわかっているはずじゃ、この学校内で兵士が生徒に暴力を起こしたのに君はこうして校長室で休むはめになっていることに!!」
「大方、保険室の物を使えば国にどういう理由で使った報告する必要があるのだろ、そして今回は兵士が俺の頭を殴って気絶させた、つまり保険室を使えば誰に殴られたかの証明が後で必要になる、学校は当然キースの圧力で兵士に殴られたとは言えず、こうして校長室で休むはめになった。っということかな?」
カールの言葉にゼノス校長は何も言わず黙っている。
「ゼノス校長、俺も今日で学校辞めます」
「なんじゃと?!」
ゼノスは驚き目を見開く。
「今の俺はとても怒り狂っている」
カールは自分の手から血がにじみ出るほど強く握り、校長の前に
つき出す。
「そして非常に冷静だ、俺はどうやらミラさん思いの外惚れて居たらしい...」
「そうか、そう言うとなら仕方ない」
ゼノス校長はソファーに座りカールに力強い視線で覚悟を問う。
「お前は愛する者のために人を殺せるか?」
「ああ、殺せる」
「愛する者ために愛する者に恨まれる覚悟はあるか?」
「ある!!」
「最後に一つ。
行ってこい、親子揃って大馬鹿どもめ、後処理はこのギルオン帝国魔法第三学校、第五十二代校長ゼノス・リア・フォースが引き受ける!!」
ゼノス校長は笑ってカールに親指を突き立てた。
「ああ、校長の覚悟を無なだにしないためにも必ずミラを助けて見せる」
カールは、そう言って校長室を飛び出したが、数秒後また校長室に戻ってきた。
「リーフ村ってどこ?」
「やれやれ」
ゼノス校長は、左手で頭を抑えながら机に向かい引き出しを開けて地図をカールに投げつける。
「その地図の左端にある小さな点の村がリーフ村じゃ」
「めっちゃ遠いやんけ!!」
すっかり日が落ちた空にカールの声が高らかに響いた。
結婚式当日
「うん、ずいぶんと美しいじゃないかミラちゃん、まだ十才って聞いた時はどんな子供だと思ったけど十分私の守備範囲だよ」
この頭のハゲた白豚の男がキース・キエラ・ザード辺境伯、リーフ村を含むこの辺り一帯を牛耳るダニの親玉だ。
「お母さんやお父さんは無事なのですか?!」
ミラの言葉にキースは不気味な笑みを浮かべて笑いミラの頬をいやらし手つきでさわる。
「ああ、無事に生きているとも、ちょっとだけ君の居場所をなかなか教えてくれなかったために、丁寧な質問はしたがね」
「お母さん...お父さん...」
ミラらキースが両親に拷問したと確信し涙が溢れる。
「おや、泣いているのかね、可愛らしい...」
キースはミラの涙を指ですくうとペロリとなめた。
「うーん、若い女の子のいい味だ、今晩はた~っくさん可愛いがってあげるからねぇ~、ふふふふふ...」
キースは、不気味な声で笑うとその場を後にした。
「カール君、助けて...」
ミラはうつむきながら両手を握り閉めた。
一方その頃カールは山の中を突っ切っていた。
「チックショオオオ!!、まさかリーフ村がここまで遠いとは思って居なかった、しかもあの校長地図の裏に小さな文字でキースの兵士たちは空舟でリーフ村に向かったとか、ふざけてやがる!!」
カールは途中で出くわす魔物を片っ端から時間操作の能力で無に返し突き進む。
「しかしこの時間操作の能力やべえな、魔力を全く使わない上にこの威力は...」
そこでカールはジーク先生の授業を思い出した。
「(一言魔法と言ってもたくさんの種類があります、まず!我々人間が基本的に使う魔法は人法といい、他の種族が使う魔法に比べて魔力を使う量は少ないですが多くの種類があります。次にエルフや精霊などが使う魔法を、精霊魔法といい、人間が使う魔法に比べて魔力の消費が大きい変わりに強い魔法を使う事が出来ます。次に龍やドラゴンが使う龍法は精霊魔法よりも更に強い魔法を使う事が出来ます。そして神様の眷属、主に天使や、特別な加護を受けた人が使える魔法を天法と言います、天法は龍法と同等、もしくはそれ以上とも言われております。
そして、現在もっとも力のある魔法を神法と言います。
神法は存在するとは言われておりますが、その力を見たものは誰も確認されておらず、伝説上のみ確認されています)」
「まさか、俺が悪魔からもらった力は神法なのか?」
カールは自信の仮説を証明するために時空操作の能力を使う。
【時間停止】
時刻は九時になりリーフ村の教会にキースが現れた、キースは太った体を見せつけるようなパツパツの新郎服着て祭壇の左に立ち、新婦のミラが登場するのを待った。
美しい音楽が奏でられ教会の扉が開き純白のウエディングドレスを着たミラは招待客達から驚きの声を受けながら白豚キースの元へゆっくりと歩き向かい合った。
「汝、キース・キエラ・ザードはミラ・アル・フォードを妻とし共に生きると誓うか?」
教会の牧師がキースに訪ねるとキースは「誓おうとゆっくり言った」
「汝、ミラ・アル・フォードはキース・キエラ・ザードを夫とし支えて行くと誓うか?」
牧師の言葉にキースは心なかで歓喜する。
「(ようやく夢に見た力が我が物となる、喜べミラちゃん、お前はたっぷり能力も体もこの俺のために使えるのだからな、ふぉ、ふぉ、ふぉ!!)」
「誓い...」
ミラが涙を流しながら誓うと言おうとしたとき、祭壇上の空間にヒビが入る。
ピシッ、ピシピシピシッ!!
