逢魔が時
学校からの帰り道。
私は一人、歩いていた。
いつもの道は工事中のため使えず、仕方がなく普段なら使わない路地を使う羽目になった。
もうすでに日が沈みかけているとはいえ、まだ明るいにも関わらず不思議と周囲に人の気配はない。
普段使っている大通りなら、車が何台も通り、人の姿が多い時間帯だけに、私は心細さを覚え知らず歩く速度が早くなった。
ふと視線を下げると、夕日に照らされ縦に伸びた自分の影が目に入る。
それを眺めながら歩いていると、視界の端に人の影が入り込んだ。
どうやら後ろから誰かがやってきたらしい。
自分以外の人の存在に安堵するも、その影をよく見ると違和感を覚える。
その影は、首の部分だけが異様に長いのだ。
私は息を呑んで、影を凝視する。
しかもその影は、徐々に自分に近づいているようなのだ。
そのことに気づいた私は、なりふり構わず走り出した。
追いかけてくる足音は聞こえなかったが、家にたどり着くまで決して後ろは振り向くことはできなかった。
この日以来、あの路地に近づくことはなくなったのだが、あの影の正体は何だったのか、振り向けば何が見えていたのか、未だにわからないままである。