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楽しくも誇らしくもない俺の仕事

「あー……仕事辞めよっかなぁ」

 俺は外を眺めながら、そう無意識に呟いた。

 ハッとなって周囲を見渡すも、幸いなことに誰も気にしていないようだ。

(やべぇ~、流石に気を抜きすぎてたな)

 俺の仕事はとにかく危険が多い。

 ちょっとした油断や気の緩みがそのまま命に関わるのだ。

 俺は反省しつつ、深呼吸をして気を引き締めた。


 誰にもやりたがらないが必要とされる仕事というものはある。

 俺の仕事もその一つだ。

 やりたいかやりたくないかで言えば、やりたくない。先程言ったとおり、危険が多いからだ。

 じゃあ、なんてこんな仕事をしているかというと、以前は会社員として働いていたのだが、人間関係でこじれて退職。

 すぐに再就職するつもりだったのだが、なかなかいいところが見つからずいろいろバイトに手を出していたら偶然この仕事に携わることになったのだ。

 そのままずるずると続けている状態である。

 けれども、どういうわけか俺にはこの仕事の才能があるらしい。

 同業者が生まれては消えていく中、俺はかれこれ十年以上この仕事をこなしているわけだから。


(……あいつか)

 マンションから一人の男が出てくる。

 眼鏡を掛けた少し気の弱そうな優男。一見すると、とても遊んでいるようには見えず、浮気相手が妊娠した上に認知を迫ったら暴行し、無理矢理流産させたような男だとはわかるまい。

 人は見かけによらないものだ。

 俺は息を潜めて男が近づくのを待つ。

 そして、男が俺の乗っているワゴンの横を通り過ぎようとする瞬間、ドアを開けて男を引っ張り込む。

「え、なっ……」

 当然、男は暴れようとするがクスリを染み込ませたハンカチを口元に当てれば男は気絶した。

 完全に意識が無くなったのを確認して、俺は男を縛る。

 それから運転席に移動して、俺は車を走らせた。

 あとは港まで運んで、こいつを突き落とすだけ。

 だが、最後まで気は抜けない。

 もしかしたらトラブルが発生するかもしれないし、誰かに目撃されるかもしれないのだから。

 この仕事は、一回の失敗で全て失う可能性が常にある。それを忘れてはならない。

(こういう時、やっぱり辞めたくなるなあ……)

 しかし、今更辞めたところでこの仕事と完全に縁を切ることは難しいだろう。

 それにこの仕事を必要としている人は、まだまだたくさんいるのだ。

 親にだって一度も褒められたことのない俺でも必要とされ、感謝を受けるのだから、もうちょっとやれるうちが頑張っておこうかな、と思っている。

 会社勤めに戻るのが馬鹿らしいぐらい金が手に入る、というのもあるが。

(俺、多分ろくな死に方しねぇだろうなあ……)

 そんなことを考えながら、俺はアクセルを踏む。


 害人駆除。

 それが俺の仕事である。


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