第四十五話 零からの始まり
僕は刀から鞘を抜いた。
『スパイダー』と面向いた後、それに向かって走り出す。
「ぇッ…!?」
言葉ではない声が僕から出た。
「…カハッ…」
何が…起きた…
なんで…『スパイダー』が…こんな近くにいるんだ…?
アキトの目に見えない速さで体当たりをしていた。
「アキッ…!…当たってッ!!」
シオリが放った矢は蜘蛛に当たり…
弾き返される。
「え!?きゃッ!」
今度はシオリに向かって糸が放たれ、拘束されてしまった。
「ね…姉ちゃん…!」
「こんな…ものッ!」
シオリはもがくが、糸はシオリに絡まったままだ。
「ッ…炎よ…焼け!火球!!」
『スパイダー』に向かって火の玉を放った。
命中はしたものの、燃え移るどころか火傷すら見当たらない。
「まじ!?」
こうなると危険でも接近戦に…
でも前の『ミノタウロス』の戦いになってもあれだし…
「兄ちゃん!姉ちゃんが!」
迷っている時にココロに言われてッハっとする。
『スパイダー』がシオリに迫っていた。
「っく!シオッ!」
叫び、駆け出した時、突如蜘蛛の糸が僕に向かって放たれてきた。
避けようと…
したのに…!!
体が動かなかった。
反応出来なかった。
ついにみんなの動きが制限されてしまう。
「っくっそぉ…」
悔しかった…
もっと強くなるって決めたのに…
シオリを護るって…!
その時広間の中心が眩い光に覆われた。
目を開けていられないほどの強さの光…
『スパイダー』の目もくらんでいる。
光が徐々に弱くなっていく…
その中から現れた者は…
「…君…は?」
黒いストレートの髪…
後ろ姿しか見えないが…
「嘘…!アキトが…二人…!?」
シオリの発言に黒髪の少年はニヤっと笑みを浮かべた。
「よく分かったじゃん?そうさ…俺が…」
そう言って、手から黒い炎が作り出されていく…
「一進…明人だッ!」
そう言ったと同時に少年の手に作られた黒い炎が蜘蛛に向かって放たれた。
しかし、蜘蛛はそれを素早く避けていく。
「へぇ…神ってヤツがくれた力か…」
少年はそう言って少し考えると目を瞑る。
「漆黒の力よ…我に力を…!黒炎よ…業火となりて敵を討て…!」
少しの沈黙が続き、蜘蛛が動いた。
と思った瞬間
「灼熱の黒炎ッ!」
声と共に、いきなりゴオォッと凄まじい轟音と共に黒い炎が蜘蛛を包み込み、焼いてゆく。
「なん…で…」
明らかに僕らとは格の違った敵を一瞬で倒してしまった黒髪の少年…
僕はその人物が…
羨ましかった。
「あ、ありがとうございました!」
シオリが丁寧に黒髪の少年に頭を下げた。
「ありがと!兄ちゃん!」
「ありがとーッ!」
ココロ、アイレンという少女も頭を下げる。
「んにゃ…アイツにはムカついたからな…」
そう言って、視線を僕に向けてくる。
「…ぇ?」
驚きだった。
その顔は…
一進 明人…
まぎれもなく僕だった…
「んな顔すんなって…別に仲良くする気なんてサラサラねえよ」
もう一人の僕がそう言ってくる。
「…君は一体…」
「紛れもねえ一進 明人だが…」
「僕も…一進 明人なんだよ…」
そう言うと
「だろうな」
と言ってきた。
「だろうなって…」
そこで沈黙が訪れた。
僕は混乱していて話を切り出すどころではない。
すると、もうひとりの僕が口を開いた。
「…わーったよ…名前がおんなじじゃ、いちいち面倒だよな…うーん…そうだな…」
もうひとりの僕は腕を組んで、少し考え、何かを思いついた様にして
言った。
「俺の名前は…零だ。…でいいか?」
「え、あ…」
僕は戸惑ってしまった。
本当に今の状況が飲み込めない。
「…はぁ…んまそういうことだ。それじゃ、もう用はないか?」
あるに決まっている…
けれど…
うまく言葉にできない…
「じゃあな」
そう言って、もうひとりの僕…
レイは外へと繋がる道へと歩いて行った。
「僕と…おんなじ顔…」
ただ呆然と彼の後ろ姿を見ていた…
「…何やってんの!アキト!同じ容姿でも色々違ったじゃない。」
シオリがフォローを入れてきてくれる。
「…ありがとう…」
僕はお礼を言うしかできなかった。
「兄ちゃん?姉ちゃん?あのさ?」
ココロが僕らに訪ねてきた。
「何?」
シオリがその疑問を聞くと…
「兄ちゃんの事…アキトって…本名なの?」
「「あっ」」
あの出来事ですっかり素に戻ってしまっていたのを
僕らは今頃気づいた。
・
・
・
俺は、アキトらと別れ、すぐに先へ進んだ。
アイツが神に狙われていようが、関係ないからな。
こちらの一進 明人…
もといレイは人と仲良くするのを好まないタイプの人間だった。
なぜ彼があの『スパイダー』という蜘蛛を倒したかというと
彼らを助ける為でなく、以前同じ魔物と対峙し、それに敗北寸前に追い込まれた為、心の中のムカムカした感情が抑えられなかったからだった。
(しかし…黒炎が自由自在に操れるとは…だが…)
以前使ったハズの憤怒の黒炎を使うことが出来なくなっている。
…もしかしたら他の何かが力をセーブしているのかもしれないな…
灼熱の黒炎とは格の違った炎が燃え上がっていたのを覚えている。
そういえば…
以前使った魔法は二つくらいあったか…
…今度試してみるか。
今後の期待を胸に抱き、俺は自由気ままに歩みを進めた。
もしかしたら…この世界にアイツが…
…なんてな
死んだら異世界に逝ってました(笑)の方に零が何者で、なぜこちらに来たのかが乗っているので是非見てくださいね。
そして指摘されたところ
ココロがシオリってことは聞いてなかったねw




