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死んだら…異世界に逝ってました(笑)  作者: まっつー
六章 いるべき場所
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第百四十三話 変なプライド

うわ、投稿時間ミスったw

「どうしてここに!?」


ドラゴンから距離を取ったところで僕は声をあらげてしまう。

だって危険じゃないか!


「お兄ちゃんが帰ってこないから…私…ううん、私たち捜したの!」


私…たち?

周りをみると、僕が牢から出した獣人の皆さんがいる。


「コイツは強敵だが…なんとかなるだろう。」


以前も話したことのある、虎の獣人が僕に向けて言ってくる。


「俺たちが手を貸す。アイツを倒すぞ。」

「な…なんで…」

「村を失う辛さは俺らが何倍も知ってるからさ」


その人はそう言うと、戦闘の体勢に入った。


「僕は……」

「お兄ちゃん…」


迷ってる時にレンリィが小さな声で言ってきた。


「頑張ろ?」


そう言われても…


「行くぞォ!!」

「「「「「おォォ!!」」」」」


一人が声を張り上げ突撃、それに続いて他の人達もドラゴンに襲い掛かった。

僕とレンリィだけが取り残されている…


「お兄ちゃん!!」

「あ…ぅ…」


僕が行ったところで大した役に立てない…

それどころか、あの中に入った瞬間に邪魔になるだけ…

それに…!


「しっかりしてよッ!!」

「…いっ!?」


…叩かれた…

何故…


「あの敵を倒すのにお兄ちゃんが必要なの…!なのに…お兄ちゃんがそれでいいの!?」

「僕なんか…行ったところで…」


ロクに武器も持てず、ロクに戦闘経験もない…

確かに今まで強敵と呼べる強敵は倒してきたけれど…

でも全て武器のおかげだった…

風切の太刀や、貫炎のレイピアのおかげ…

でも今はどちらも使えない…

太刀は奪われ、レイピアを持つと動けない…

唯一の頼みの綱だった白樹刀だって使い物にならなくなってしまった。

だから…僕は何もできない…


「それでも行かなきゃ!」

「武器すら持てない僕にッ!何が出来るんだよッ!!」


怒鳴るつもりもなかった。

ましてや怒るつもりなんて…!

でも声が出た…

出てしまった…


「お兄ちゃん…」

「なんでッ!いつもこんな役回りなんだよッ!いつもいつもいつもいつもッ!僕だけこんな辛い役なんだよッ!たまにはいいでしょ!?僕が…休んだってッ!」


ああ…そうだ…

もう嫌だ…

辛い…

苦しい…

帰りたい…


「なんなんだよッ!武器は盗まれて!武器は壊れて!人を殺したら武器は持てないッ!もう嫌だ!こんな世界来てから身体はいつもボロボロだしッ!」


なんでこんな世界に来たんだよ!

なんでこんな…


「こんな世界来てからッ!シオリ──────!」


『もし…帰れても帰るつもりはないよ』


…なんでこんな事を…

思考がおかしくなってきた…


「…」


なんでレンリィにこんな事言ってるんだ…


「すぅ…はぁ…すぅ…はぁ…」


…はぁ…


「お兄ちゃん…いっぱい辛い事…あったんだね…吐き出して…全部…そうすれば楽になるよ…」


レンリィに言われる…

情けない…

ほんッッとうに情けないッ!


「ううん…大丈夫、当たっちゃってごめんね…」


役回り?

関係ない…

辛い役?

関係ない。

ボロボロ?

関係ない…!


「…全部…自分が決めた事なのに、ぐちぐち言ってるな…ってね」


いつか、リュウが言った言葉だ。

そうだよね…

全部、今まで、自分が決めた事だった。

ネレフさんの件に関しても、不良のことに関しても、テラスガーデンのことに関しても。

自分が拒否をすれば全部無視することも出来た…

それを承諾したのは紛れもない、僕なんだ。


「こんな所でぶっ壊れてる場合じゃない。僕の…変なプライドはどこいったんだよ。」


人を死なせたくない。

その為なら自分がどうなってもいい…

こんな…変なプライド。

異世界に来て所々麻痺してたけれど…

今こそ守ってみせる…!


