十六話:風呂を沸かす面倒臭さについて
気がついたら小暮さんが風呂好きキャラに。
最初はこんな設定なかったのになぁ?
小暮「あたし、温泉とかってあんまり行けないから、大きいお風呂って大好きなのよね」
「ねえ、品野くぅん」
小暮さんが甘えるような声を出してくる。
少し落ち着いた感じの声音でこんな言い方をされると篭絡されそうで怖い。
「何?」
ボロを出さないように、自然返事は素っ気ないものとなった。
「あたし、このお風呂入ってみたいなぁ」
ダメだここで喋ったらぼろが出るダメだここで喋ったらぼろが出る。
こういう時は円周率だったか? 素数だったっけか?
あれ? よくわからなくなってきた。般若心経でもいいかな?
観自在菩薩困ったな。ここから先が出てこない。
「ねえ小暮さん。般若心経の観自在菩薩~の次ってなんだったっけ?」
「知らないわよ。炒飯炒飯言っとけばいいんじゃない?」
「炒飯炒飯炒飯炒飯炒飯炒飯……。いや、なんかこれは違うだろ」
「じゃあ、中華料理で」
「え? えーっと……。炒飯麻婆豆腐……えーっと、まーぼーどうふ……他に、中華料理……」
「レパートリー少ないな! ほかにもいろいろあるでしょ! 回鍋肉とか天津飯とか!」
よし。
微妙に軌道を変えることに成功したようだ。
この風呂を全部沸かすのは相当に面倒くさいのだ。
なんか考えたほうがいいのかなー?
「よし、それじゃあ今日の晩御飯の買い出しに行こうか!」
ユリア、ケイトを連れて大浴場から出る。
「ねえ、品野くん。どうして逃げるのかしら? お風呂に入りたいって言っただけなのに」
「居候の分際で偉そうな!」
「誰のせいで居候しなきゃならなくなったと思ってるのかしら!」
「ごめんなさい!」
弱いなー、俺。
居候>家主だよ。
どんな横暴なシステムだ。
「でも、どうしてそんなにこのお風呂を使うのを嫌がるのかしら?」
「あの、普通に面倒くさいんです。洗うのとか後片付けとか、光熱費と水道代も馬鹿にならないし」
「それなら、全部とは言わずに一つだけでいいから沸かす、とか?」
よし。
言質を取った!
「そういうと思って、一番外の露天風呂だけいつでも沸かせるように準備しております」
「なんか釈然としないわね……」
「どうしてさ。温泉入れるんだぜ?」
そこで、
「おーい、ショウ、まだなのかー? 我は待ちくたびれたのだ! 早くするのだ!」
いいところで声がかかる。
「さ、小暮さん、スーパーでも行こうか」
「もういいわよ。それに、露天風呂だって入れるしね。それだけで今日は我慢するわ」
小暮さんってちょっと、あいや、かなり我が儘な人?
それなのに悪い気がしないのは、きっと俺が悪いこと(※小暮さんの家壊しました)をした、という引け目があるわけでして。
一旦自室にとって帰り、財布とチラシを持って近くのスーパーへ行くことにした。
今日は豚肉が安かった気がするし、家にキャベツもあったはずだ。
トンカツにしようかな。
というわけで次の話もこれくらいのペースでかけたらなー。
次は多分スーパーのお話になります。