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呪われた帝国騎士と異世界の商人  作者: 江本マシメサ
本編「呪われた帝国騎士と異世界の商人」
20/33

20「勇者の作り方Ⅰ」

「は…?なんだよその本」

「いろいろな物買えるです」

『魔力を使ってお買い物するんだよ』

「意味分からない。つかお前なんなんだよ」

「これはガロンの魔剣」


 ティスカは訝し気な眼差しをアマリエに向けた。どうやら通販情報誌の事も魔剣の事も信じていないらしい。


「どう言えば信じるですか」

『アマリエちゃん〈こんにゃくこんにゃく〉買おうよ!!そうすれば話も上手く伝わるし、通販も信じてもらえるよ』


 「なんだよその蒟蒻は」というティスカの突っ込みを無視してアマリエはこんにゃくこんにゃくのページを開いた。




全世界共通言語翻訳食品 こんにゃくこんにゃく お試し版(桃味)

世界堂


価格: M,50

ポイント:5pt

評価:★★★★★(9)

在庫あり

├即お届けします!


商品説明


 「黒髪黒目の少女に憧れるけど言葉の壁がなあ…」


 念願の異世界少女を召喚したものの言葉が通じない「異世界あるある」に困っていませんか?

 こちらの食品を口にすればあら不思議、どんな世界の言葉でも翻訳してしまうのです!

 こんにゃくこんにゃくを食べて世界の壁を、言葉の壁を越えてみてはいかがでしょうか?


 ※こちらはお試し版で効果は1日です。




評価


★★★★★「異世界の嫁と初めての会話に成功」

┗2310/1/24

┗カルドセプ様

┗異界堂で購入済


 この商品は素晴らしい。100年程連れ添った妻と初めて言葉を交わした時の感動を忘れません。



〈異界堂より〉

 カルドセプ様、この度は世界征服おめでとうございます!

 100年連れ添った奥様との会話は感動的で素晴らしいものだったでしょうね、ほっこりした気分になりました。これから言葉が通じる様になり様々な事が起こるとは思いますがお二人の愛の力で乗り越えて下さいね!

 レビューありがとうございました。





「ティスカ、手貸してです」


 ティスカの返事を聞かないうちに手を取り商品ページの〈購入〉を押す。すると紙面からバチリと火花が飛び〈ご購入ありがとうございました〉という文字が浮かび上がった。



「痛ってえ、何するんだ」


 ティスカの体に電撃が走った様な衝撃が走る。


「ティスカの魔力で買ったです」

「何でだよ!!自分の魔力使えよ」

「50しか使って無い大丈夫です」

『ティスカ君の魔力150あるから大丈夫だよ』

「なんだよその数値は…」

『魔剣の特別仕様だよ、人の特性や魔力が数値として見えるんだ。アマリエちゃんもだけどお買い物には注意が必要だよ。自分の魔力以上の物を買っちゃうと死ぬからね』

「は…?」


 指先はまだピリピリと痛み、鈍痛は治まらない。

 

「冗談だろこんなの…」


 痛みを受け止めながらもまだ信じていなかった。が、突如として魔法陣が浮かび上がり、中から青いしましまの制服を着た人が現れる。


「うわ!」

「どうもーSEGAWA急便です~アマリエ様にお届け物です、サイン頂けますか?」


 渡された用紙にサインをすると配達員は消えて行った。

 アマリエは箱からこんにゃくこんにゃくを取り出し口にした。



「ティスカ、私の言葉は分かるか?」

「さっきから分かってたよ」

「私は今祖国の言葉を喋っている。」

「はあ?証拠は」

『アマリエちゃんいつもより流暢でしょ?』

「……」


 ティスカはアマリエと数分言葉を交わした。たしかに彼女の言葉はいつもより流暢だった。

 通販情報誌や魔剣についても詳しく説明されティスカは納得のいくまで話を聞いた。





「分かったよ、その通販情報誌で商品を買って隊長達を助けに行くんだな、早く決めて行くぞ。買う品物の目星はついているのか?」


 アマリエは頷きながらページを捲る。






マッスル DA シナモン

ロール薬品

価格: M,6000

ポイント:600pt

評価:★★★★☆(325)

在庫あり

├即お届けします!


商品説明


■貧弱な身体から屈強な戦士の様なスーパーボディに。

マッスルボディを作り出す謎の粉を配合した当商品は、ロール薬品の長年の研究から誕生しました。


■貧相な体も素早くマッスルボディに変え、かのシナモン・ロールの様な身体になる事を可能とした禁断の薬品です。


■飲みやすいあごだし味、コンソメ味をご準備!二種類入りなので日によって和か洋か決めるのも楽しいですよね!


■貧相なあなたに不足しがちなカルシウムをちょっとだけ配合


■これであなたもシナモンちゃんになれる?



※今なら上腕二頭筋を図れるメジャー付き!



評価


★★★★★「シナモンちゃんになれました!」

┗2451/8/01

┗マリノス様

┗異界堂で購入済

 部下にもやしだの引きこもりだの馬鹿にされていましたが『マッスル DA シナモン』のおかげで理想的な体を手に入れる事が出来ました!ありがとうございます。



〈異界堂より〉

 マリノス様、はじめまして!『マッスル DA シナモン』ご購入ありがとうございます。やはり屈強な身体は強さの象徴ですからね、たまに鏡を見ながら筋肉に話しかけてやって下さい。きっとあなたの声にピクピクと反応してくれますよ!

 またのレビューをお待ちしております。




「誰だよこのオッサン…」


 『マッスル DA シナモン』の商品画像には上半身裸でポーズを決める男性が良い笑顔でプリントされていた。


「ティスカ、これ飲め」

「何でだよ!!嫌に決まってる…」

「大丈夫、私も飲むから」

『アマリエちゃん、何で肉弾戦で勝負しようとしているの…?』

「そうだよ…バカヒメ魔術で戦えよ」

「バカヒメ…?ティスカ、私の事馬鹿の姫と呼んでいたのか?」

「…気づいて無かったのかよ」







「てかお前6000も魔力あるのか?」

「大丈夫、この指輪を付けた状態ならばガロンが全て支払う形になるから。ガロンは沢山魔力を持っている」

「…待て。だったら何故俺の魔力で蒟蒻を買った」

「今思い出した」

「お前…」




 相性の良くない二人の戦闘準備は長くかかりそうだった。

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