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第一話

 初めてのファンタジーメインのお話です。

 流石に異世界物は難しそうだったので、ローファンタジーにしました。楽しんで頂ければ幸いです。

 ジリリリリリリリリリリ!

 頭の中に、目覚まし時計の音が響く。

 僕はベッドから起き上がり、自分のつむじをポンと抑え、その音を止める。

 「ふあー……」

 まだ眠さを主張して閉じようともがく目を擦り、欠伸をしながら階下にあるダイニングに行く。

 「おはよう」

 既に起きていた両親と挨拶し、白米と味噌汁の朝ご飯を食べ、歯を磨き、顔を洗う。

 そして、真新しい、今日から通う中学校の制服に袖を通す。



 ***



 えー、いきなり意味がなさそうな文から始めてしまって、スミマセン。この状況を説明させていただきます。

 今読者の皆さんに話しかけている僕は、この物語の主人公(らしい。主観なのでよく分からない)。

 名前は、永園春希。

 先ほどの文から察してもらえるとは思うが、今年の四月から中学生になった。これから入学式だ。

 え、なんだって?

 頭に響く目覚ましの音はどうしたって?

 ああ、忘れてた。

 実は僕、というより僕の一族は、意思や想像を現実に起こす方法を知っている。

 ――端的に言うと、巷で言う所の魔法使いとか超能力者だという事。

 と言っても、魔法を使う為の呪文を知っているだけだけれど。

 魔法を発動させるには意思と想像力と呪文が必要とされる。魔法は呪文を知れば誰でも使えるのだが、周りに言ってはいけない決まりなのだ。魔力だとかいうものは無い。

 だから現代には、魔法使いは僕等永園家の人間しかいない。その他の自称魔法使いとか自称超能力者とかは全部詐称だ。

 頭の中に響く目覚ましの音は、寝る前に『何時何分にセットした目覚まし時計が頭の中にある』とイメージして、呪文を念じれば良い。

 では、本文に戻ります。



 ***



 全ての支度が終わり、まだ春休みの妹を残し、両親と共に家を出る。

 やがて、校門が見えてくる。

 

 『相沢高等学校付属中学校』

 

 銘板にはそう書かれている。

 ――これからここに通うんだ。

 そんな何とも言えない感慨を覚える。

 人の流れに乗り、昇降口へ。その脇にはクラス分けの紙が貼られていて、ワイワイガヤガヤ人が集まっている。

 僕は背が高く、視力も良いので、人垣の後ろからでも紙の内容が読める。

 えっと、僕のクラスは……。

 一年一組だ。

 出席番号を確認し、下駄箱に靴を置き、上履きに履き替える。

 教室へ行き、ドアに貼られた席順を見て、そこに座り、鞄から出した本を読み始める。

 本当は人と話したいのだが、何時魔法の事をばらすことになりかねないか分からないので、人とはあまり関わらない様にしなければならない。

 そんな訳で、真剣な顔で本の活字を睨む。もともと本や漫画など物語が好きなので、苦行ではない。

 それなのに。


 「春希?」


 声を掛けられた。

 顔を上げると、そこには小学校が同じだった赤居伶太がいた。


 「伶太。久しぶり……? なのか?」

 「微妙だよな。まあいいや。そういやお前も相沢付属だったっけなって名前を探したんだ」

 「そうなんだ。何組になった?」

 「三組だ」

 「ふうん」


 会話が途切れた。

 元々そんなに仲良くなかったから、当たり前なのかもしれない。


 「じゃ、俺行くわ」

 「うん。じゃあ」


 伶太は手を挙げ、早々にクラスへ戻って行った。

 僕は読書を再開する。 

 やがて教室には人が満ち、最後に中年の男性が入ってきた。

 「皆さん初めまして。一年一組の担任、大沢勝太です」

 そのあとは何かこれからよろしくだとか良いクラスにだとか色々お決まりの文句が発せられ、そのまま先生の指示に従って入学式。

 入学式は、特に変わった事は無く。大きな問題も無く終わり、教室に戻った。

 そして、教科書が配られる。

 リュックに詰めるが、かなり満杯ではち切れそうだ。でも置き勉は許されるそうだ。かなり助かる。

 ホームルームも終わり、リュックを背負い、席を立つ。

 が。


 「あの、ちょっと良いですか?」


 と声を掛けられた。

 声の主は、隣の席の小柄な女子。名前は、えっと……。


 「あ、わたし、速見実里(はやみみのり)です」

 「速見さん。宜しく。僕は永園春希」

 「あ、よろしく。あの、お願いがあるんですけど、朝読書にお薦めの本ってありませんか?」


 この学校には、朝読書という習慣がある。ホームルームの前に十五分、読書をする事になっているのだ。

 面倒な習慣だ。そんな風に無理矢理本を読まされたら、進んで読書をしようという気になる奴なんて、殆どいないに決まっている。本を読ませたいのならば逆効果だし、読書はあまり成績に関係して来ない。強いて言うなら漢字と言葉に強くなる位だが、その程度ではテストの点は少ししか稼げない。

 全く以って考え無しだ。

 でも、本を読む口実になるので、時間自体は好きだ。単純に、強制しても意味がないだけである。

 脱線が長くなってしまったが、本文に戻ろう。


 「朝読書も何も、読書に朝とかはあんまり関係ないと思うけど。でも、本をお薦めしろと言われたら、そんな本沢山あるし……。うーん……映画やアニメのノベライズ版とか、ラノベとかはどうかな? 読みやすいんじゃない? ラノベはフォントや字の大きさが変わったり、挿絵もあったりするから眺めるだけでも良いし。シリーズものが多いから他に読む本を考えなくても良いし」

 「なるほど! ありがとう! 助かった~。わたし、本苦手なんだよね……。それなら読みやすそう。あの、ラノベのなかでもどんなものがお薦め?」

 「そうだね……」


 幾つか、読んだ中で面白いなと思ったものを挙げる。

 

 「ありがとう! これでしばらくは悩まなくて済みそう」

 「良かった。それじゃ、僕はこれで」

 「うん。また明日ね!」

 「うん」


 手を振る速見さんに僕も手を振り返し、家に帰った。

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