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公衆電話から
まさか、今時公衆電話を使うことになるとは思わなかった。
ズボンのポケットにかろうじて入っていた十円玉を入れ、番号を入力する。
プルルルルという発信音が響いてしばらくすると「はい」と声が聞こえた。
「今からそっちに行くから」
それだけ言って電話を切る。たぶんこれで通じるだろう。
河からあがったまま入ったので電話も床も水浸しだが、拭き取れるようなものは持ってないのでこのままにしておく。
次に使う人には少々申し訳ない気持ちだ。
それにしても俺は運がいい。
突き飛ばされて川に転落したのに、気づけば河原に打ち上げられ、さらには偶然落ちてた鉈を手に入れたのだ。
絶対に逃がしはしない。