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笑いが止まらない

「ハハハハハ」

 今日もお隣さんの笑い声が響く。

 毎日毎日何がそんなに楽しいのか、煩わしいことこの上ない。

 いかにも平社員っぽい父親と、化粧っ気の少ない母親に、特に優秀でもなさそうな息子。そう、笑えるような出来事など日々起こるわけでもあるまいし。

 テレビをつければ事件、事故が目白押しで、一体いつ自分の身に起こるかわからないのにいい気なものである。きっと連中は今の生活に満足していて、向上させようという意欲がないのだろう。

 でも、私は違う。より良い会社に就職し、より良い給料を得て、より良い生活が送れるよう日々努力している。

 今日だって面接を受けた会社から結果が届いたのだ。

 今のところ内定は一つも取れないが、ここには自信がある。だから、今度こそ……

「……なんで?」

 結果は不採用。意味が分からない。

 せっかく優良企業と評判だから受けたのに、とんだ無駄足だった。面接に使った時間と労力を返してほしい。

 ここだけじゃない。どこの企業も見る目がないし、誰も私の才能と実力に気づかない。こんな見る目のない連中が世にのさばっているから、日本はよくならないのだ。

 紙をぐしゃぐしゃに丸めてごみ箱に捨てる。

 最悪の気分だ。イライラしてしょうがない。世の中全てが憎く思えてくる。

 すると、隣からまたあの声が聞こえた。

「ハハハハハ」

 ……なんでこんなに頑張ってる私が報われなくて、あんな連中があんなに幸せそうに笑ってるの?

 こうやって苦しんで大変な思いをしている人がいるのに、どうして楽しそうに笑えるの?

 あいつらの笑い声を聞くたびに、こっちは胸糞悪くなるのに。

 ……そうだ、きっとあいつらが私の分の幸せを吸い取っているのだ。

 そうじゃないとおかしい。ありえない。この私が、こんな目に遭うなんて。

 私はさっそく、包丁を持って隣の家に向かった。

「ハハハハハ」

 ああなんて清々しい気分なんだろう。こんな気分は久しぶりだ。

 目の前に転がる三つの死体。

 その顔に浮かぶ、悲痛な表情の愉快なこと。

 ああ、笑いが止まらないとはこのことだ。

「ハハハハハ」

 さあ、さっさと証拠を隠滅しなきゃ。私が捕まっちゃう。

「ハハハハハ」

 ようやく私をイラつかせる連中を消せたのに、牢屋行きなんて冗談じゃない。私の人生はここからなんだから。

「ハハハハハ」

 明日からまた就活しなきゃ。

 ここまで来たのだから、絶対大手企業に就職してやる。中小企業になんて絶対に嫌だ。私の才能と能力に気づいてくれる人が絶対にいるはずなんだから、諦めない。

「ハハハハハハハハハハ」

 だけどもちろん、仕事に一生懸命になりすぎて婚期を逃すなんてごめんだ。

 さっさと出世しそうな男を見つけて誘惑し、結婚して、専業主婦になってやる。

 それから……

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 出て行こうとした時、気づいた。私ったらまだ笑ってる。

 流石に大声で笑ってると目立ってしょうがないから止めないと。

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 駄目だ。顔のニヤつきが止まらない。せめて声だけでも。

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 あれ?

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 笑うのってどうやって止めればいいんだっけ?

時空モノガタリ様の方に載せていたものです

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