第十二話 風切の太刀
昼に活動を初めて空はもう赤みかかっていた。
赤いビッグラットはレッドラットというビッグラットの変異種らしい。
精霊は魔物の名前が分かるらしく、リートに教えてもらった。
すごい便利。
僕は南の村へと向かう。
そういえば南の村の名前はそよ風村というらしい。
今更だけど。
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「すみませーん…」
「いらっしゃ…ああ、貴方ね。シルドは集まった?」
そう言われてすぐ、金貨を出す。
「はい、じゃあ案内するわね」
そう言われ、僕は部屋に案内された。
「では、ごゆっくり」
「あ、はい。」
扉が閉じられ、この部屋には僕だけになった。
僕はベッドに腰をかける。
「思えばこの三日間ロクに寝てないし、ご飯も食べてないな…」
それに短期間に色んな事がありすぎた。
少しくらい…休んだっていいよね…
まだ夕方。
それでも僕は寝ることにする。
ベッドに入り、目をつむる。
すぐに僕は意識を手離した。
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「…ん」
意識はハッキリしている…
身体中の感覚はまだハッキリしない。
けれど辺りを見渡す事ぐらいは出来る。
人がいっぱい…
小学生くらいの背の子供たちがいっぱいいる。
そしてここは教室だろう。
僕はいつの間にかその教室の席に座っていた。
話し声は聞こえているハズなんだけど言葉が耳に入ってこない。
すると一人の女の子が僕の席にきた。
「…。…よ…。」
その少女の言葉はノイズのようで上手く聞き取れない。
「…!…!…ね!」
「分かったから…」
聞こえてないハズだったのに僕の口が勝手に動いた。
記憶の中なのかな…
でもこんな女の子なんて知らないし…
風景も…いつだったのかも…どんな話をしていたのかも…ボンヤリとモヤがかかっているみたいで思い出せない。
「…授業始まるぞ」
「…!…あね!約束だよ!」
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「…朝か…」
朝日が僕の顔を照らした。
起きてもなお、夢の事が忘れられない。
約束…
僕はその時…何を約束したんだっけ…
必死に考えるも、それらしい記憶が見当たらない。
過去の記憶が美化しすぎただけかな…
第一、僕が関わった女の子っていないし…
…今までは
僕は宿が出してくれるという朝食を食べにと部屋を出た。
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部屋へ戻ってきた。
…久し振りに食べ物を食べた気がした。
出たのはパンと何かの肉。
パンは日本のフランスパンのような味だったけど肉はなんだろう…苦みと旨みが合わさった不思議な味だった。
「リート、いる?」
『…ん、何?』
「この世界の事は追々シオリに教えてもらうとして、リートしか知らないような事を教えて貰おうと思って。」
『例えば…?』
「えっと…リートって一体何者なの?」
『…精霊』
「…うん、精霊って何?」
『魔力の…集合体…核が生成されて…自我を持つ…』
「魔力…か…精霊は魔力枯渇になるとどうなるの?」
『核だけになって…魔力集める…』
「へ、へぇ…契約って何なの?」
『精霊と…契約…魔力…増大…魔法…使える…回復…速い…』
「それは契約者のメリットだよね…精霊には?」
『核を…契約者の心臓…宿して…魔力…共有…僕が死んでも…また…生き返る。』
「何度でも蘇るさ!」
『…?』
「…ごめんなさい…」
『ん?…んー?』
リートは困ったように唸ってた。
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もう日が傾いてる…
あ、今日の宿代貯めてない…
それに動きやすい服が買いたい…
学生の服がもうボロボロになってきていて、見た目も悪いし、体を動かしづらいからだ。
少しこの村の服を見てみることにした。
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あの人は…
服屋を探している途中、武器屋の中、大きな人がカウンターにいるのが見えた。
その人は間違いなくこの刀をくれた、大男だった。
お礼を言おう。