やがて空間がガラスのように砕け、なかから何者かが祭壇の上に降り立つ。
「よう、キース・キエラ・ザード、思った通りの豚野郎だなぁ」
カールは白豚を見下ろして言う。
「なっ、んだ貴様は!!、お前ら今すぐコイツを殺せ!!」
「「「「オオオオオ!!!」」」」
教会内に居た兵士がカールを殺そうと剣を向けるがカール指をパチッと鳴らすと兵士は全員倒れた。
「なっ何が起こった?!」
キースは一瞬で自慢の兵士が倒されたことに驚き慌てる。
「なあ~に簡単な事だ、さっき指を鳴らしただろ?、その瞬間に兵士を殴って気絶させたんだ」
「そんな、そんな馬鹿な事が?!」
キースは近くにいるミラを人質に取ろうと掴みかかるがカールがミラに触らせるはずもなくまるでワープしたようにキースの腹をけり教会の扉を壊して外に転がった。
「いだい、いだいよぉ~、お前らあいつを殺せ!!」
キースは近くにいる人物にカールを殺せと命令するがむしろ殴られて地面に転がる。
「きっ、貴様らこの私を殴ってただですむと思うなよ?!」
キースは殴られた頬に手を当てて振り返り驚く。そこには兵士に命令させて閉じ込めていた村の住人がそれぞれ農具を持ってキースを取り囲んでいた。
「もう、お前の指示には従わない!!、例え殺される事になろうとももう、もう、二度と優しいミラちゃんを傷つけさせない!!」
ミラのおじいさんらしき人物がキースに言うと周りの人達も賛同して叫ぶ。
「「「そうだそうだ!!」」」
「ええい、この恩知らずどもがぁ、こうなったら私の権限を使って村ごと滅ぼしてやるわ!!」
キースが懐から小さな金の笛を取り出して吹くと高い笛の音が周囲の山にこだまして、ドラゴンらしき恐ろしい鳴き声が帰ってきた。
「ふぉ、ふぉ、ふぉ...これでお前らはおしまいだぁ!!」
恐ろしい鳴き声はとんでもない速さで大きくなりあっと言う間に赤い大きなドラゴンが村の上空に現れた。
「ファイヤードラゴン、我がキエラ・ザード家に代々受け継がれる最終兵器、者共恐れろ!!、そして命ごいをするのだ!!、そうすれば楽に殺してやる...ふぉ、ふぉ、ふぉ、【亜空切断】ふぉ?」
教会の中から声が聞こえ、ファイヤードラゴンは空間ごと真っ二つになりそのあとの空間の揺り戻しによってドラゴンは見るも無残な姿に切り裂かれた。
「なんかでっかい蜥蜴が飛んでいたな」
「そうね、もう驚かないわ」
カールはミラの手を引きながら教会から出てくる。
「あっいた!!、おいキース...お前の企みは全て終わりだ。観念してお縄につけ」
「ふっ、ふざけんなクソガキ!!」
キースは怒って立ち上がりカールに近く。
「貴様のせいで私の...私の人生の全てがパアッだ!!。楽に死ねると思うなよこの野郎!!」
キースが残り二メートルまで近いた時、キースの動きがゆっくりとなり止まる。
「なっ...うげない...貴様...何をした...」
「キース、テメェの体の時間を止めた。頭だけはゆっくり流しているけどね、さぁ~てコイツを拘束するか」
カールがキースに近づき村人から渡してもらったロープで縛ろうとしたとき、空に帝国軍の音楽と共に沢山のドラゴンが現れた。
「ふぉ、ふぉ、ふぉ、ワタシのカチだテイコクグンにはシリアイがいる、キサマのマケダ!!」
ドラゴンの一匹が近くに降りると階級の高い兵士と思われる人が歩いて近いてきた。
「あなたがキース辺境伯ですね」
聞き覚えのある声にカールの頭に?マークがつく。
「ソウダ、ワタシダ、このモノをトラエロ!!」
「よーしみんな、ドラゴンを降ろしてキース辺境伯の一味を捕らえろ!!」
「「「「了解!!」」」」
三十は優に越える数のドラゴンが次々に空き地に着陸しキースの一味を捕らえていく。
てっきりキースの援軍だと思っていた帝国軍がまさかの村人側についた事に村人やミラは驚き「なんでなんで?」とキョロキョロしている。
「久しぶりだなカール」
「はい、お久しぶりです父さん!!」
ケインは顔を隠していたヘルメットをとり、息子に微笑みかける。
「あ、あなたはもしや、帝国軍の大将のひとりケイン・フォン・シールド様ですか?」
「そうだ、私が帝国軍大将のひとり、ケイン・フォン・シールドだ」
