第十一話 お金を集めて
「よし、90シルド分だ」
僕は今まで貯めたシルドを数え終わり、そんな事を口ずさむ。
魔物を45匹を倒して少しは殺す事に慣れてきた。
刀を抜き、敵を斬り、シルドを拾い、死体を片付けそういった行程を45回繰り返しているのだから慣れない方がおかしいのだと思う。
そしてコウモリの様なバットと呼ばれる魔物がたまに出現した。
その黒い体はビッグラットと同サイズで大きな耳と牙を持ち、羽をつかって攻撃を回避し、鋭く大きな牙で獲物を吸血するらしい。
かなり痛かったです。はい。
それは置いといて…
どうやらバットから採れるシルドも2らしく、結局倒す個体の数は変わらなかった。
あと5匹…なんだけど…
「同時に出てこなくてもいいでしょ…」
ビッグラット2とバット2、そしてビッグラットの姿で色が普段とは違う赤い色の魔物。合わせて5匹が出てきた。
赤いビッグラットが気になるけれど、まずは他の魔物を倒す事にした。
僕は刀を抜く。
前衛に出てきたバットを斬りつける。
残りが4匹になる。
すぐに次のターゲットを確認したが四方向に回り込まれてしまっていることに気づく。
「あつっ!」
僕がバットの方向を確認してた時、後ろから熱気を感じたので振り替える。
「ネズミが…火ぃ吹いてる…」
赤いビッグラットが炎の息を吐いていた。
普通のビッグラットとはやはり違うらしい。
それならば炎の息以外にも何かビッグラットと変わった所があるかもしれない。
やはり僕は赤いビッグラットに注意をしつつ、他の魔物を倒す事にする。
まずはその場から逃げ出し、挟まれていた状況を打破し、バットを斬った。
赤いビッグラットがこちらへと来たので、すかさず退避する。
通常のビッグラットを狙い、駆け出し、刀で斬りつけた。
残りは赤いビッグラットと通常のビッグラット。
赤いビッグラットの後ろに通常のビッグラットがいるため、魔法を撃とうとすると、頭の中に知らない呪文があるのに気づく。
「試し撃ちでやってみよう…」
集中し、詠唱を始めた。
「詠うは火の楽譜…我に力を!強化・炎!」
…沈黙が続く
「…何も起こらないんだけど…」
『アキト…』
「何、リート…」
『魔法を撃ってみて…』
「魔法って…」
僕は通常のビッグラットに向けて火球を撃ってみる事にした。
「炎よ…焼け!火球!」
凄まじい轟音と共に飛び出した火の玉は通常のビッグラットに当たり、赤いビッグラットの方も巻き添えを喰らい、まるでその場所だけが別の空間の様な熱気に包まれた。
…こんな威力高いっけ…
僕は唖然として見ていた。
その中で動く黒い影が見えた。
想像はついている。
僕の想像通り、赤いビッグラットが業火の中から飛び出してきた。
その体には傷一つさえついていない。
「魔法は効かないみたいだ…」
『アキト…持続魔法は…長時間使わない…方が…いい…』
「何それ?」
『強化・炎は…持続魔法…本人が切る…本人の魔力枯渇で…止まる』
「ど、どうすればいいの…」
『拍手打って』
「こ、こう?」
僕は両手で合掌、パチンと音を鳴らした。
『ん…止まった。』
「教えるの嫌いなんじゃないんだ…」
すこし皮肉っぽく言ったと思う。
『死ぬと…困る』
「…はい」
一瞬で言い返せなくなった。
赤いビッグラットは僕に炎の玉を吐き出してきた。
それをひらりと後ろにかわす。
が
火の玉は確かに当たらず、地面についた。
その瞬間地を這うようにして炎が僕に迫ってきた。
「っい!?」
僕は玉が消えるものだと思っていた為、驚く。
横に避けても僕についてくる。
避けられない速さではないけれど、流石にこれはこわい。
しばらく逃げると炎は静かに消えていった。
赤いビッグラットの方を見る。
相手は目が泳ぎ、フラフラとしている。
多分、優人と同様、魔力枯渇の副作用だと思う。
刀を抜き、構え、強烈ななぎはらいを放った。
「っ!斬れなっ!」
いつものビッグラットなら一発与えただけで倒せるがそうもいかないらしい。
赤いビッグラットは副作用から回復し、炎の息を吐き始める。
「あっっちぃっ…!!」
回避しなかったのが不味かった。
息を全面的に喰らってしまう。
全身に走る痛み。
それに苦しみながらも僕は刀を振った。
次の一撃はちゃんと手応えがあった。
やっとの事で五匹との戦闘は幕を閉じた。
「痛い…」
全身に火傷を負うのは初めてだし、こういう時どうすれば良いのかも分からない。
『火傷なら…すぐ良くなる…』
「ならいいんだけど…」
確かに受けた時よりは随分と楽になっている。
「シルド回収しないと…ん…?」
見たことない金色の硬貨に疑問を抱いた。
「これもシルド…?かなぁ?」
『100シルド…だよ』
…
「今までの…労働力を…!」
天に向かって僕は怒声を飛ばした。
「返せぇええええええええっ!!!」