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第七話

 火曜日。

 僕はどうすればいいのか分からないままに登校した。

 席について本を読むも、全く別の事を考えているので、内容が全く入って来ない。


 「おーい春希。お前調子悪いのか?」

 「うんうん。今日様子おかしいよ」

 「大丈夫なの?」


 巧真、実里、由梨が心配してくれるが、僕の悩みは尽きない。

 ――巧真と伶太の、どちらが『正義を助ける者』でどちらが『正義を殺す者』なのだろう。

 多分僕は、どっちがどっちでも納得できない。巧真は親友だし、伶太は小学校が同じだった。

 だから僕は項垂れ、溜息を吐くしかなかった。



 ***



 「……ただいまー」

 「おかえり。どうしたの、そんなに落ち込んじゃって」

 

 帰ってすぐに、お母さんが僕の様子に気が付いた。

 僕は、訳を話した。

 結局、僕は納得できなかったこと。

 どっちが『正義を助ける者』で、僕等が味方すべき人なのか分からないこと。


 「ああ、確かにそうね。実際に宿命の二人がどんな人かって事も知らなきゃいけないし、『正義を殺す』方は自分のその悪い所を隠しているかもしれないから。確かにいきなり言われても困るわよね」


 納得してくれたので、少し嬉しかった。


 「うーん、じゃあお祖父ちゃんに連絡しなきゃね」

 「あれ、まだしてなかったの?」

 「昨日、夜遅くまで掛かったでしょう。だからあんまり遅くに連絡しても迷惑だし。それに春希が連絡した方が良いかもしれないから」

 「じゃあ、僕から連絡するよ」


 僕が腰をあげて電話に向かおうとしたとき、


 「その心配は無い」


 と、土曜日に聞いたばかりの、そしてここには普段いない筈の人の声が聞こえた。


 「お、お祖父ちゃん!? 何で此処にいるの!?」

 「魔法に決まっておる」

 「いやそうじゃなくて! 何で来たの!?」

 「宿命の二人が分かったのだろう? だから来た」

 「何で知ってるの」

 「何で、何で、とさっきからそればっかりだなあ。魔法で見ていたに決まっておる! 早く、報告、連絡、相談の『報連相』をしろ。会社の鉄則だろ」

 「……何でそんなこと知ってんの。あと、ここは会社じゃないから」


 腕を組んで上から目線のお祖父ちゃんに若干呆れながら、僕はお母さんに話した事を、宿命の二人の説明も加えて、話した。

 そして話が終わったお祖父ちゃんは開口一番、


 「まあ、お前の感情など一連の出来事からするとそんなに大したことではないから置いておこう」


 と問題発言をした。

 

 「確かにその通りだけど! でも……」

 「分かっておる。感情は大切なものだ。ただ、何処に重点を置くかで優先順位は変わってくるんだ。今大切なのは、わし等がどちらに味方をし、どちらと敵対しなければならないのか、見極めなければいけない、という事だ。お前の感情は、それが分かってから思う存分悩めばいい。今は、後回しだ」

 「……分かった……」

 

 憮然として、僕は言った。納得していないのに。

 自分の気持ちが後回しにされるのだ。嫌な気分になるのは仕方が無いじゃないか。

 そんな僕の気持ちを知ってか知らずしてか、


 「ごめんな。少しだけ、待っていてくれ」


 お祖父ちゃんは僕の頭を撫でた。



 ***



 「あ、お祖父ちゃん! 久しぶり~!」

 「おお、春花! 祖母ちゃんに似てますます美人になって来ておるな~」


 この前僕に言ったのと同じような冗談を叩き、春花との再会を喜ぶお祖父ちゃん。

 因みに、何故今まで春花が出て来なかったのかというと、自分の部屋で漫画を読んでいたからだ。


 「お兄ちゃん、おかえり! どっちがどっちだか分かった~?」

 「分からないから、お祖父ちゃんが今此処にいるんだよ」

 「ふ~ん?」


 よく分かっていないようだったので説明しようとしたが、お祖父ちゃんが話を進めてしまった。


 「取り敢えず、彼等の性格を見極めなければいけない。わしも協力するが、基本は春希、お前一人でやるんだ」

 「分かった」


 さっき発した物と同じ言葉を僕は言った。だが、さっきとは違い、この言葉に嘘偽りは無い。

 そんな僕の、真っ直ぐな眼差しを見て、お祖父ちゃんはやがて大きく頷いた。そして、自分の仕事は終わった! とばかりに

 

 「よし、じゃあもう帰るか!」


 と言った。


 「え~、もう帰っちゃうの? 折角久しぶりに会ったのに!」


 春花が不満の声を挙げる。


 「そうよ。夕飯、食べて行ってよ」


 お母さんも春花に賛成する。僕も、同じ気持ちだ。


 「済まんな。だが祖母ちゃんに早く帰ってこいって言われているのよ。怒ると怖いからな、今日はもう帰らなければいかん」

 「……それは、怖いわね。ごめんね、引き留めちゃって」

 「そんなー」

 「まあまあ、そんな顔するな。またすぐに会いに来るから。それじゃあな」


 そう言って、お祖父ちゃんはその場から姿を消した。

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