第百三十話 質問
「なんであんなに人間を憎んでいたの?」
もっと遠回しに言えれば良かったのかもしれないけれど…そんな事言っても仕方無いか。
僕は思ったように口に出した。
「それは憎むしかないだろうが!」
「うーん…」
「それはお前も同じだろ!?なぁ!?」
同じじゃないんだけどな…
まぁ、いいか。
「そうだけど…君は特にって感じがして…」
憎んでるということにしておいた。
そうした方が質問を聞きやすいかもしれない。
…この世界に来てから嘘ばかりついてる気がする。
気のせいであってくれればいいんだけれど。
「…俺は、元々クロイ村に住んでいたんだ」
「クロイ村…?」
どこだろう…
もしかしてあの村かな…
僕が守った…
「お前が邪魔した先にある村だ!そんなのも知らないのか…?」
呆れた表情をしてカイムが言う。
「はは…それで?」
「その村は元々魔物と人間が共存していたんだ。」
…あそこに魔物が…
僕が行ったときは魔物はいなかったけど…
「だけどよ!村長が死んじまった後、オイラたちは追い出されたんだぜ!?あげく住んでた仲間は殺されちまう!」
「どうして?」
「…お前らゴミに生きる資格はない。この村は人間のものだ…って」
…その人ってもしかして…
「不良っぽい人?」
「…知ってるのか?」
あっ…しくじっちゃった…
会った事ない設定だったのにこれはない。
「当たった…!」
「あてずっぽうかこのやろー!」
いえ、違います。
だけど、僕が依頼を受けた人で間違いなさそうだ。
…見かけ通りひどい人のようだ。
「…確かに不良っぽいヤツだ。ソイツ、無茶苦茶強くて、それでオイラは魔物を従えてあの村に攻めこもうとしたけど…」
カイムは、僕を睨み付けるように怒って言う。
「そこでお前だ!オイラの邪魔をして!人間かと思ったら魔物ってどういうことだよ!」
どう誤魔化そう…
僕は腕を組んで考える。
「…おい!なんとかいえ!」
…うやむやにしよう。
それより、あの不良…許せないな…
こんな事情があるなら、攻めこまれてもしょうがないじゃん。
「…一人だけ。」
「…あ?」
「その、不良っぽいヤツ一人だけ倒そう。僕も力を貸すよ。」
僕の言葉を聞いてカイムは唖然としている。
確かに計画を邪魔した人が何言ってるって思うけどさ。
「…ホントかよ…?」
「うん、ホントだよ。」
勝てるかは分からないけれどね…
「…分かった…!じゃあ…」
そうカイムが言ったところでドゴォォッ!と爆音が聞こえた。
それと同時に地響きまで起こる。
「なっ…なんだぁ!?」
「にゃっ…にゃにがおきたぁ!?」
奥の廊下から猛ダッシュでにゃん婆が走ってきた。
「はやく外へ行かねぇと、確認も出来ねぇ!」
「そうだにゃ!いくにゃ!」
カイムとにゃん婆はドドドと走って外へと行ってしまった。
「一体…何が…」
僕も急いであとを追いかける。
・
・
・
「カハッ…」
「うぅ…」
音がする方向へと走っていくと、街の入り口付近で血生臭さが香ってきた。
これは…何が…
「そこらへんに経験値がゴロゴロ転がってる…ケケケ…」
…前に一度だけ聞いた声がする…
確か…あの村の不良…!
「てめぇ…一度ならず二度までも…!」
カイムがオノを構えながら対峙している…
にゃん婆は、近くで倒れている魔物を助けている。
あんな軽々と…凄いなぁ…キャットドッグっていう種の魔物を片手で…
「やっぱりあの小汚い冒険者のあとをつけて正解だった。こんなボーナスエリアがあるなんてなぁ!」
不良はそう言いながら無差別に爆発を起こしてる。
…詠唱しないの!?
「うぉぉお!」
カイムが雄叫びをあげながら、オノを振るうが、不良はひらりとかわし、余裕の表情を見せている。
「おらよ」
ボンッとカイムの目の前に爆発が起き、カイムが吹っ飛ばされる。
「いっっ…」
見てるだけじゃ駄目だよね…
勝てるか分からないけど出るしかないか…
「お、あの時の冒険者。報酬は払わないぜ?コイツが生きてるんだからよ。」
「…」
なんだろう…
やっぱり嫌いなタイプだ。
「ま、感謝くらいはしておくけど。ケケケ!」
そう言いながら不良は歩き始める。
僕はカイムの目の前に立つようにして、白樹刀を掴む。
「…あ?冒険者風情が魔物の味方すんのか?」
「…!なにして…んだお前…!」
不良もカイムも何言ってるんだ…
そういうのは僕の勝手だよ…
「魔物の味方…それもいいかもね。でも、魔物の味方だから対峙するんじゃない…」
カッコつけて、白樹刀を降り下ろす。
こういうのやる性格じゃないんだけれど、士気が上がるかもだし…
ってカイムしかいないか。
「僕は、君が許せなくなっただけだ。」
経験値?
そんなの知らないよ…
ボーナスエリア?
勝手に思ってるといいよ…
「カイム、一緒に戦うよ」
「お、おう!」
カイムは再度、オノを構えた。
「ほー…対人戦か。ま、オメーらはどっちみち詰みな。」
不良は杖のような、長い棒をどこからともなく取り出してそう言った…
…あれ?
不良が何故こちらに来たんだ…?w
ま、いいか!w




