青色の花
彼女は、美しい。
容姿は勿論だが、それだけじゃない。背筋はスっと伸び、「立てば芍薬、座れば牡丹。歩く姿は百合の花」とは、正に彼女のための言葉じゃないだろうか。彼女の指は、先の先まで動きが洗練されていて、彼女が一つ呼吸をする度に、周りの空気が色めき、華やかに、艶やかに。そして、いやらしくなる。
そんな彼女は、いつも好んで青色の下着を着る。花の刺繍がされ、細かいレースに縁取られた、青色の下着。服は特段、青色を好む訳でも無いのに、下着だけはいつも青色だ。
俺は、素肌で布団の柔らかさを感じながら、彼女が青を纏う姿を眺める。
「__えっち」
視線に気づいた彼女は、悪戯に微笑みかける。俺はそれに見蕩れながら、いつもの台詞を投げかける。
「ブラ、合ってないんじゃねェの」
青の花は、彼女のたわわな胸を覆うには、少し小さい。いつもそうだ。だから、いつも俺は言う。そして、彼女もいつも同じ答えを返す。
「ううん、これが丁度いい」
そう言って、目を伏せ、何か大切な儀式でもするように、ホックをかける。胸に手を当て、ゆっくりとカップの中に、全てを収める。小さなそれは、やはり受け止めきれず、漏れ出したものが不格好にも、ブラの淵に乗っかる。それが、彼女の艶やかさを、逆に際立たせる。
「……」
事後だということを忘れるくらい、いつもと変わらない洗練された動き。
昨夜、俺の下で密やかに喘ぎ続けていた面影は、どこにも残ってはいない。俺が舐めて、噛んで、含めたあの桃色の飾りは、青色の花の下へと隠れてしまった。
そんなことをつらつら考えていると、顔面にタオルを投げつけられる。
「ほら、さっさとシャワー浴びてきなよ。いつまでも裸じゃ、変態みたい」
「お前だって、昨日はなんも着てなかったろ」
言いながら立ち上がり、シャワールームへと向かう。彼女はクスクス笑ったまま。
浴室に入る前にそっと、ドアから彼女を覗き見る。
香水を首元にかけながら、泣きそうな顔で微笑む彼女は、視線を青色の花へ落とす。何を考えてるかなんて、想像したくもない。
__俺は、あの花になりたい。