村の長老らしき人がケインに近づき膝まずく。
「この度は村の窮地を救って頂き誠にありがとうごさいます」
長老が深く頭を下げると村人たちも続いて頭を下げた。
「いや、礼には及ばない、元は我々がキースの悪事を見逃したために起こった事、謝らなけれならないのは私達の方だ。
本当にすまなかった」
帝国軍のトップに位置ずくケイン大将が頭を下げた事に長老達は驚きなぜかお互いに頭を、下げる光景が続く。
「所でケイン大将殿、どうして帝国軍顔役でもあるあなたがこんな田舎に?」
村人の誰もが思った疑問を長老の後ろに控えていた青年が言った。
「それはな...」
ケインはカールを引き寄せて言った。
「この村のミラちゃんにうちの息子が惚れているからだよ」
「「「「エエエェェェ!!!!ケイン大将の息子!!!!」」」」
村人達今まで以上に驚き万歳のポーズなる。
「クソ親父がよけいなことを」
カールは小さな声で呟くと聞こえていたのかケインはカールの頭に拳骨を落とした。
「痛ッテェ...」
カールは思わず両手で頭を抑えケインを恨むように見る。
「今、お前は後悔しているか?」
ケインの言葉にカールは即答する。
「してない!!」
「ならいい」
ケインはカールから離れて家族と久々の再会を果たしていたミラに近づくとミラの視線に腰を落として合わせる。
「ケイン大将様?」
「ミラちゃん、これからもうちのカールと仲良くしてね」
「はっ、はい...」
ミラは緊張しながらも答えるとケインは満足したのかもう一言言う。
「良ければカールのお嫁さんにならない?」
「クソ親父!!なってこと言うんだバカ野郎!!」
とんでも発言をした父親にカールはドロップキックをするが華麗に避けられカールは父親と鬼ごっこする。
「な~に照れてるのカール」
「うるせぇクソ親父!!、プロポーズは俺からしたかったのに何勝手に奪ってるんだクソ親父!!」
カールの更なる爆弾発言にミラは顔を真っ赤して両手で隠す、するとミラの母親と父親が優しい目線で行ってきなさいと言いミラは父親を追いかけているカールに飛び付く。
「うわっ!!」
「私をお嫁さんにしてください」
まぶしいばかりのミラの笑顔にカールは覚悟を決めて言う。
「僕のお嫁さんになって下さいミラさん」
「よろしくお願いいたします、カール」
「こちらこそよろしくお願いいたします、ミラ」
こうして悪魔と取引をして異世界に転生した山田武司はカール・フォン・シールドとして生き、美少女のミラ・アル・フォードと幸せに暮らしましたとさ。
エピローグ
リーフ村での出来事がドラゴンの最速便によって帝国中に伝わった頃、テレシアは校長室にいるゼノス校長に会いに来ていた。
「リーフ村の出来事は無事に終わったそうですねゼノス校長」
「なんのようじゃテレシア様」
「今回はずいぶんと息子のために働いてくれたそうですね、母親としてお礼を言いに来ました。ありがとございます」
テレシアはゼノス校長に頭を下げる。
「なに、妻の一族を救うついでに手伝ってやっただけじゃ!!」
「本当にゼノス校長はあのときのゼノス先生のままなのですね」
かつてテレシアが他国の王に嫁ぐ事となった時、どうする事も出来なかったケインに皇帝に認めてもらうほど強くなればいいとそそのかし、他国の王とテレシアの顔見せの時に城に乗り込ませて皇帝に「自分が帝国の大将になったらテレシアを嫁に下さい」と言わせた犯人でもある。なのでテレシアはカールの事でもゼノス校長が何か言ったのではないかと考えテレシアは再びお礼を言った。
「本当にありがとうございました」
テレシアが去ったあと校長は自身身に届いた手紙を開く。
「また無理をなさったのですね、あとで話し合いましょうそれと、私の故郷のためにありがとう」
ゼノスは妻からの手紙を読んで微笑むと机の中にしまった。
「カールお前はまだまだ若い、最も強くなり大切な人たちを幸せにしてやりなさい」
ゼノス校長は、すっかり日の沈んだ空を窓越しに眺めて言った。
ここまで読んで下さりありがとうございました。
今の自分で書ける全てを出しきった作品ですので、たまにでいいのでこんな話を書いていたバカがいたと思い出してくれたら幸いです。