第百十三話 現状と感情
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そして…
歯車は動き出す…
何処までも白い光景が続くこの空間…
そこには一人の老人と一人の女性がいた。
「…どういうつもりなのですか?…エン?」
金色の髪を掻き分けながら、老人に対して質問をしていた。
「どうして…あの者を魔界に送ったのですか?」
その質問に、エンと呼ばれた老人はひざまづき、理由を言う。
「…魔界にはあの者を助けるような仲間などおりません…さらに魔物も人間界とは比べ物にならないほど強く、孤独のまま死んでゆく事でしょう…ほほほ…」
そう言ってニヤリと笑う。
「…そうですわね…うまくいけば…ですが私の魔法もそこまでは届きませんわ。これでは死んでいるのかさえ分からないではないですか。」
「問題ありません…私が見て参る事も可能なのですから。…それとも…すぐにでも殺しに…?」
エンの言葉に静かに首を横に振るシル。
「いいえ、まだ…まだあの者の絶望に染まった顔を見ておりませんわ!…異世界の…乱入者…!」
その目には深い憎悪を感じることが出来た。
「では…どういたしますか…?」
エンの問い掛けに、シルは少し考えた後、答えを出す。
「…残りの三人…集めなさい。」
「…承りました…様…」
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「シオ…?大丈夫?」
…砂漠の青い空を見上げながら私は立ちすくんでいた。
「…つ…いん…さん…アキが…アキトがぁ…!!」
溢れ出す涙…
泣くつもりなんてないのに…
なんで…
こんなに寂しいの…
こんなに苦しいの…
「アキトが…!消えちゃった…!!アキトが…!アキトがぁ!!」
私は叫んでる…
何も変わらないのに
こんなのしてもアキトは帰ってこないのに…
「…よしよし……大丈夫だから。アッキーはすぐ帰ってくる。」
「…本当…だよねぇ…!!本当に…!」
答えを求めてるのは間違ってる…
でも…
嘘でもいい…
私は肯定の言葉を待った。
「…泣いてばかりでは何も変わらないのではないか?」
ツインさんの横から声が聞こえた。
…怒ったような表情でレイクニルさんが私を見ていた。
「アキは消えたのは変わらない。どこにいるかも分からない。それなのにすぐに帰ってくるわけがない。」
「…」
私の目から涙がまた溢れてきた…
レイクニルさんの言う通りだ…
「なら…僕たちに出来るのはただ待つだけだ。帰ってきたら…今度こそ…失わず…今度こそ…守れるように!」
ぎゅっ…と手を握りしめる音がした。
…レイクニルさんだって悲しくないわけじゃないんだ…
それにツインさんだって…
私は……
弱い…
一人じゃ何もできない…
アキトと一緒だから…
一人じゃ無かったから…
だから甘えちゃって…
アキトを守るって…
そんなの…
口先だけで…
…
私は…
「おねが…いがあります…」
涙はもう止まった…
後悔の涙はもう出さない…
後悔しないために…
私は…
「私を……強く……強くさせて下さい!!」
強くなりたいと決心した。
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・
「やっとここかよ…」
俺らは水の村クラブへと帰ってきた。
ここに来るのに何日歩き通したったろう…
って宿を取ったりしてたな
「帰ってきたー!!」
…フィリアのハイテンションには着いていけない。
着いていく必要ないけどな
フィリアはキョロキョロと辺りを見渡し変わりないなーなどと言いながら歩いている。
…今日はゆっくりしよう
どうせ目的地までまだあるしな
因みに俺らの目的はこの国近くの海上にある…?かは分からないが、水の宝玉という物を手に入れる事だ。
宝玉を集めるごとに神からのご加護を受けることが出来て、強くなる…
で、確か7つの宝玉が集まれば俺らは帰れる…
だったハズ。
しっかしどうもなぁ…
神なんて呼び出す必要なくね?
まず戦う時点でおかしくないか?
魔物と魔王になんの繋がりもないとしたら…
とかは考えてねぇし…
…常識になってるのか?
…考えてもらちがあかないな…
「また何か考え事?最近多いね?」
先行していたフィリアが振り返って問いかける。
「…いや…何でもない」
…嫌な予感がするだけだ…
ただそれだけ…
………
「おお!リュウよ!死んでしまうとは情けない!」
「なんでドラ○エネタが残ってんだ!!」
長の部屋へ来てみたらいきなりのパクリに突っ込みを入れる。
「てれれれっれっれっれー!リュウのツッコミレベルが上がった~!」
「フィリア!乗るなッ!」
じっちゃんがじっちゃんなら孫も孫だな…
「よーくぞ、戻って来ましたな。」
「ま、ついでだついで。」
俺はそう言いながら大きく伸びをした。
「お爺様、水の宝玉って知ってる?」
フィリアがいきなり話を切り出した。
このじっちゃん知ってるのか?
「水の宝玉…確か…神を復活させる道具の一つでしたな」
「…復活って…ある意味あってるか…」
「それは表向きですがな。」
「…うん?」
表向き?
裏とかあんのか?
「表向きって?」
フィリアも疑問に思ったようで聞いている。
「…水の宝玉には神を復活させる…というて伝承が一般的ですが、中には使用すれば災いが起こる…とも言われているのですぞ。」
…ワケわからん…
使い方を間違えれば…とかいう類か?
「…よくわからねぇけどよ…王様に頼まれてんだ。詳しい場所とか知らねぇか?」
「…確か…この村より北に位置する洞窟…その奥に水の宝玉を守る神殿があると伝えられております。」
…洞窟を抜けたら次は神殿かよ…
正直面倒だな…
「ありがと、お爺様。」
「リュウ殿、フィリアの事をまた宜しく頼みましたぞ。」
「分かってる」
信じられる相手くらいは守る。
流石にな。
「では、ゆっくりしていって下され!」
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・
「…あのな…フィリア…」
「ん…何ー?」
「当たり前の様に俺のベッドを占領するな…」
いつもの如く、リュウは床で寝ることになった。
………
・
・
・
……
僕は…なんのために生きて…
僕は…なんのために…
死ぬのだろう………
…分からない…
こんな…暗闇の中で考えて…
考えて…
考えて…
それなのに…
答えはでない…
導き出せない…
なんでだろう…
なんで
なんのために生きてるかも分からないのに…
死にたくないんだろう…
生きていたいんだろう…
分からない…
いっそ…
あの時…
本当に死ねば…
楽になれたのに