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第六十七話 逆転

「…その魔法…回復魔法ですか…!?」

「ああ…その通りだが?」


ヨルの魔法に対してエンは驚いている様子だ。


「回復魔法…?」

「なんで?普通にあるんじゃないの?」


シオリの言葉を聞いて、僕は疑問を口にした。


「…昔話ではよく聞いたけれど…今は全然聞かないわ」

「そうなんだ…」


…考えてみれば誰でも人を回復させる魔法が使えたら色々とまずいか。

使えるとしてもごく少数の人ということかも知れない。


「…ほっほほ…回復魔法は絶滅したと思ってましたが…」

「初耳だね。そんなもの、誰にでも扱えるよ」

「…まぁ…不安の種は潰しておきましょう!」


そう言ってエンは炎の鳥と化し、大きく息を吸い込んだ。


「…全てを反射する盾…大地より生まれん…我が声に応え具現せよ!」


ヨルは指をパチンと鳴らす。


反射盾リフレクトシールド!」


ブレスが放たれたと同時に透明度の高い壁らしきものが、ヨルの目の前にはい出てきた。

その盾はブレスを防ぐと、光りだし盾自身からブレスが発射される。


「っく…」


エンがその炎を浴びると若干苦しそうな表情を浮かべた。


「すごい…」


チカが感嘆の言葉を述べる。


「…激しき水流…敵を襲え!激流トレント!」


光の壁が消え、変わりにヨルの目の前から水が大量にエンを襲った。


「ぐぅぅぅ…!!」


体が炎のようなものだからだろうか…

酷く苦しんでいる様子だ。


「…ほぉっ!」


エンが我慢できず上空へと舞い上がる。


「…さて、まだやるのかい?」


ヨルは余裕の表情だ。

顔は見えないんだけれどさ


「…やめておきましょうかね…思い出しましたよ…私の主…国王ではありませんよ?その人が教えて下さいました。黒ローブとは一戦も交えてはならないと…」

「へぇ…それはまたなんで?」

「ほっほほ!分かりませんが、本当に危険な人物というのはお分かりになりましたよ…」


そう言いつつ、エンは空を舞っている。


「では…私はこれで」

「ま…まて!エンッ!お前は!」


さっきまで俯いていた国王が口を開いた。


「国王…貴方は愚かですねぇ…裏切った人物を未だ仲間…とでも思っておられるのでしょう…しかしこれが現実…夢ではないことをお忘れなく…」


そう言ってエンは詠唱を始めた。

ヨルも同時に唱える。


「…我の望むままの場所へ…運べッ!」

「…魔力を断ち、妨害せよ!」


二人の言葉が同時に放たれる。


瞬間移動テレポーテイション!」

魔法阻害スペルジャミング!」


一瞬だった…

エンの姿が炎に包まれ、文字どおり消えてしまった…


「…うむ…遅かったか」


ヨルが残念そうに言っている。


「……我は…取り返しのつかないことをしていたのだろうな…」


王様が皆に聞こえるような声で話している。


「お兄…」

「王様…」


リリィとチカがしんみりしたように言っている。


「…何が貴族の暮らしだ…国民がいてこその国だろうが…国民が働かなくなったのは誰のせいだ…?国が死んでいったのは誰のせいだ…!」


歯を食いしばって王様がこう怒鳴った。


「全て…我の落ち度ではなかったかっ!!」


王様が拳を握りしめている。

その手からは血が滲み出ている…


「エンのせいではない!これは…我が国民の事を知らなすぎたんだ!!何をすればよいかなどこれでは分かるハズもないであろう!!!」


城の床に拳を思い切り叩きつけた。

床にはサッカーボール台のクレーターができ、その周りに亀裂が入る。


「…そういえばヨルさん…内戦のほうはどうなっていましたか?」


王様の姿を見ながら小声でヨルに聞く。


「…国民は城の中に入ってこの場面を見ているが?」


そう聞いて、辺りを見回す。

…なんかギャラリーみたいに人が集まっていた…

どんだけいるの!?

そのギャラリーらはただ静かに王様の様子を見つめている。


「…お兄…確かに…お兄の…政治…駄目見えた…」

「…」

「でも…私…影で…ちゃんと国思ってるの…知ってる…」

「それだけで…父の国なんて守れるわけが…」

「…反省だよ…間違えた事をしてしまったなら…」

「国民が許すワケなかろう!!」

「確かに…!…簡単に許される事じゃないかもしれない…だから…罪滅ぼししていくんだよ…!」

「…罪……滅ぼし…?」

「そうすれば…国民も…あなたの事…認めてくれるかもしれませんよ」


周りをもう一度見てみる。

意見も何も言わないなんて…

だけど心なしか人々の表情が柔らかくなったような…


「……ああ…なんでも………なんでもする………………我は………」


…初めて会ったときはこんなこと言う人とは思わなかったけど…人って本当に変わりたいって思うときは変われるものだね……

そう思いながら僕らに向かって土下座をしている王様を見る…

涙を流しながら謝罪している王様を見て、少し勿体ない気分になった…

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