「ありがとう、レンリィ。」

「ううん…結局、私はお兄ちゃんの役に立てなかったよ…」

「そんなことない!」


僕はレンリィを撫でる。

今は感謝で一杯だ。


「僕に喝を入れてくれて、だからあんな事を吐けたんだ。」


あれだけでも多くの事を吐いた。

きっとストレスを知らないうちに抱え込んでたのかもしれない。


「だから…ありがとう…」

「…うん…さぁ!お兄ちゃん!」

「ああッ!」


精霊術は…

近距離だけじゃない!


リートッ!

僕に使える一番の魔法をッ!


『ん…』


「お兄ちゃん!私は行ってくるね!」

「おうけい!」


そう言うとレンリィはドラゴンに突っ込んでいった。

僕は前に行けない。

行っても邪魔になる。

これは本当だ。

レイピアを持つことは多分出来ないだろうから。

ただし、魔法なら…


『いける…』


『我が…精霊の内なる力よ…』

「我が内におわす精霊よ!」

『我の望むままに敵を討て!』

「我に代わりて敵を討たん!」

「『罪を裁く断罪の焔ッ!』」


僕はカルロドラゴンのみを狙いに入れて、体の奥底から叫ぶ!


「『ジャッジメント、フレアッ!』」


数十ともいえる、炎が手からほとばしりカルロドラゴンに向かって放たれる!

距離は20mくらいだが、それでも勢いが衰えずカルロドラゴンの目の前にいくと大きく包み込むように広がる!

そして、轟音を伴う大きな爆発が起きた!

獣人が数人巻き込まれたものの、無傷だ。

対象をちゃんと決めていたからだろう。


「よし!」

『…まだ…だよ』

「もう一度!」

『無理…時間がたたないと…』


連続しては無理か!

なら!


「二番目のやつを!」

『分かった…』


「『炎よ…舞い踊れ!』」


聞いたことのある詠唱…

いや、唱えたことがある…


「『地を這い天を滑る灼熱の龍ッ!』」


対象はさっきと同じだッ!


「『クリメイトッ!』」


龍の形をした業火が数匹、地上と天に分かれてカルロドラゴンを囲むように走り出す!

三方から龍は襲いかかり、食らいつく!

そして、強大な爆発を起こした!


『…まだ…』

「はぁ…はぁ…」


なんだ…?

魔力的には余裕なのに…


「なんか…疲れた…!」

『ん…少し、休む…』


そう言われたって…

休んでる暇なんて…


ふと戦っている人をみる。

…なんだ?

ツメを具現化…?

してるみたいだ。

あ、レンリィも。

不思議な技だ。

両手にツメを具現化からの、片手で交互に一度ずつ引っ掻いて、最後に両手でバッテンを描くように引っ掻いている。

あれがレンリィの行ったアニマルクローというものだろうか…


そんな事を考えていると、少しだけ楽になる。


「よし!もう一度!」

『あと…少しでジャッジメントフレアが出来る……3…2…1…いける…』


カウントが終わったと同時に僕らは詠唱に入った。

先程と同じパターンだ。


「『ジャッジメント、フレアッ!』」


先程と同じく炎がカルロドラゴンを包み込む!

そして爆発!


カルロドラゴンは大きく怯んだ!

そして、とどめと言わんばかりに獣人たちが一斉に切り裂いていく。

すると…

殆どの獣人が引っ掻いた場所から鮮血が噴き出した。

力なくドラゴンは倒れこむ…


「やった…ね…」


なん…だ?

体が重く…!?


「…ッ…」


目が…


「お兄ちゃん!?」


いつのまにか、近づいてきたレンリィが驚いたように叫ぶ。


「しっかりして!お兄ちゃん!」

「しっかり…して…る……ょ………」


体から、全ての力が抜けた…

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