僕はそう思い、武器屋の中に入った。
「らっしゃー…おお!にいちゃんか!」
「あ、あの…あの時はこの刀を譲っていただきありがとうございました。」
「アッハッハッハっ!やはり使えたかっ!アッハッハッハっ!」
大男は高笑いをしている。
「えっと…どうしたんです…?」
「いいか…にいちゃん…その剣は風切の太刀と言われていてなぁ…風属性の魔力を吸収しちまうんだよ…しかも膨大にな。」
「へ、はぁ…」
「風属性の魔力を持つ俺達、風の民が使うと魔力を根こそぎ持っていかれて魔力枯渇状態になる。そして副作用だ。」
「えっ」
僕が風の民だったら…風属性だったらどうしたんだ…
「だけどなぁ…それだけで済まないんだ。」
「というと…」
「鞘を抜いた風属性のヤツは一週間、風の魔力を宿す事が出来なくなる。一週間、ずーっと魔力枯渇状態だ。」
「…」
「そういう曰く付きの物だったんだ。」
「…この刀は風属性の魔力を吸収するんでしたよね?」
「…ん、ああ」
「放出とかは…出来たり…しませんか?」
溜めているのなら放出など出来るのではないかという解釈だ。
「フム…今は出来ないだろうが…剣術の技術を上げていけば出来るとは思うぞ。魔法と同じ様にな。」
「魔法と同じ…わ、分かりました。あっ…あと、ここら辺に服屋在りませんか?」
目的地の服屋を聞いておく。
「それなら俺の店の向かい側だ。」
「本当ですか、ありがとうございます。」
「それとよ、ジーフ知らねえか?」
ジーフ?村の名簿にも居なかったし…
「…誰ですか?その人」
「あれだよ、あのお前と一緒にいた兵士。」
「ジーフさんっていうんですか」
あの兵士の名前をやっと知った。
「俺の息子でな…お前の後を追いかけて行ったからてっきり一緒に帰ってくると思ったんだがなぁ…もう居なくなって三日はするぜ…?」
「大変じゃないですか!急いで捜さないと!」
「ああ、気にするな。ひょっこり帰ってくるさ。」
「ひょっこりって…」
「それより少し待ってろ。」
そう言ってジーフの父親は奥へ行き、何やらあさって戻ってきた。
「ホレ」
そう言って投げ渡されたのは、茶色い丈夫そうな服の上下だった。
「えっ、これって服じゃないですか!いいんですか!?」
「ああ、その刀を渡したお詫びさ」
「で、でもこんな丈夫そうな服…」
「古着だよ古着。昔、俺が着ていた服さ」
「あ、ありがとうございます!このご恩は忘れません!」
「いいってことよ」
ニカッと笑いジーフの父親は言った。
「では、もう行きますね」
「おう、にいちゃん。あの目は忘れるなよ?」
扉を出る時にそう言われた。
意味は分からないけれど…
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茶色の服を身にまとい、僕は宿を出た。
勿論、宿代を手にいれる為に。
今度は北の村側ではない出入り口から外へと出た。
「おー…すっごい…」
思わず感嘆の言葉を発した。
黄金の小麦畑が道の両端に広がっていたからだ。
小麦畑の道を進んで行くとついに小麦畑が終わり、北側とは違う風景の場所についた。
すると一匹、鳥のようなものが上空から現れる。
『ウィンドバード…特徴は…大きなくちばしと…風を使った攻撃魔法…』
「分かった!」
僕は駆け出した。
鳥は地面に足をつき、翼を折り、目を閉じた。
『あれが…詠唱…』
「…あれが…か…」
するといきなりウィンドバードは翼を広げた。
竜巻の様なものが此方へ向かってくる。
「風の魔力を吸収するなら…」
鞘を抜き僕は風切の太刀を竜巻に向かって振った。
一瞬の出来事だった。
その竜巻を斬った瞬間、何も無かったかのような静けさが辺りを包んだ。
「す、凄いな…これ…」
想像を越えた。
この刀があれば風の魔法はなんて事無いかもしれない。
次はウィンドバードに向かって刀を振るった。
いい手応え…だったのだが、まだ倒れはしない。
ウィンドバードは逃げ出そうとしていたが僕は追いかけ…
ウィンドバードに突き刺した。
声をあげ、絶命した。
いつも通り、血が固まり、硬貨が出てくる。
銅貨が7枚。
多いな!
ビッグラットとバットは2枚だったのに!
不満を抱いたけれど、仕方ない事なので僕は硬貨を回収し、ウィンドバードを焼いた。
さて、戻ろう。
僕は来た道を戻り宿屋へと向かうのだった。
二日続けて投稿っ!
文章は相変わらず雜ですけどっ!w