迷子
近頃、よく迷子になる夢を見る。
僕はどこか遠い国に旅行にきていて、ぼろぼろになった観光案内のような地図を持って空港を目指しているのだ。
その日は滞在できる最終日で、僕は焦っている。
見覚えのない道を歩いていく。
途中で立ち寄るのは、喫茶店やゲームセンター、映画館、誰かの家。
懐かしい友人や同級生にあう。
僕はでも、焦っているので空港までの道を尋ねるのだ。
「ああ。それならいったん大通りにでないと駄目だな。その道を行って、大通りにでたら右へまっすぐだ」
同級生は、僕のボロボロの観光案内地図に印をつけて教えてくれる。
言われたとおりに行くと、大通りに出た。そのまま右に曲がってまっすぐ進む。
足がもつれて交差点が上手く渡れない。車のクラクションが鳴り響く。右足。右足が。
さらに歩いて行くと見覚えのある―― 夢の中の僕には見覚えがあるらしい―― 商店街へ出た。
装飾品を売っている店をのぞく。赤い店主が笑っている。
「これ、高いですよね」
銀色の楕円形を手にとって僕が聞くと、店主は不機嫌そうにそれを手にとって袋に詰め込んでくれた。
さらに歩く。
ここまで来れば、もう大丈夫。あとは道なりに進めば空港へたどり着けるはずだ。
懐かしい友人と、またすれ違った。
「今日、帰るんだ」
僕が言うと、友人は嘘をつくなと笑いだす。僕も笑って、じゃあなと言って歩き出だす。
友人と別れてひたすら走る。
空港を目指して。
予約はとっていないけれど、飛行機には乗れることになっている。
それでも、焦る。
不安がつのる。
早く帰りたいと僕は思っている。
でも、運悪く間に合わなかったら、どこかのユースに泊まらければとも考えている。
大きな交差点。顔の見えない人たち。
僕は必死に走って渡ろうとするのだけど、足がもつれてうまく進めなくて。
ベッドの上でぼんやり天井を見つめながら、今回も空港へたどり着けなかったなと、ため息をつく。
了