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バンゴールの街

 エテルナに胸を貸してもらってからある程度の時間が経過し、涙も収まったので、俺とエテルナは再び街に向かって歩き出した。


 泣いているところを見られた恥ずかしい気持ちもあり、先程から会話もなく進んでいる。


 この何とも言えない空気を変えるため話題を考えてはいるが、思考は空回りするばかりで未だに口は動かせていない。エテルナに目を向けると、彼女は沈黙など気にしてない様子で歩いており、この会話のない時間も楽しんでいるように見える。すると、エテルナが何かを見つけたのか、前の方を指さした。


「クルトさん! 見てください。こちらに歩いてきている人、冒険者ですよ」

 エテルナの指の先を見ると、1人の男性がこちらに向かって歩いている。


 男性は麻でできた動きやすそうな服に短めのマントを羽織っており、腰には剣を一本下げている。

「彼の右の手首についている腕輪が見えますか? あの腕輪が冒険者の証なんですよ。冒険者試験に合格するとギルドから支給され、晴れて冒険者として活躍することができるのです」

 男性の右手には、装飾のされていないブロンズ色をしたシンプルな腕輪がつけられていた。

「あれが冒険者の証なのか。偽物を作れそうな感じもするな」

「最初に出てくる意見が偽物を作れそうってクルトさん……まぁいいです。あの腕輪には魔法が錬られていて、腕輪を所持している冒険者の強さや活動履歴などが記録されます。とても高度な魔法なので、偽物を作るのは、おいそれとはできないでしょう」


 すれ違い様にエテルナが男性の冒険者に挨拶をすると、男性はエテルナに挨拶を返した後、となりを歩いていた俺に気づき、舌打ちをしてそのまま俺たちが元いた方向に歩いて行った。


 気持ちはわかる、エテルナのような可愛い女の子と一緒に歩いている男がいたら(ねた)ましくなる。

 エテルナは男性冒険者が舌打ちをした理由がわからないと主張するように首を(かし)げる。


 石垣に囲まれた街、バンゴール。その石垣で囲まれた街には東西南北に門があり、俺たちは東門にたどり着いた。青銅でできた鎧を身に着けた40代くらいの男性が簡易的な椅子に腰をかけており、その手には槍が握られている。


「こんにちは、門の警備、お疲れ様です」

「おかえり、エテルナちゃん! 街周辺はモンスターも出ないし治安もいい、ほとんどこうやって座っているだけだからそんなに疲れていないさ、まぁ俺が座っているのがこの街の平和の象徴さ。ところでそっちの坊主は誰だい? 初めて見る顔だな」

 門番の人は俺の方を見ながら、エテルナに訊ねた。エテルナは横に一歩動き、手で俺に挨拶をするよう促す。

「えっと、鈴木来人といいます」

「スズキクルト……うん、クルトの坊主だな! 覚えておこう! 俺はこのバンゴールの街で東門の警備をしているイーストってもんだ! その名前といい、エテルナちゃんが連れてきたってことは二ホンジンってやつか?」


 エテルナは質問に頷くと、イーストに別れを告げて街の中へと向かう。どうやら日本人という認識はある程度広まっているようだ。俺はイーストに軽く頭を下げ、エテルナの後を追った。


 バンゴールの街は、十字を切るように東西南北に石畳の大きな道が敷かれており、その道が街の主要な道であり、たくさんの人や荷物を走る馬車が行きかっていた。建物はヨーロッパ風の建築物が多く、統一された街並みが美しい。


 俺たちが現在いる東エリアは商業が盛んで通りの端には屋台が並んでおり、路地の方に目を向けると露天商がアクセサリーなどの小物を売っている。その東エリアを抜けた街の中央にバンゴールのギルドがあるらしい。


「なぁエテルナ、今更なんだけど、どうしてこの世界の文字が読めるんだ。それにさっきのイーストさんもだし、ここの人が話しているのって日本語だよな?」

 街を見ながら看板の文字が理解できた疑問をエテルナに質問してみた。

「それは魔法の力です。この世界の文字を見ると頭の中で日本語に変換される魔法を使いました。この国の言語は日本語ではなく、魔法の力が働いてクルトさんが話した日本語はこの世界の言葉に変換されてますし、この世界の言葉をクルトさんが聞くと日本語に変換されるようになっています」

「その魔法ってめちゃくちゃ怖いんだけど、この世界には脳をいじくるような魔法も存在するってこと?」

「この魔法は神魔法で人の世界には使用できる者は存在しません。そのため神の奇跡と呼ばれています。人が使える魔法で似ているものでしたら、睡眠を促す魔法や短時間のみの洗脳ができる魔法くらいですね。それでも十分脅威ですが、神魔法のように永続的に、根本から人格や知識を変化させる魔法は神魔法以外には存在しません」

 だから安心してくださいと言うエテルナだが、その神魔法を使えるエテルナに少し恐怖を覚えた。

 まぁ、エテルナの人柄は短い間だが信頼している。なので無駄な心配はしないことにしよう。


 そんなことを考えているとエテルナの足が止まる。

 そこには他の建物に比べ、ひときわ大きな建物があった。


「ここがバンゴールのギルドです」


 エテルナがギルドへの到着を告げる。

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