第十七話
成功が確認できたその後。
僕等はその場で別れ、伶太は祖父母の家に、他は各々の家に(勿論魔法で)戻った。
伶太が僕達に嘘を吐き、まだ殺人を行おうとしていたのではないかという疑いこそあったが、魔法で確認してみてもその素振りは無かった。
え、そんなことはどうでもいい? それより呪文はどういう意味か教えろ? 伶太にはどんな魔法を掛けたんだと?
まあまあ、落ち着いて下さい。順番に説明します。
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まず、魔法の呪文は、使う人によって変わる。
そして呪文に使う言葉は、その人を表す『キーワード』だ。
分かりにくいと思うので、例を挙げます。
僕は、悩み。秘密のせいで孤独だったから。
巧真は、好きな物と自分を変えた物。本と魔法。
他にも、職業や人からよく言われる評価、綽名が呪文になる事もある。
そうそう、何故外国語なのかというと、普段から使う言葉の場合は不便だからだ。
例えば巧真の場合『本を読みたいな、魔法で出そうか』と思うだけでその場に本が出現してしまう事があるから、普段から使わない、しかしその言葉を表す外国語を使うのだ。
因みに、巧真の『livre&Magie』は、フランス語。『livre』は『リーヴル』、『magie』は『マジ』と読む(発音に違いはあれど)。何故英語ではないのか。本は『book』、魔法は『magic』。ほら、よく使う言葉でしょう?
***
では次は、伶太に掛けた魔法の種明かし。
僕等は、人の考えや思いを操る事は、不可能だと思っていた。実際、魔法では出来なかったし。
しかし、いつの世も人間は「自然の法則」に、大きく逆らう。
その中にあるのが――。
洗脳と、マインドコントロール。
犯罪の(キャベツの芯の)臭いがぷんぷんする。
僕達は、正当且つ直接、伶太を止めなければならないと、無条件に思っていたので、『人の考えや思いを直接操る事は出来ない』を、『人の考えや思いは変えられない』と勘違いしていたのだ。
でも、人間は、魔法を使わないでそんな事をしてのけたのだ。
だから、『直接』ではなく、『間接的に』若しくは『その効果を』望めば、人の考えや思いを変える事は可能かもしれない。と、お祖父ちゃんはそう考えたのだ。
そんな芸当は今まで誰もやった事がないはずだし、そもそも自然の法則から外れているのだから、魔法は掛からないかもしれない。けれど、やるしかない。
結果は、知っての通り、成功だった。
***
さて、次はその後の僕等について話そう。
由梨や実里とも相変わらず仲が良いし、伶太も相変わらずだが、笑顔が増えたようだ。
魔法に関しては、伶太に、堅く堅く口止めした。他の人に教える事が無いように。巧真にも、勿論口止めをした。
変わった事は、特に無い。
僕と巧真が命の危機に瀕したなんてことは、夢の様に色褪せてしまいそうな程、日常的な日常だ。
――――こうして僕等は、ひとときの非日常を終えた。
完結しました。
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