2話
旅立ちの日にふさわしく雲一つない青空と微風のなか、
少年と少女が歩いている
「おいセーラ、どこに行く気だよ」
その言葉の通り少女は迷うことなくズンズンと歩いている
少女は幼い雰囲気を残しながらも整った顔立ちでピンク色の髪を
肩まで伸ばし、意思の強そうな瞳をもっていた
少年は銀髪で幼いながらも整った顔立ちだが、ややつり目がちな事で
猫のような雰囲気を感じさせる
二人の頭には特徴的な角や耳がない。さきほどまでとは違って
薄汚れた服を着て、村の子供といった雰囲気だ
これは人化の魔術で隠しているためだ
この魔術は地下都市の子供たちが必ず覚えさせられるもので
二人は地上に出る前から発動していた
「私に任せておけば大丈夫よ。この日のためにしっかり
準備してきたんだから」
「で、結局どこに向かってんだよ」
「街よ」
「嫌だよ。暴れることしか考えてないバカ悪魔の所なんて」
「何言ってんのよ。人間の街に決まってるでしょう」
「は?人間の街になんて入ったらあっさり殺されるに決まってん
じゃん」
人間と魔族とは完全な敵対関係にあり日々血で血を洗う争いが
繰り広げられているのだ
少年の言葉に足を止めた少女は振り返ると自信満々の笑顔で
相手の目を見据えた
「私に任せておけば大丈夫って言ったでしょ。なんたって私は
この日のためにLv10の偽装を習得してきたんだから!」
偽装とは魔術の一種であり、鑑定に対抗することができる
鑑定を使用するとあらゆるものの情報を得られる
そのため街に入る際には名前や犯罪歴などを確認し
ふさわしくないものは入ることすらできないように
なっている
ちなみにLv10の鑑定や偽装を所持している人間は世界に
10指に満たないといわれている
ウサギ少女それを僅か数年で習得したのだ
「10ってお前そんなんどうやって習得したんだよ」
「教えてもらったのよ。マリーゴールドさんに」
「あの魔女のばあさんか、よく教えてくれたな気難しいんだろあの
ばあさん」
「そんなことないわよとっても仲良しなんだから」
(こいつ誰とでもなかよくなるな。俺なんか友達って言ったら
・・・まあいいや)
「でもなんで人間の街に行くんだよ。欲しいもんでもあんのか?」
「住むにきまってるでしょ」
「住むっておまえ無茶苦茶だな」
「あんたもそのほうがいいんじゃないの?」
「なんでだよ。いつばれるか分かんないのに。それよりもどっかの
森とか洞窟とかに住んだほうが」
「だって人間の街にはふっかふかのベッドとか美味しい料理とか
おもしろいものがいっぱいあるのよ」
「ふかふかベッドと美味しい料理・・・・」
「そうよ。森に住んだら雨の度にびしょ濡れになって、土の上で
寝ることになるし、いつ誰に襲われるかわからないのよ?」
「うーん、確かにそれは嫌だなぁ」
(地下都市にはベッドがあったからいいけど外の悪魔のやつら
なんか土の上で寝てるにきまってるしな。あいつら戦うこと
しか興味ないバカだし。)
「そうそう、ふかふかベッドでお気に入りの魔道具使ってお菓子
でも食べながら一日中のんびりできるのよ」
少年はその光景を思い浮かべると少女の考えがとても素晴らしい
ものであると思った
少年は普通の悪魔とは違い無駄な争いや、他者を屈服させる
ことにあまり興味がない変わり者の悪魔だった
彼はのんびりと日々を過ごすことに幸せを感じるのであった
そして少女は彼のそんな思いを完全に理解していたのであった
「いい・・・・いいな!それ!さすがセーラお前よくわかってんな
よし!そうと決まれば人間の街に行くぞ!」
さっきまでとは打って変わって俄然やる気になった少年の背中を
見つめながらウサギ少女はニヤリと笑った
(計算通り・・・ふふふ・・・)
こうして二人は人間の街に向かっていった
この先どうなることかは神のみぞ知る
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補足
スキルはLv3で一人前 Lv6で達人レベルです
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