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第十話 無一文

優人が去った後、僕らはまた南の村へと進む。


かなりの距離を進んだからもうそろそろ見えるハズだ。


道中、僕はこれからの事を考える。


僕がこの世界でやりたいことが見つからない。


ゲームの主人公の様にこの世界の魔王を倒せなどという大雑把なものなら分かりやすいが、僕は勇者じゃない。


元の世界に戻る?


戻って何をしたい?


それに神様に狙われている可能性があるんだ。


どこに行ってもきっと狙ってくる。


「アキト?どうしたの?」


僕が考え事をしているとシオリが声をかけてきた。


「うん…ちょっとこれからの事を…さ」


「あっ…そうね…私が呼んでしまって…ごめんね」


「ううん…いいんだよ。」


「そうね…ギルドに入ったりとか…」


「ギ、ギルド?」


「うん、色々なギルドがあるわ。一番有名なのが冒険者ギルドね。」


「うーん…」


ギルドと言っても…なぁ。


「でも何も目的無いよりもいいかぁ…南の村で少し過ごしたら行ってみるよ。」


「分かったわ。私も仕度するね。」


…私も?


「私もって?」


「え?私も行くよ?」


「へ?な、なんで?」


「私がしたことなんだから最後まで責任を持って償います」


「シオリはただ魔法で召喚しただけでしょ!別に僕を呼ぼうなんて考えてなかったんだから…」


「いいの!それにこの世界の事が詳しい人がいた方がいいでしょ?」


「それは…その…」


考えてみると本当にこの世界の事を何も知らない。


だけどその位ならリートに聞けば…


『僕…教えるの…嫌い…』


…さいですか


「じゃあ決まりね!」


ちゃっかり話を進めてるシオリ。


「あ、ちょ…」


もう聞く耳を持っていないと思い、反論をやめる。


うーん…これでいいのかな…


僕はそう思いながら歩みを続けた。





南の村…


僕らはやっとの事で南の村へとついた。


「ケリック!」


入り口にいた女の人が叫ぶ。


「あっ!母ちゃん!」


そう言ってケリックは走り出した。


「良かった!ケガは!?してない!?」


「うん、大丈夫。アキト兄ちゃん!」


ケリックが笑顔で僕に言う。


「ありがとう!」


「ありがとうございます!さ、ケリック行くよ。」


ケリックは頷き母親と避難民を受け入れている家へと歩きだした。


「なんか…むず痒いな…」


お礼を言われるのに慣れていないからだと思う。


さて、ケリックは送ったし、ヨルは宿に送るとして残るはシオリだなぁ。


僕はヨルと同じ宿屋へと泊まる事にしてたから場所は把握してる。


「シオリはどうするの?」


僕は言う。


「私は元々来るハズじゃ無かったから…アキトと同じ場所でいいよ。」


「分かった。じゃあヨルさん、シオリこっちです。」


「ああ、分かった。」


「はーい」


そういえば兵士さんは何処だろう…


お礼を言いたいけれど場所が分からない。


後で探しに行こう。


今日はもう疲れたから…


眠いし…





「ここだよ」


僕がこの建物を指して言う。


それなりに大きくほとんどが木製で構築されている。


「ここね…」


「へぇ…」


「さーって入ろう」


僕は扉を開ける。


「あら、珍しい。旅の方?いらっしゃい」


「え、は、はい。」


宿屋に入ってすぐ、店の人に声を掛けられる。


「三人ね…300シルドになるわ」


…シルド?


「シオリ、ヨルさん。僕、重大な事に気づいたんだ。」


僕がそう二人に言うと二人が疑問符を頭に浮かべる。


「僕…この世界のお金無かった。」





「はぁ…」


僕は一人村の外へ出ていた。


ヨルとシオリは持っているという。


シオリがシルドあげると言ったのだけど僕が受け取らなかった。


流石にお金を貰うなんて気が引けたし。


そしてヨルの話だと魔物を倒すたびにシルドが手に入るらしい。


この近隣のビッグラットは一匹で2シルドを落とす。


ってことは


300÷3÷2=50


つまり50匹倒しさえすれば100シルド。


50とか多すぎるでしょ!


それに生き物を殺すのはかなりの抵抗がある。


だけどこれからの事を考えると明らかに魔物との戦闘は必須になるだろう。


それに魔法。


経験を積めば新しい魔法を覚えるとリートは言っていた。


経験…


それはRPGで言う経験値を取得することだと思う。


だから…


「倒すしか…ない…よね…」


僕は目の前に出てきたビッグラットに向けて刀を鞘から抜いた。


両手で持つのが精一杯のその刀からは重さだけでなく頼もしさを感じた。


任せろとそう言った気がした。


ビッグラットが飛びかかる。


ひらりと身をかわした僕が取った行動。


それは…


今までの躊躇を振り払ったなぎはらいだった。


ビッグラットから鮮血の液体が噴き出す。


「…うっ」


やっていてやはり気分の良いものではない。


魔物の死骸はどうしよう…


そのままは絶対に嫌だ。


「あ…燃やそう…っとその前に」


魔物の血液が結晶化していき、二枚の一円玉代の大きさの銅貨になる。


たぶんこれがシルド。


それを拾う。


…袋が必要だなぁ…


そう思ったけど今は道具様の袋しかないので仕方なくズボンのポケットに入れる。


そして僕は魔法でこの死骸を燃やす。


荒っぽい火葬だけどなにもしないよりは僕の心が救われる。


「炎よ…焼けっ!火球(フレイムボール)!」


魔物の死骸に放つ。


そして死骸は跡形も無く消えそこには何もなかったかのようになった。


「頑張ろう…」


新たな決意を胸に僕は再度、狩りに出掛ける。

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