第十五話 安静に
目線リュウ→アキト
「はぁー…」
僕は鬱陶しさに苛立ちを感じる。
さっきまで晴れていたのに、急に暗くなったと思ったら雨が降ってくるという始末。
それでも歩き続けなければならないのは、日が落ちる前に次の村へと着くためである。
日が落ちてからの移動だと、地図も見れないくらい暗いし、そして暗闇からの魔物の奇襲をされてしまう恐れがあるためである。
「なんで雨なんて降るんだ…」
僕はたまらず文句を言う。
「仕方ないわよ…自然な事だから。」
シオリがそよ風村で買ったという弓を握りながら応える。
そう返されるとなにも言えないけど…
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「そういえば…」
「何?」
僕は質問することにした。
「なんで僕の言葉がここの世界の言葉が伝わるの?」
考えてみれば変だ。
普通、異世界というのは言語も違ければ文化やら何やらと違うのではないのか?
「この言葉は、この世界の標準語よ」
「…えっ…な、なんで」
「なんでって…知らないわよ」
冷たく返される。
完璧今のは僕が悪いんだろうけれど…
「ごめん…」
「えっ…あっ…ごめんっ…その…冗談だよ。知らないのは事実だけれど」
「結局知らなかったのかい」
「むぅ…私だってそんなに深くは歴史を知らないわよ」
「分かった。なるべく歴史は本を見て知るよ」
「ごめんね」
「いや…いいよ」
使う物の名称とかも同じなんだ…
そう思いながら僕らは歩みを続けた。
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雨が降り続く中…
やっとの事で村に着く。
着くまでにあった戦闘は何十になるだろう。
おかげで400シルドくらい貯まったけどね。
シオリの貯金で300シルドくらい。
合計で約700かな…
「宿は…何処だろう…?」
「とりあえず…コホッ…奥に行ってみましょ。意外とあるかも」
「そうだね。行こうか」
「…ここが宿か…」
宿はいつもの如く二階建てであった。
扉を開ける。
「いらっしゃいませ。お泊まりでしたら一名様50シルドになります。」
「安っ!」
「お食事はお出し出来ませんからね」
なるほど…あっちの宿は飯つきであの値段だったのか…
僕は100シルドを払う。
「部屋は別々ですか?」
「はい、それでお願いします。」
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「さて…」
結構汚れちゃったかあ…風呂にでも入りたい気分だ…
まぁ、ないから仕方ないんだけれど。
シオリは疲れていたらしいので安静にしておいた。
だから買い物は旅に必要な分だけ買うことにしよう。
僕は部屋を出て道具屋に向かう。
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「いらっしゃい…」
老婆が取り仕切っている道具屋のようだ。
傷薬…世界地図…あとは…そうそう、貯金用の袋だな…
買った物
傷薬 10シルド×10個
世界地図 200シルド
道具袋 200シルド
計500シルド
残金186シルド
結構残ったから…後は夕食かなぁ…
この世界の食べ物といったら何があるかな…
出来るだけ消化に良いもの。
確実にシオリの顔は赤かったし、セキ少し出てたし、ほぼ確実に風邪だろうと思う。
道具屋に特効薬的な何かがあれば良かったんだけれどなかったから、暫くこの村に滞在になっちゃうかなあ…
少し食材を売っている所を探そう
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っとちょっと待とう。
頭冷やしたりとか必要かな。
道具屋出る前に気づいて良かった。
それに今後は水が貴重になるかも。
取り敢えず…
魔法の効果のついていない袋と空の瓶を4本購入。
50シルドで買った。
…食料高いと終わるよなあ…これ
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道具屋の目の前にあった。
探すのに村中歩き回っていたのは内緒だ。
「らっしゃいっ!」
ハイテンションのおじさんがいた。
取り敢えず果物を見よう。
リンゴとかあればいいんだけれど…
ないよね。はい。
それっぽいの探すけれど…
あった…
当に青いリンゴッ!
食感どうだろ…
味もあれだし…
あ
店の人に聞けばいいんじゃ…
「すみません…」
「はい!なんでしょう!」
「その…風邪にいい果物ってなんですか?」
「風邪けぇ?そりゃまたどうして?」
風邪も伝わって良かった…今のところ殆ど伝わっている。
「ちょっと友達が風邪になってまして…」
「っとするとこれけぇ?」
…違う…おっさん…小指立てないで。
「違います」
「そうけぇ…なんかあんさんその人すんげぇ心配しとるからなぁ…っと風邪に効く果物だったか」
「はい」
「…ちいと待ってくれ…」
そう言うとカウンターから出て品物を探す。
「あった…これだこれ」
そう言うと取り出したものは鮮やかな緑色をした苺のようだった。
「コリョってもんだ。一個食ってみ。どんな味か知りてぇだろ」
そう言うとこっちに放り投げた。
危うく落とす所だった…
「頂きます」
口にするとカシュッという音と共に甘く、優しい風味が広がる。
ナニコレ普通に美味しいんだけど
果汁が口いっぱいに広がる。
「凄く美味しいです。これを買おうかな…」
「おう!5個入りで20シルドだ」
「5個入り5つ貰いますね」
そう言って100シルドを出す。
残り36シルド
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「買いすぎかな…」
でも生活や冒険に必要な物だったから仕方ないか…
何か灯りがあれば良かったんだけど…結構な値段の物ばかりしかなかった。
安い松明みたいなの無いかな…
考えているうちに宿へとついた。
シオリの部屋は…ここか。
扉をノックする。
「コホッ…誰…?」
「アキトだよ。ごめん…休んでる時に」
「いいよ…入って…」
そう言われ僕は部屋へと入る。
「うー…頭がボーッとするし…ケホッ…咳は出るし…体は重いし…コホッ…何なのよー…」
「完璧風邪じゃん…」
「明日までに頑張って治すよ…」
「治るわけないでしょ」
「置いていかないでね…コホッ…」
「シオリの症状次第でいつ行くか決めるよ」
「…ごめんなさい」
本当に申し訳なさそうに頭を下げてくる。
「仕方ないよ。っていうか風邪をこじらせたほうが厄介だしコリョって果物食べたら寝ようよ。」
「…そうする。」
僕はこの町の井戸から汲んだ水を瓶の中身に入れてきた。
だから瓶二つとさっき買ったコリョを15個、シオリの部屋に置く。
「水分補給大事だから、こまめにとってよ」
「分かった…ありがとう…」
「あとこれ。袋に水入れたからこれで頭冷やすといいよ」
「…本当…ありがとう…」
「僕はこれからこの村の南にある洞窟に行ってくるよ。お金が不味いし…」
「絶対、ケガしちゃ駄目だよ!…コホッ…」
「了解。また」
「うん…」
僕はシオリの部屋を後にする。
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「リートいる?」
「…ん。久し振りー」
「確かに…それでコリョって果物買ったんだけど食べる?」
「いいの?」
「どうせなら皆で分けて食べようよ」
「ありがとう」
リートは嬉しそうにコリョを頬張っている。
僕も口に放り込み、歩き始める。
目指すは南の洞窟。
少しワクワクしながら僕は進む。